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タカシの外資系物語

男性社会は退屈だ!(その5)2018.03.06

事例をもとに、好循環を起こそう!


(前回の続き)「男性が支配する社会は、内部的な権力闘争に労力が割かれ、停滞を起こしやすい」・・・ これって、なんだかそんな気がしますよね。では、「女性が活躍する企業・組織はイノベーティブである」・・・ これは正しいと言えるのでしょうか?

 

一般に、社会科学の常として、自然科学でいうような 絶対に正しい = 真である 事象というのはありえません。社会科学が人間の行動や感情を対象としている以上、合理的ではない不確定な要素は残らざるをえないからです。

 

行動経済学など、今流行りの社会科学は、その欠点をカバーすべく盛り上がってはいますが、仮にそれが完成されたとしても、人間の行動や感情をフルカバーできるわけではない。だから、AI(人工知能)が人間を超えるという議論については、私は以下の2つの意味で否定的です。

 

(1) 積極的な意味 = 合理的に正しいことをするという意味 ・・・ AIはルールに基づいて、準備された回答を検索・探索することには有効だが、複数の回答を結び付けて、“空気”も読んで、最も効用の高い解決策を導出することは、人間にしかできない

 

(2) 消極的な意味 = 非合理的に行動するという意味 ・・・ AIに非合理的な行動はできない。しかし、だからこそ、人間の社会というのは面白いともいえるし危ういともいえる(戦争を引き起こすリスクは最悪なので、そのリスクが低減されるなら、この世の中から、多少の面白さがなくなっても仕方ないかな、と、個人的には思うが・・・ ま、このあたりの議論は、哲学的な領域なので、今度ゆっくりとやりましょう!)

 

とはいえ、あまり身構えても仕方ない。何らかの成功事例があって、それに感銘を受けて、好循環が繰り返されるというのも、社会科学ならではの特徴です。そういう意味では、「女性が活躍する企業・組織はイノベーティブである」というのは、私にとっては相当に確からしい。以下で、私がそう確信するに至った事例を、いくつかご紹介することにいたしましょう。

女性は、計画して、目に見える成果を上げる?!


ここ数年、日本の家電業界が不振に喘いでいることは、みなさんもご存知だと思います。イノベーションに乗り遅れたとか、アジアの新興国にコスト競争力でかなわないだとか・・・、ま、後付けの理由はいくらでもつけられます。‘構想不況’ という一言で済ますのは簡単ですが、それでは寂しすぎる。コスト削減もいいですが、収益を伸ばす側の取り組み、次の商売のタネがほしいところです。

 

そんな中、孤軍奮闘とばかり一人気を吐いているのが、美容家電の分野です。なかでも、パナソニックの「ナノケア」シリーズは、これまで、たかだか数千円だったヘアドライヤーの製品単価を、数万円に倍増させたとして有名になりました。モデルの水原希子さんをフィーチャーした電車内のCMは、みなさんも一度はご覧になったことがあるんじゃないかと思います。

 

これだけだと、従来の製品戦略(売れそうな製品に、広告費を集中投下する技法)と大差ないような感じなのですが、実はこの「ナノケア」シリーズ、有名になるまでに、ほとんど広告費がかけられていません。では、何で有名になったのか? それは “口コミ” です。例えば、東京メトロ(地下鉄)のパウダールームに、「ナノケア」シリーズを無償で設置・貸与してユーザーに使ってもらうことで、SNSを通じて、どんどん拡販されていきました。SNSにおけるインフルエンサーの機能を使ったわけです。この手法は、結果論ではなく、計画されたもの。パナソニック内にある、女性を中心としたマーケティングチームがあって、広告戦略を主導したとのこと。これは、男性には取れないアプローチです。素晴らしい!

 

また最近、日系の伝統企業で役員に選出された女性人材の中には、その企業を救うようなめざましい成果を上げるような例も出てきました。例えば、龍角散の執行役員である福居篤子氏が開発した「服薬補助ゼリー」は、咳止め薬一辺倒で停滞気味だった同社において、その復活となるべく主力製品を生み出したという意味で、本当に画期的なだと思います。なんでも、福居氏は、一時左遷されたにもかかわらず、この製品の研究を、信念をもって続けたとのこと。本当に頭が下がります。

 

さて、多くの男性執行役員殿に問います。あなたは、会社に、目に見える形で、どんな貢献をしてきましたか?

女性は攻める! 男性は〇〇る?!


一方で、パナソニック一強と思われたヘアドライヤーの世界に、最近、手ごわいライバルが現れました。それは、どこの日系企業かと思いきや、実は外資系企業・・・。あの、ダイソンです。

 

ダイソンのヘアドライヤー、5万円ぐらいするんです、めっちゃ高い! だけど、バンバン売れています。何がいいのか? それは、温風の量がハンパではない!! 女性にとって、毎日のドライヤーは一大イベントです。その時間を半減するだけでも、5万円のもとはすぐ取れる、ということのようです。

 

ダイソンというのは、なんとなく、女性的な発想をする企業だと思います。だから手ごわい。掃除機も、扇風機も、ドライヤーも、デザイン重視のように見えて、実用性がめっちゃ高い。デザインは当然一番、機能もぶっちぎり一番! 今後の消費財に求められるのは、多少高くても、全部一番! という発想なんだろうと思います。

 

龍角散の「服薬補助ゼリー」にもライバルは多い。この手の製品は、マネがしやすいので、100円ショップなどに類似品が出回りやすい。これらにどう対抗していくか?

 

これは私見ですが、イノベーティブな製品を守る仕事は、男性の方が慣れていると思うのです。知的財産をはじめとした法務戦略、また、ライバルとなる外資系企業とのアライアンス戦略など、これまでに山ほど手掛けてきた事案です。開発は女性に任せて、男性がそれを守る・・・ そういう役割分担もアリかなと考えています。

 

最後に1つ、どうしても言いたいことがありまして・・・ 今後の企業経営をする上で、絶対必須の考え方なんですが・・・。それは、

 

女性は儲かる!

 

という信念です。これについて、次回、このテーマの最終回でお話ししたいと思います。

(次回に続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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