ON & OFF バランスライフ

Woman & Work

女性とキャリア Woman & Workインタビュー
Vol.7 カースティーさん 
日本でのキャリア構築に取り組んでいるのは、日本女性だけではない。多くの外国の女性が、異国に溶け込み、もしくは、異文化への順応に奮闘しつつ、ここ日本で人生とキャリアを充実させている。一般に、外国の人は日本人に比べると、「キャリア目標をはっきり持っている」「私生活とキャリア、両方の充実を図る」と、言われている。それは、どの程度正しいのだろうか? 考え方や生き方に、どの程度の違いがあるのだろうか?

今回、日本で働いているニュージーランド女性に取材を試みた。勿論、外国の人を一括りにして語るのは無意味なので、この記事もあくまで、カースティさん一個人の話である事を念頭に置き、読んでいただきたい。 ちなみに、インタビューはカースティさんの堪能な日本語力に助けられ、全て日本語で行うことができた。英語で取材ができるほど英会話能力が高くないインタビューアーは、胸をなでおろした次第である。

「ニュージーランドでは、女性がキャリアを築くのはあたりまえ」

日本ヒューレット・パッカード コンシューマビジネスプランニングマネージャー
カースティー・トレイルさん
  
15歳の時、交換留学制度を利用して、日本に短期滞在( 2週間 )。その経験から、日本で働くことを将来の目標に設定し、大学で日本語を専攻することを決意。オークランド大学 文学部、商学部卒業。専攻は日本語、ドイツ語、マーケティング。

ニュージーランドヒューレット・パッカードを経て、日本ヒューレット・パッカードに異動、 2005 年に来日。日本ヒューレット・パッカードにて、コマーシャルマーケティングマネージャとして 1 年間勤務後、現在、コンシューマビジネスプランニングマネージャとして、消費者向けのオンライン・マーケティング戦略に従事している。 学生時代に日本語能力試験 3 級を取得。大学卒業以来、日本語とは疎遠になるも、来日を機に日本語の勉強を再開。猛勉強の末、日本語能力試験 2 級を取得。

来日のきっかけ
社内異動を上手く活用、学生の時の初心を実現。
―ダイジョブ「まず、日本に来たきっかけを教えていただけますか ? 来日には、どんな計画や動機があったのでしょうか ?」
15歳の時に、交換留学生として初めて日本に来ました。その時は、高校で漢字を勉強し始めたばかりで大変難しく感じ、日本語の勉強を止めようかと思っていましたが、留学の経験を契機に思い直し、大学で日本語を専攻しました。同時に、将来の目的に「日本で働く」ことを設定しました。

大学ではマーケティングも同時に専攻し、卒業後は、ニュージーランドヒューレット・パッカード ( 以下、NZHP ) に入社しました。昇進も果たし、 6 年後にそろそろ次の機会を、と思っていたところ、日本ヒューレット・パッカード ( 以下、日本 HP ) への異動のチャンスに恵まれ、 1年半前、日本 HP に入社いたしました。

実を言うと、NZHPに勤務している間は、日本についての目標を忘れかけていました。社内公募で日本でのポジション募集を見つけ、日本への転属を願い出て、目標を達成することが出来ました。
―ダイジョブ「 NZHP へは、どのようにして入社されたのですか ? 学生時代にインターンシップ制度を活用したとか ? 」
新聞の求人欄を見て応募しました。
―ダイジョブ「外資系での業務内容に興味のある読者のために、ヒューレット・パッカード ( 以下、 HP ) でのキャリアや学んだ事などを教えていただけますか ? 」
キャリア・パスに関しては、マーコム ( マーケティング・コミュニケーション ) アシスタントで入社、 6 ヶ月後に製品マーケティングアシスタントになり、その 6 ヵ月後に 2 次店の販売店営業に、 1 年後に販売特約店の営業になり、それを 2 年間続けた後、 HP と Compaq が合併した時に、サプライビジネスマネージャに昇進いたしました。そして、日本への異動の機会に恵まれ、現在は、コンシューマビジネスプランニングマネージャとして勤めています。

仕事への取組みに対する変化は、新入社員の頃は、大学で学んだマーケティング知識を実践で活かすためのマーケティング・営業の基本を学び、その後、マネージャー職に進むにつれて、人とのコミュニケーションの方法、自分のプランやアイデア実現のために、他の人からのサポートを組込む方法を学びました。自分の仕事だけでなく、ビジネスニーズを分析しながら資源の配分をする視点や、現在だけではなく、将来を考えた戦略的な視点を持つようにしました。マネージャーになって、部下の管理の仕方や人の違いに合わせた管理の仕方を学び、異なった意見の価値もよく分かるようになりました。

そして、今、日本 HP で働く機会を得て、全く別のマーケットにおいて別言語で仕事をする事、そして、オンライン・マーケティングの手法を学んでいます。
日本-.ニュージーランド 文化比較
リラックスすることが少ない日本人 ?
―ダイジョブ「日本とニュージーランド ( 以下、 NZ ) の違いについてお伺いします。カースティさんは、生活とキャリアに関する考え方について、 2 国間の違いを感じますか ? 」
日本の人は、リラックスする事が重要だと思っていないように感じます。

私にとっては、仕事と個人の生活のバランスが重要です。勿論、仕事は一生懸命進めますが、私にとっては、週 3 回運動を欠かさないのも、とても意味があることです。運動で仕事の緊張をほぐし、リフレッシュした後には、仕事に対する熱意ももっと高まります。オフの時間にリラックスすることで、仕事上の新しい発見も生まれます。

私は、リフレッシュしたい時には、旅行、運動、読書で、心身を切り替えます。仕事から何かを学ぶ事が好きなので、リラックス→リフレッシュ→仕事上の新たな発見→自己の改革、と好循環を生み出すためにも、オフの時間の充実は、重要なのです。
―ダイジョブ「 60 年代、 70 年代の高度経済成長期、 80 年代の安定性長期と、日本は経済成長を続けてきました。がむしゃらに働くことが個人の豊かさにつながった時代が続いたので、急にリラックスをしろ、と言われても、方法がわからないのでしょうね。」
日本-ニュージーランド 仕事比較
時間で測る日本文化
―ダイジョブ「働き方に関してはいかがですか ? 日本は残業が多い、長期休暇が取れない、と、多くの外国の方が不満を持つようですが ・・・ 」
NZ では、バランスの重要性が会社でもよく理解されています。日本では「何時まで働いたか ? 」と、よく聞かれますが、オフィスに居る時間が重視されることが、あまり理解できません。しなければならない仕事の量は、今しても後でしても同じです。今の時代、自宅からネットワークでつないで仕事をしても、オフィスでしても同じだと思いますが、どうして、夜遅くまでオフィスで人が働いているのかが、ちょっと、分かりません。
―ダイジョブ「長期の休暇取得についてはいかがですか?日本では、 1 ヶ月近い長期休暇を取るのは大変なのですが、外国の方は、クリスマスや夏に帰国を兼ねて長い休みを取りますね。」
NZ では、職場では互いにサポートし合いますので問題にはなりませんね。それが当たり前の社会ですから、皆が自然に受け入れています。日本では、「他人に迷惑をかけない」という意識が強すぎ、すべて一人で背負ってしまいがちに見えます。お互い様なのでサポートし合う、というように、もっと気軽に同僚に頼っても良いのではないでしょうか ?
日本-ニュージーランド キャリア比較
歴史、文化の違いがもたらす、キャリア目標への温度差。 NZ 女性は、アンビシャス !
―ダイジョブ「女性の役割については、いかがですか ? 」
日本の女性の方が、 NZ の女性より、伝統的な役割に縛られている場合が多いように感じます。日本女性のキャリアに対する期待や意識は、 NZ の女性とは違うかもしれません。
例えば、結婚退職をする女性は、日本の方が非常に多いと思います。ヒューレット・パッカードの IPG 本部 (イメージング & プリンティンググループ) でも、 NZ では、女性従業員の割合はだいたい 60% 位だと思いますが、私の所属する日本の IPG 事業部では、 35% 位です。
―ダイジョブ「仕事への取組みについては、違いは感じられますか ? 」
結婚退社についての違い以外は別段無いと思いますが、日本女性の方が NZ 女性に比べ、キャリア目標の設定を男性ほど高く設定していないように感じます。日本は男性社会だからでしょうか。
―ダイジョブ「 NZ 女性のキャリア目標は高いのですか ? 」
志は高いと思います。 NZ では、現首相は女性ですし、前の首相も女性でした。また、日本で言えば NTT のような国内で最大の電信会社 NZ Telecom の社長も女性で、偉大な女性のロール・モデルが豊富にあります。
―ダイジョブ「何故、女性が男性と対等に働く文化になったのでしょうかね?」
歴史的な事情と風土だと思います。 NZ に移民が住み始めた頃は、自然との戦いが厳しく、女性も強くなる必要がありました。また、世界で最初に女性の参政権を獲得したのは NZ です。( 編集部: 1893年に世界で初めて NZ で女性参政権が認められた。米国の女性参政権は 1920 年、英国は 1928 年、日本は敗戦年の 1945 年) このような伝統があり、女性が社会に出て働くのは、しごく当たり前の風土なのです。
―ダイジョブ「男女平等の社会的な歴史が長いのですね。日本など、敗戦年の 1945年で、半世紀の遅れを取っています。ところで、女性がキャリアを積むことに関して、旦那様など男性側の抵抗は無いのでしょうか?」
無いと思います。むしろ、料理が趣味の男性も多く、家事手伝いなど積極的なぐらいです。私の両親も共働きでしたし、父が家事をするのを見て育っています。
―ダイジョブ「結婚しても、男性、女性共に協力し合い、仕事を続けるのが普通なのですね。お子さんが出来ても、女性は仕事を続けるのですか?」
ええ。ただし、少し変化しているかも知れません。母の時代には、子育ての重要な時には仕事を中断し、その後再開するのが主流だったと思いますが、現在は、キャリアや「生活の余裕を得る」など、女性が働く目標がはっきりしていますので、仕事を辞めるという選択はしません。子供が手のかかる 1~2 歳までは、デイ・ケア・センターに預けるなどして、仕事は継続するケースが多いようです。
日本について
日本は、エキサイティングな国。
―ダイジョブ「 1 年半滞在してらして、日本の印象はいかがですか ? 」
私は、日本が大好きです。ある時は、世界一賑やかで大きい都市、東京を楽しめます。その反面、新幹線を使えば東京から 1時間以内で、山、森、スキー場など、自然に触れられますし、伝統的な京都を訪れることもできます。私は、今、東京の下北沢に近い所に住んでいますが、街は刺激が多く、若い人にはとてもエキサイティングです。
―ダイジョブ「 NZ は、そうでは無いのですか ? 」
NZ は、総人口が 410 万人と少ない上、若い人は英国など外国に働きに出ますので、若い人向けの文化、という点では物足りなく感じます。こんなに素晴らしい国に住んでいる日本人が働きすぎで、日本を心から楽しんでいない事が理解できません。
―ダイジョブ「中に居ると比較する対象がありませんので、そういった視点は持ちにくいのでしょうね。他に何か感じたことはありますか ? 」
ご存知の通り、日本のお客様には “品質の良さ” が一番重要なことです。日本のサービスの質は他の国より高く、世界一だと思います。
キャリア・パスの作り方
キャリアの目標が大事。メンターやネットワークの活用も。
―ダイジョブ「カースティさんのキャリアの作り方を教えていただけますか ? 」
小さい頃から、いつも、仕事・キャリアの目標を持ち、目標を達成したら、次のゴールにフォーカスしてきました。 3 年、5 年、 10 年の目標を立てることは重要だと思います。将来のゴールは変更ができますが、目標が無ければ、どんな方向に進めばいいか分からなくなります。人生やキャリアの目標を設定することが、私にとって一番大事なことだと思います。
―ダイジョブ「目標はどのように作るのですか ? 」
日本では、メンターの制度は無いのでしょうか ? 将来の目標に進むために、「メンター」-師( し )を探すのは、とても役に立つと思います。そのメンターが、現在の自分の仕事に関する上位の仕事をしている方だと理想的ですね。そのメンターから、色々な手助けやアドバイスをいただけます。

NZ にはメンター制度があり、私の場合には、 NZ の当時の社長が、私のメンターとして将来のキャリア目標の設定などについての助言をくださいました。今でも、良き相談相手となっていただいています。 日本では、まだそのような方がいらっしゃいませんので、どなたか、ふさわしい方をご存知でしょうか ? 特に日本語の表現、例えば会議で反対意見を述べる時の表現の仕方など、ビジネス上、コミュニケーション上の相談や、キャリア・アップするのに必要なものの指針を与えてくださる方を探しています。 Daijob のウェブサイトで探せますか?(笑)
―ダイジョブ「 NZ では、転職をしたい時には、どのように求人情報を探すのですか ? 新聞の求人欄 ? それともダイジョブのような求人情報サイトを活用するのですか ? 」
既存のメディアを活用することもありますが、ネットワークを活用することもあります。
―ダイジョブ「具体的には、どういうことですか ? 」
業界のイベントやセミナーなどに参加して、同じような仕事をしている方に出会い、交流するようなことです。 日本では同じかどうか分からないのですが、 NZ では、募集広告が新聞・雑誌などに掲載されないことも多くあります。その場合、大体が関係者の知り合いなどのコネクションでポジションが埋まります。それで、ランクアップや転職機会のために、ネットワーク作りが必要となります。
問題・将来の目標
まずは、日本でキャリアを積み重ねる。日本語能力の向上が課題。
―ダイジョブ「カースティさん個人的な経験についてお伺いします。過去に障害や問題にぶつかった事がありますか ? また、どのように対処されたのですか ? 」
日本 HP に配属になった時に、それまで約 8 年間、個人的な旅行以外で日本語を使わなかったため、日本語がとても下手になってしまいました。それでは日本のマーケティングの仕事をするためには不足で、厳しい状況でした。でも、仕事を頑張ってこなしながら日本語を一所懸命勉強して、段々と大丈夫になりました。 HP は外資系の会社で同僚が英語が出来ますので、困った時に英語で説明できる事にも、助けられました。

問題にぶつかった時には、うまくコミュニケーションを取る事が必要だと思います。何か分からない事が起こった場合には、常に上司と同僚に声をかけた方が良いと思います。状況が分かり修正が必要であれば、すぐに直すことが出来ます。幸いにも、今まであまり大きな問題は起こりませんでした。
―ダイジョブ「今後のカースティさんの目標をお伺いできますか ? 」
キャリアプランについては、これからもっと、日本語能力をスキルアップし、仕事に頑張りたいと思います。異国で暮らす内、人々とのコミュニケーションの重要性がはっきりと分かるようになりました。

私の場合には、先ほど言いましたように NZ の人口が少ないので、外国に出た方が、「キャリアの機会」が多い、と言うことも日本に来てから段々理解するようになりました。日本に来る前には、日本で働くのは 2 年か 3 年間、と思っていたのですが、今は、ずっと日本にいるか、 3 年以上長く日本で働くことに決めています。
日本の女性へのメッセージ
経験則から得た、 4 つの重要ポイント。
―ダイジョブ「最後に、日本の女性にメッセージやアドバイスをいただけますか ? 」
今までの話の繰り返しになりますが、私の経験から、 4 つのポイントが重要だと申し上げたいと思います。
  1. 将来の目標の設定
    ―どこへ行くのか分からなかったら、どこへも行けません。
  2. 尊敬できる先輩 ( メンター ) を探す
    ―おじいさんやおばあさんと同じように、色々と大切なアドバイスをくださる方を持ちましょう。
  3. ネットワーク作り
    ―つながりが増えれば、機会も増えます。
  4. 仕事と生活の上手なバランス
    ―食事と同じように、チョコレートばっかりはだめ。

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