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タカシの外資系物語

外資系企業における人事採用最前線(その1)2018.03.20

タカシ、“シューカツ” の頃・・・は、なかった?!


いやぁ、最近すっかり、ポカポカと春めいてきましたねぇ・・・。華やかな羽織袴の女子学生、大学の卒業式帰りと思しきその姿を見ると、「社会に出てからも、体に気を付けて、頑張って!」と、声をかけたくなります。そんな華やかな風景の一方で、上下黒のリクルートスーツを身にまとった就活生の姿も多数見かけるようになりました。

 

私が就職活動をしたのは 1990年・・・ ということで、もう30年近く前のことになります(げげっ! どんだけ、昔やねん!!)。就職活動を開始した時期は、4回生(関西では、大学4年生とは言わず、4回生と言います)の4月初めだったと記憶しています。最初の内定は、大手エネルギー企業のIT関連会社から、ゴールデンウィーク前にもらいました。結局、私が入社した大手銀行からの内定は、6月にもらったと記憶しています。当時は、内定者が他のライバル企業に行かないようにするために、内定者を集めてリゾートホテルかどこかに閉じ込めてしまう拘束旅行なんてのがありまして、そりゃもう、バブルに踊っていました。本当に、隔世の感がありますなぁ・・・(拘束旅行については、『タカシ・就職活動の頃』 参照のこと。このバックナンバーを書いたのが、2004年・・・ ここにも歴史を感じます。というか、私がじじぃになっているだけだが・・・(T-T))。

1990年当時には、いわゆる “シューカツ” という言葉もなかったように記憶しています。みんな普通に、就職活動と言っていた。現在のようにITが発達していませんでしたから、全てをアナログかつ省略なしで、きちんと表現していたように思います。社会全体が、のんびりしていた感じ。私は個人的に、アナログ思考で、言葉の省略も好きではないので、あの頃の方が好きなんですけど・・・

経団連の苦悩


日本のビジネス社会には、経団連が定めた “就活ルール” というものが存在します。このルールでは、企業説明会や採用面接の解禁日のほか、内定日が定められています。ただし、このルールは企業が “自主的に” 守ることとしており、仮にそれを破っても罰則はありません。また、経団連に加盟しないIT系企業や外資系企業などを中心に、活動時期が早まっているという指摘もあります。

 

私が懇意にしている、某地方銀行の人事部長さんも、対応には苦慮されているようです。「経団連の就活ルールを守らねばならない」というタテマエと、「ルールを守っていたのでは、優秀な学生を確保できないリスクがある」というホンネの間で、その葛藤に揺れているとのこと。事実、最近の採用活動では、目標とする内定人員数に達しない年度もあったとのことで、従来は地方の優秀な学生を根こそぎ集めてきた地方銀行ですら、大変な状況にあるようです。

 

経団連の方も、実業界における現状の一方で、あまりに早すぎるシューカツの解禁は大学の勉強に影響するという二面性の板挟みあって、右往左往している感は否めません。それは、就活ルールの歴史を見ても、明らかです。

 

【経団連 就活ルールの歴史】

1996年 ・・・ 内定日を10月1日とする

2000年 ・・・ 早期の採用活動の自粛を産業界に要請

2004年 ・・・ 上記を周知徹底

2011年 ・・・ 企業説明会の解禁を大学3年生の12月と規定。採用面接を4年生の4月とする

2013年 ・・・ 政府の成長戦略を踏まえ、企業説明会の解禁を大学3年生の3月、採用面接を4年生の8月とする

2015年 ・・・ 採用面接を6月に前倒し

 

もう、ブレブレでんがな・・・ って、感じ。特に、2011年からの朝令暮改ぶりは、さながら幼稚園児レベルと言わざるを得ません。大学4年生の前半って、卒業論文や卒業研究で忙しく、かつ、大学生活において最も充実した時期だと思うんですよ。その時期に、これまた学生さんの人生にとっては最重要といえる就職活動が重なるというのは、これはもう、暴挙としか言いようがない。‘教育’ というのは、社会にとっては ‘投資’ です。人材の育成なくして、社会の継続的な発展はありえません。今一度、あるべきシューカツの姿を、社会全体で見直してみてもいいんじゃないのかな、と思います。

同一労働同一賃金のカラクリ


では、外資系企業ではどんな状況なのでしょうか? 以下に、一般的な日系企業と比較して、外資系企業における採用の特徴といえるものを挙げてみましょう。

 

(1)新卒採用より、中途採用の方が圧倒的に多い

(2)新卒採用についても、通年採用を実施している。入社時期も一律ではない = 本人の希望により、原則いつでも可能

(3)海外の大学を出た新卒生の採用も多い

 

ま、(1)はそういう人材が日本のマーケットに存在するから成立する事象なので、日系企業の ‘貢献’ が大きいのですが・・・。一方で、(2)(3)というのは、採用の多様化という意味で、日系企業にも参考になるのではないでしょかね?

 

そもそも、経団連の就活ルールというのは、「新卒一括採用」を前提としています。これは、高校や大学を3月に卒業して、4月に一斉に入社するということですね。右肩上がりの高度成長に支えられた社会においては、この制度は有効に機能しました。みんなで同じ研修を受けて、配属が決まる。最初の数年間は、ジョブローテーションの位置づけで、半人前扱いのまま、広く浅く業務を経験し、実績を積み重ねていく。専門性よりも、網羅性と規律重視。結果、年功序列賃金制などのインフラが出来上がった・・・ というわけです。つまり、

 

(1)  新卒一括入社 → (2) みんな一緒にジョブローテーション → (3) 年功序列賃金制

 

という流れなわけです。にもかかわらず、ここにきて急に 

 

「(3) 年功序列はおかしい! 同一労働同一賃金制にすべきだ!!」

 

と言いだしている。言っていることはわかりますが、上記の通り、順番があるんですよ、順番が・・・。年功序列を何とかしたいなら、(1)(2)も一緒に変革しないと、どうにもならんのでは? というのが、私の考えです。いかがでしょうか?

 

次回のコラムでは、外資系企業においても変革を遂げつつある採用現場の最前線、特に変容する人事面接についてお話ししたいと思います。

(次回に続く)
 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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