悩みに答える転職相談
石原

相談者の悩み( Y・Mさん、46歳 )
勤めていた会社の所属部門が M&A により投資会社の傘下に入ることになり、これまでのような仕事ができないことも考えられるので、これを機に転職しようかとも考えているのですが、 40 代後半という年齢がネックになって思うようにいかないのではないかと心配しています。

【相談者 経歴】 アジアの顧客を対象とする産業機器向けの電子、電気部品のマーケティング&セールスを20年近く行い、アジア各国の顧客への市場調査、取引経験を持ち、製品に対する幅広い知識と産業機器業界と産業機器のシステムに精通している。社内で新規事業を立ち上げた経験もあり、自分の得意分野での新たなチャンスを模索中
「会社に残るのも、新天地を求めるにもリスクが伴うのですが … 」
相談者
40 代後半という私たちの年代は転職が難しいと言われます。実際になかなか勇気が出ないという話も聞きます。でも本当にそうなのか、というところからお話を聞きたいと思ってやって来ました。競争も激しいと聞きますし、働き盛りの 30 代の人たちと比べるとどうしてもハンデが大きいような気がするのですが、そこをどうやって乗り越えたらいいのでしょうか。
石原さん
わかりました。ただ、その前に Y さんがなぜ転職を考えているのかという点をお聞かせください。すべての転職がより良い人生のための選択肢とは限らないと思いますが、それを考慮した上でなお新天地を求めたいとお考えになる理由は何でしょうか。
相談者
理由は大きく分けて二つあります。まず一つ目がもともといた会社の所属部門が M&A により投資会社の傘下に入ることになったことです。その結果、企業の規模が大幅に縮小されることになってしまったわけです。こうした背景から将来に対する漠然とした不安が出てきました。もう一つは私が手掛けていたプロジェクトに目処がつきそうだということ。2年前にスタートした大規模なプロジェクトで、私自身もこの分野の仕事のおもしろさに目覚めたのですが、現在の体制では再びこの規模の仕事、つまり今までなかったものを新たに作ったり、ゼロからのスタートに臨むといった仕事が実現できそうもないという点です。
石原さん
ishihara 理由の一つ目は不安に起因するもので、もう一つはもっと大きな仕事をしたいということですね。後者を言い換えるならばリスクを取ってでも大きな仕事をしたいということになると思われますが、となるとこの二つは相反するものでもあるわけです。新規立ち上げのプロジェクトはリスクも大きく、心身ともに負担は大きい。設立間もないベンチャーならば、失敗したら会社の存続自体が危ういということもあります。ならばまだ実績のある今の会社に残るという選択肢もあるのでは ?
相談者
おっしゃるとおりすべてにリスクがあるわけで、今の会社に残る気持ちがゼロというわけでもありません。ただ残念なことに新規プロジェクトの種が見つからないというのが現状なんです。今後、会社自体がどれぐらい投資するつもりなのかという点が不鮮明なので判断に窮しているところなんです。以前の会社では、その辺はつかめていたのですが …… 。
石原さん
以前の体制、つまり大きな規模の会社の方がよかったということですか。
相談者
正直にいうとそうなります。私たちの所属部門がある部品を使うということになれば、以前なら別の部門がその部品を扱っていたので協調してプロジェクトを進めることもできたのですが、今はそれがなくなったんです。
石原さん
ゼロからのスタート、あるいは小さなものを大きくしたいというときは、無い無い尽くしの中から経験を積むという考え方もあります。実際、アセットも資源も足りなければ外部からそれを調達するしか手立ては有りません。投資会社がYさんの所属部門を切り離したのも彼らなりの勝算があってのことでしょう。となると、寄らば大樹の陰からどうやって抜け出していくのかがポイントになるわけで、今の会社に居たままで新しいチャレンジができるとも考えられますよね。
相談者
今の会社に居続けて新たな仕事に挑戦するというのもやりがいはあると思います。ただ、同じエネルギーを注ぐなら新天地で経験を積むのもいいという考えも捨てきれないんですよ。規模が小さくてもチャンスを与えてくれる会社を育てるというのもやりがいがあるのではないかと … 。
「経験と技術で事業計画を練っていきたい。」
石原さん
具体的にはどんな仕事を考えているのですか ?
相談者
キャッシュフローを把握して、事業計画を練っていける仕事です。私が配属される部門を一つの小さな会社と捉えて、それを大きくしたいと思っています。
石原さん
どんな会社をイメージしていますか ?
相談者
私は産業機器向けの電子、電気部品を扱ってきたので、その技術と経験が活かせるところを考えています。電子、電気部品といっても、 IC を使ったものからメカニカルなものとに大きく別れていますが、前者の割合が年々高くなっています。こうしたトレンドに沿って新しいものを直接的な顧客である産業機器メーカーに提案できる会社をイメージしています。言い換えれば従来の電子、電気部品メーカーだけでなく、システムメーカーも視野に入れているということです。
石原さん
現時点でそういうプロジェクトを立ち上げそうな会社というのはあるのですか ?
相談者
実際にある会社では電子、電気部品部門を拡張して単体でビジネス展開を図ろうとしているようです。
石原さん
ということは、Y さんご自身でアプローチしたい会社はある程度固まっているわけですよね。そこに接触しようとは考えなかったのでしょうか。
相談者
そこで最初に戻るのですが、年齢の壁があるのではないかと …… 。
石原さん
ishihara 少し受け身にすぎるのではないかと思います。
転職するのに常識に囚われたり、手段を選んでいてはいけません。年齢の壁とおっしゃいますが、若手にはない経験値をお持ちであれば年齢に勝つことは可能ですよ。むしろ、経験値があれば年齢がいっているのは当たり前です。 Y さんの場合、年齢のバリアは Y さん自身の中にあるのだと思います。
相談者
ただ現実に年齢制限を設けている求人も少なくないですよね。
石原さん
そういうのに囚われていたら二進も三進もいきません。そこは「見なかったこと」にして応募するべきです(笑)。他人より勝っているところが出せればいいんですから。年齢は誰が見ても判断できますが、経験値というものはその人自身にしか見えません。ならば自分からアピールするしか手はないんです。そこで年齢というたったひとつの要件だけで躊躇するのは得策とはいえません。
相談者
紹介会社のコンサルタントも年齢ではないといってくれるのですが、実際はそこがネックになっているようで …… 。
石原さん
コンサルタントは彼らの主観でものを言う。 Y さん、あなたもしかりです。コンサルタントの言い分を鵜呑みにしないで、自分自身の目で確かめることが重要ですよ。また、相手に判断してもらうためにも、自分の売りを明確にすることが重要です。もっといえば相手に自分の良さを見つけてもらうというよりも、自分自身がアピールすることです。職務経歴書にはセールスポイントを分かりやすく書いてください。
相談者
わかりました。ありがとうございます。

石原久美の転職アドバイス 今回のポイント

転職相談_ishihara

1) 往々にして「年齢の壁」は自分自身の中にある
2)(とりわけ経験豊富なベテランは)相手に自分の良さをわかってもらうよりも、自分からアピールしていくこと
3)自分のセールスポイントを明確にして、具体的な事実、エピソードを用意する

Y さんは R&D 、マーケティング、エンジニアなど幅広い分野の経験を持つ有能な人材だと思います。これだけで充分「エクストラ」なのですから、「バランスのとれたエンジニアのマネージャーとして新規プロジェクトに関わる」というアピールができるはずです。ただ、こうした経験や人となりは黙ったまま相手に伝わるわけではありません。相手に理解してもらえるような職務経歴書を作るなどして、積極的にアクションを起こした方がいいと思います。 そこでもっとも大切なのは自分のセールスポイントを正確に把握しておくことです。また、「経験がある」というのは「職務経歴が長い」ということと同じ。つまるところ「高年齢である」と同義なのです。経験をアピールしようという人ならば、年齢の壁に躊躇してしまうのはおかしいということになります。人事が想定する年齢より高くても、他人より勝っている部分がハッキリと打ち出せれば大丈夫でしょう。