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タカシの外資系物語

“キャリアパス” を語る前にすべきこと(その1)2017.04.17

中途採用応募者が必ず口にする一言とは?!


ある日の夜、弊社来客用会議室にて。

 

タカシ 「・・・で、今回このような経緯になった、“理由” を教えていただけますか?」

A氏 「じ、実は・・・」

 

じりじりと、A氏を問い詰めるタカシ。緊迫した会議室が静寂に包まれたその瞬間、A氏を追い詰める戦慄の一言が!

 

タカシ 「実は?!その “理由” とは??!!」

 

「はい、自分が描くキャリアパスとは程遠いもんで、より早く実現できそうな、御社を選びました!」

 

すいません・・・、最近、ミステリーものにはまっておりまして、意味もなく、雰囲気のある始まり方になってしまいました・・・。ちなみにミステリーものって何か?というと、アガサ・クリスティです。何を隠そう、私が初めて手にした長編小説がクリスティの「名探偵ポアロ」シリーズでして、もうかれこれ35年くらい前のこと。最近は、クリスティの名作も、電子書籍で読めるようになったので、重宝しています。古典の文庫って、紙媒体のだと、異様に活字が小さかったりするので、老眼が入ってきた私にはつらい・・・(T-T)。つうか、老眼の話をしている自分が、もっとつらい・・・(T-T)(T-T)

 

さて、冒頭の会話は、中途採用面接での一コマです。新卒はもちろんなんですが、中途採用に応募してくるみなさんも、私が初めてアガサ・クリスティを読んだときには、生まれていなかった人ばかり。どんだけ若いねん!というか、私の方がどんだけ年とってんねん!て、感じですね。トホホ・・・(T-T)(T-T)(T-T)

 

今回のコラムでは、特に中途採用の面接において、応募者が異口同音に言うことのうち、私が最も違和感を抱くフレーズ = 「自分が描くキャリアパスには程遠い」についてお話ししたいと思います。

ジョブ・ホッパーが不利な理由


私は某外資コンサルティング会社の金融部門に所属しています。クライアントは、銀行・証券・保険といった金融機関がほとんどですので、中途採用で応募してくる人も、そういう企業に所属している人が大半です。加えて、そういう人=新卒で金融機関に入った人は、総じて、大学の偏差値が高い。おそらくは、

 

~ 新卒で金融機関に入ったんだが、ちょっと違うな、俺ってもっとできるんじゃないかな、って思ったんで、とりあえず外資のコンサルにでも転職してみようかな・・・~

 

という感じなんだろうと思います。

 

はっきり言いますが、ならば正直に、面接の場で、そう言えばいい。自分は優秀なのである、だからチャンスを与えられればモノにできるのである、しかしチャンスが与えられないのでツライのである、よってチャンスが与えられそうなコンサルに転職するのである!こう言ってもらえれば、よくわかる。それを、“キャリアパス” とか、なんだかよくわからない言葉を持ち出すから、意味不明な人になってしまうのです。

 

そもそも、“キャリアパス” とは何か?それは、ビジネス上の自分が目標としているゴールに至るまでの道のりです。で、“キャリアパス” を語る人に多い症状として、ゴールがないというのがあります。自分がどうなりたいのか説明できないのに、道のりだけはいっちょまえにカッコいいものを求めようとする。こういう人は、転職を繰り返すジョブ・ホッパーになる可能性が高いので、要注意です。

 

ちなみに、私はジョブ・ホッパーを全面的に否定しているわけではありません。目的がお金ならば、より条件のいいところに、短期で転職を繰り返すというのもアリでしょう。しかし、これまでに3回転職した私の経験則からいくと、転職後の1年は、はっきり言ってほとんど機能しません。これが、プロ野球選手とかと違うところでして、ビジネスパーソンの場合には、その企業のやり方に慣れるまでは、最低でも1年はかかるのです。機能しないということは、成長もしないわけで、本当に “キャリアパス” 云々を言うなら、職場はコロコロ変わってはいかんのです。

“起業したい” という媚薬


次にタチが悪いのは、こういう人。“キャリアパス” を言いたいが、そのゴールがうまく説明できないので、とりあえず 

 

起業したい!

 

と言っちゃう人。これ、最悪・・・。もちろん、本当に起業したいなら、全く構わんのですよ。どんどん、やればいい。しかし、私が中途採用面接をした人のうち、「将来は起業したいので、コンサル会社でその準備をしたいです!」という人は結構な数に上りますが、その大半は、起業に対して、それほど強い思いは持っていないと断言できます。なぜか?

 

まず、起業に必要な準備が一切されていない。例えば、簿記などの会計知識。かりにも企業のオーナーになるつもりなら、簿記2級程度の知識は必須です。しかし、私が簿記2級の典型的な問題を出しても、回答できる人はほとんどいません。同様に、最低限の法律知識も必須ですが、それも回答できない。

 

次に、銀行や証券会社に勤務経験がある人たちが、起業して成功する!と信じていること自体が、相当怪しい。「これはいける!」と思えるようなビジネスアイデアを持っていても、結局はお金が集まらず、資金繰りに窮してダメになる・・・、山のような失敗事例を見てきたはずです。にもかかわらず、大したビジネスアイデアのない自分が起業して成功すると、なぜ考えられるのか?楽観論もいいところです。

 

最後に、コンサル会社というのは、会計や法律を学ぶ専門学校ではありません。新規のビジネスアイデアに触れる機会は多いかもしれませんが、そんな優位性を吹き飛ばすほどに、仕事そのものが忙しい。だから、起業準備などしているヒマはありません。

 

1つ言えるのは、コンサル出身の社長は、コンサルティングの延長として、その企業に招かれている例が多い、というのはあるでしょう。ただし、コンサル出身の人は、概して自分を売り込むのがうまいので、過度に宣伝されているフシは否めません。

 

ということで、私の感覚では、コンサル会社で働くことが、起業の近道になるかというと、そうは言えないと思います。むしろ、現状の慣れた職場で、会計や法律の勉強をしながら、ビジネスアイデアを練った方がいい。ま、それ以前に、“キャリアパス” という言及のつじつま合わせのためだけに、起業なんていうゴールを持ち出さない方がいい。話の整合性が取れなくて、アタフタするのは、見ていて何か悲しいものがあるので。

 

「とはいうものの、このままでは、自分が腐ってしまうかもしれない。なんとか、この閉塞感を打破したい!」と考えるみなさんに、ちょっとした発想の転換方法をお話ししたいと思います。それは、計画的偶発性理論と呼ばれるもので、私が最も大切にしてきた考え方です。詳細は、次回お話しすることにいたしましょう。

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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