悩みに答える転職相談
石原

相談者の悩み( E.H. さん、 28 歳 )
現在、フランス人付き秘書をやっておりますが、秘書の仕事をこの先続けていくことに疑問を覚え、転職したいと考えるようになりました。しかし、スカウトなどは秘書案件が多く、他の職種に就けるのか不安です。今年 28 歳になることですし、もうそろそろ自分のキャリアの根幹となる仕事に就きたいと思うのですが、どの道が自分にとってベストなのかもはっきりとつかめません。今までの職務経歴ですと、経験者採用としては十分ではないのかもしれないと思ってしまいます。

【相談者 経歴】 フランス留学経験があり、語学に堪能。前職も外資系だった。「秘書+α」の業務を目指して現在の会社に転職したが、実際にはアシスタント業務が大半で不満を感じている。以前の会社で少しだけ関わったロジスティクスやマーケティングに興味があり、既婚だが、将来、出産しても職場復帰したいと考えている。
「今はフランス語を使える仕事。でもボスのバケーション手配をするだけの秘書ではいたくないのです。」
相談者
秘書という仕事は「総合職」「一般職」のカテゴリーで見た場合、後者に分類されるものなのでしょうか ?
石原さん
ishihara おっしゃる通り、日本では一般職と見られる例が大半ですね。分野によっては事情も違い一概にはいえませんが、日本では「結婚して辞めるまでの仕事」と受け取られることが少なくありません。一方、欧米では「ボスの代理」という側面を持つ秘書が大勢います。時にはボスの代理で指示伝達までをこなす重要なポジションに位置づけられることもあります。しかし、そんなレベルで秘書をやるとしたら到底「9 時5 時の仕事」というわけにはいきません。
相談者
やはり、そうですか……実は今の会社に移るとき「社長の下でいろいろな仕事を任される」と聞かされていたのです。入社当初は、会社の体制も流動的だったのですが、体制が整ってくるに従って自分が成長できるような仕事が減ってきたような気がするのです。 そこで、これから秘書以外の仕事にチャレンジするのは可能なのかなあと考えるようになったのです。
石原さん
心の準備さえできていれば決して不可能ではないと思います。ただ、その前にHさんが仰るように、秘書として本当に単純作業しかできていないのかという点について掘り下げてみたいですね。
相談者
正直なところ、自分ではキャリアの形成に繋がるような重要な仕事は出来ていないと思っています。実際、今の仕事の7割近くは社長の生活のサポートみたいなもの。パーソナルなバカンスの為のスケジュール調整などを頻繁に任されているのが実情で、芸能人のマネージャーみたいな感じなのです。
石原さん
じゃあ残りの 3 割はどんな仕事 ?
相談者
例えば、本社からやってくる客のためにホテルを予約したり、ミーティングの議事録を作成するといった作業がほとんどです。ミーティングは多人数の場合、英語・日本語で行いますが、上司との会話はフランス語でしています。
石原さん
そもそも H さんは、この仕事を「フランス語が使える」という理由で選んだとお聞きしましたが、今でもフランス語が使えないとイヤですか ?
相談者
確かに最初はそう思っていましたが、今では (得意な) フランス語が活用できるのがベストだけれど、以前ほどこだわっていない、あるいはこだわってはいけないと考えるようになりました。
石原さん
確かに得意な語学を活かしたいと考える女性は少なくありません。ただ、本当は、内容のある仕事を任せてもらえるかどうかを最初の時点で見極めることが重要なんです。そこを押さえずに「フランス語が使える仕事」で選んだ結果が、今の「社長のプライベートの面倒まで見なくちゃならない」現状です。Hさんも、次のチャンスを模索しているとしたら、業務内容として何を求められているかという点に注目すべきですね。
相談者
そうですね。
「秘書としてスキルアップすべき ? 他の職種にチャレンジしてみたいけど … 」
石原さん
ishihara 個人的には「秘書」に固執せず、もっと幅を広げて探すことをお薦めします。そうすれば選択肢も増えてきますよ。語学はしばらく横に置きましょう。その上で「自分が何をしたいのか」を具体的に説明できるように煮詰めてください。そうしないと「フランス語を使える秘書」という役どころしか回ってきません。当然、今と同じように便利な女の子扱いされて終わることになります。
相談者
正直にいうと、秘書の仕事を続けようという気持ちがゼロになったわけではないのです。現状には満足していませんが、もっと追求してみようかなと考えることもあります。
石原さん
その問いに対しては「自分自身がそれを楽しいと思っているかどうか」を再検討してみることが先決だと私は言いたいですね。もしこれから、秘書の立場のまま、経験したことがない領域に踏み込んでいけるのなら続けるのも悪くはありません。
相談者
しかし、それが何ともいえないのです。会社が私の仕事をどう捉えているのかも今ひとつハッキリしなくて……。
石原さん
秘書はボスとの相性も重要です。ボスがこの人を育ててみたいと思わなければ、なかなか次のステップに移れないことが多い。まだ完全燃焼しきれていないという確信があれば、しばらく続けることも考えられますが、次の道を模索しようと思っているならば、一刻も早く決断してください。
相談者
早く転職した方がいい ?
石原さん
今日スタートする方が明日スタートするより 1 日も( ! )早くスタート出来ます。来年まで待って何かを掴めるならいいのですが、その上積みが期待できないとなると、1 年後のあなたは今のあなたより年齢面で不利ですから。現状であれば良い意味で「人生経験が少ない」といえるので、周囲も「教え甲斐がある人材」と受け取ってくれるに違いありません。
相談者
とはいっても、私の年齢だともう「第二新卒」とはいえないですよね?
石原さん
勿論そうですが、考えてみてください。28 歳のHさんは 40 代 50 代の女性の候補者より年齢「差別」を受けずに済む分よりずっと有利です。秘書の経験を活かす部分が半分、残りの半分は改めてトレーニングしなければならないとしたら、おそらく 2 年近くの歳月が必要になるでしょう。Hさんの場合、企業の論理で考えるならば、トレーニング+その間の給与という「先行投資」をしても充分「モトが取れる」状態なんです。第二新卒は「経験がない」という意味では新卒と同じ扱いですから、Hさんの場合それには当てはまりませんし、直接の競合ではないでしょう。
相談者
具体的にはどのような行動を取るべきなのでしょうか。
石原さん
早速、動いてみて企業の反応を確認してみることですね。最初はダメでも、自分が転職市場の中でどのような位置づけなのかをつかむことの意味は大きいですよ。今から金融などまったく畑違いの分野に行くのも決して非現実的とはいえません。20代であれば熱意さえあればなんとかなります。
「職種を変えて別の何かを身に付けたい、けど、やっぱりフランス語も使いたい」
相談者
やはりこのままの状態を維持していくのは納得できないのです。ただ、いずれ出産して復帰したとき、確実に仕事ができる立場にいたいのですが、どんな道を選べばいいのかわからないというのが正直な気持ちです。(紹介会社などから)どんなオファーがあるのかもわからないのです。
石原さん
ishihara 何事も受け身であってはならないと思いますね。能動的に世の中の仕事を学んでいく努力が不可欠です。転職の練習だと思っていろんな求人情報に目を通し、自分の経験をどうやって活かすのかを考えてください。私が「職種転換は不可能ではない」と考える根拠は、どんな仕事であれ過去の経験が活かせる部分が必ずあるからなんです。問題はそれを採用する側にきちんと見てもらえるかどうか。経験の応用を「絵に描いた餅」と受け取る人もいるでしょうが、「この人に賭けてみたい」と思ってもらうためには普段の思考や情報収集が大切。また、第三者に自分では気づいていないHさんの良さを見出してもらうことも重要です。その上で、自分自身で動くこと。エージェント任せにしてはいけません。興味のある仕事があれば自分自身で電話して、直接会ってもらうことです。
相談者
とはいっても企業の側としては、やはり経験者が有利になるのではありませんか?
石原さん
勿論そうです。しかし、そういってしまえばキャリア転換は事実上不可能になってしまうでしょう。誰でも自分が信じていない行動はできないものです。信じていれば経験者よりも自分を採った方が得だと相手に納得させることはできるはずです。秘書から秘書へという路線を脱却するためには、未経験でもできると誰よりもまず自分が信じることが一番の課題です。
相談者
その段階でもやはりフランス語は横に置いた方がいいのでしょうか ?
石原さん
意識して隠すことはないと思いますが、フランス語を条件の一番上に書くと制約がかかる場面が多くなると思います。同じ外資系でもフランスの企業に限定すると「話せるスタッフ」としての比重が大きくなり、結局、仕事の内容は後回しにされがちですが、いわゆるグローバル企業で「たまたまフランス語もできる」というスタンスを狙った方がいいかもしれません。今のHさんには「石橋を叩いているだけ」のような印象があります。実際に渡らないと意味がありませんよ。行動してダメなものはダメとわかることも大切ですし、それでもまだやりたいなら新たな説得の材料を見つけるという道筋も見出せます。何より自分が努力する姿を自分自身で見れば充足感に満たされ、自信も湧いてきます。自信を持って第一歩を踏み出してください。
相談者
はい。ありがとうございます。

石原久美の転職アドバイス 今回のポイント

転職相談_ishihara

1) 「20 代後半」でのキャリア転換は決して遅くない。ただし次の道を模索するなら一刻も早く決断を
2)未経験であっても、これまでの経験の中には必ず「活かせる部分」がある。あとはそれを相手に納得させるだけの材料が必要
3) 語学力は「特技」の一部として臨むべき。それを前面に打ち出すと選択肢が限定される

「秘書=キャリア」と考える女性は少なくありませんが、現実的にはまだまだ欧米のレベルには程遠いと思った方がいいでしょう。企業風土やボスの考え方にも依りますが、「貴重な人材」というよりは「便利で重宝する人」と受け取られる場面が少なくないのが実情です。Hさんは将来のことまで考えて悩んでいらっしゃるようですが、今はまだ課題を整理するというよりはいたずらに心配しているだけのようにお見受けしました。重要なのは行動に移すことです。ダメならダメとわかるだけでも収穫です。また、もし現状ではダメだとわかれば具体的な対策を立てることもできるはずです。外資系企業で身を立てていくためには、日本の文化を知り日本人としてのアイデンティティを確立することも重要です。