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タカシの外資系物語

日系企業の謝罪会見に見るありゃりゃ・・・(その3)2016.06.14

一言・・・、お礼申し上げます!

 

(前回の続き)ここ最近、世界的に有名な製造業において、不正・コンプライアンス違反が相次いでいます。いきおい、当該企業のトップ以下、幹部列席のもと、謝罪会見なるものが行われるわけですが、その対応も国ごとに千差万別のようです・・・

 

本題に入る前に、読者の皆様に、一言お礼を申し上げたいと思います。拙著コラム『タカシの外資系物語』 も早いもので、連載700回を超えるに至りました。その間、非常に多くの “おたより” “メッセージ” を頂戴しています。特に、旬の話題というか、エッジの効いたテーマの場合には、ご意見・ご指摘も多くいただきまして・・・、実は今回のテーマでも、いくつかのご意見をいただきました。本当にありがとうございます。

 

ご指摘内容のほとんどは、私の無知ないしは「そういう意見もあるだろうなぁ・・・」と思いながらも、うまく表現できなかったり、紙面の制約上、割り切って書いてしまったりすることに対する誤解に起因しています。様々な示唆をいただいて、私自身の理解にも大いに役立っています。重ねてお礼申し上げます。

 

一点だけ、私が明示的にご説明できていないことがあるので、それを補足しておきます。このコラムに書いている内容は、ほぼ“実話”です。それも、私が実際に外国人の同僚と交わした会話がベースになっていることがほとんどです。つまり、私だけの意見 というよりは、外資系企業に勤務する外国人の総意を、私なりにまとめている、という色彩が強いのです。

 

言い換えると、奈良タカシという架空の人格を使って、「われわれ日本人って、日本企業って、こういうふうに見られてまっせ!」 というのを書いていると思っていただいて相違ない。私自身も、「あーあ、こんな風に誤解されているのか・・・、悲しいね・・・(T-T)」と思いながら、奈良タカシを “演じて” 書いていることもあるくらいでして・・・、そういう目で見てもらえると、また違った楽しみ方もできるのではないかと思います。引き続き、よろしくお願いいたします!

 

想定問答を重視するのは、日? 米?

 

さて、本題に戻りましょう。日独 vs アメリカの3つめの差異に、“記者会見の対応” があると思います。「日、米はいいとして・・・、ドイツ企業の記者会見って・・・、知っとるんか?」と思われるかもしれません。フフフ・・・、実は私、ドイツの有名なIT企業に出向していた時期があり、何度か記者会見(および、それに類似するもの)の準備を手伝ったことがあるんですよね。そのときの実体験から、日本-アメリカを両極とした場合、ドイツは明らかに日本側に位置付けられると考えています(ドイツ系の同僚も、同意見でした)。では、その差異とは何か?

 

記者会見における日独およびアメリカ各企業の特徴は、以下の通りだと思います。

 

  • ● 日独 ・・・準備に時間をかける = 膨大な “想定問答集” を作り、様々な質問に備える
  • ● アメリカ ・・・記者会見そのもののプレゼンテーション方法(セリフ、アクション等)に時間をかける = “想定問答集” よりも質問を類型化し、同様の回答に誘導する 

 

アメリカ人の基本的な発想として、「全てを網羅できそうにないものに、時間を使いすぎない」というのがあります。想定問答集など作っても、100%にはならない、どこかに必ず穴がある・・・、ならば、ズバリの回答ではないにしても、また、ある程度曖昧になることも承知の上で、聞き手が納得できる形にする!ということです。簡単な例を示して、説明しましょう。

 

例えば、記者会見において、100個の問題に関して質問が出る可能性があるとします。日独の場合、あらかじめ、100個の問題 が想定されるなら、全ての回答を検討して、潰しておくのが通常です。

 

・ 質問者 「○○の場合は、どうなりますか?」

・ 回答企業(日独)「(これは、想定問答82 だな・・・)○○の場合については、こう考えています・・・」

 

しかし、質問者というのは往々にして 意地悪 ですから、想定外のニッチな質問をする場合もあるわけで・・・

 

・ 質問者 「では、△△の場合は、どうなりますか?」

・ 回答企業(日独)「(げっ! そんなの、想定問答集になかったやんけーーー!(T-T)) えぇっと、それはですねぇ・・・、ちょっと待って下さいね・・・」

 

このアタフタぶりを、アメリカ人はめっちゃ嫌います。よって、以下のような回答をすることになります。

 

・ 質問者 「では、△△の場合は、どうなりますか?」

・ 回答企業(アメリカ)「△△の場合については、○○の場合も含め、現在、弊社がまとめた案につきまして、外部有識者を交えた第三者委員会で最終化をはかっております。正式な回答については、その決定をお待ちいただければと思います・・・」

 

記者会見で最も重要なこととは?!

 

記者会見というのは、アタフタしたら負けです。それ以外の回答が、いかにしっかりしたものであっても、1回のアタフタ が、100回の完璧な回答を無にしてしまうのです。

 

もちろん、アタフタしないアメリカ式回答においても、はずしてはいけない留意点が存在します。それは、“次回の報告においては、相当突っ込んだ、具体的な、かつ聞き手にとって腹落ちする回答が必要となる” ということです。これについては、多くのアメリカ企業が、ある程度、聞き手の期待を満たしているように思います。そうしないと、株価が思いっきり下がるという恐れがあるからですが、方法論として定着し、みんな慣れている、ともいえる。端的にいうと、「最初の記者会見はスピーディに設定し、細かいことは回答しない(アタフタせずに話す)。次回の会見で、具体的な話をする」ということです。

余談ですが、最近マスコミをにぎわしている、某首長M氏の対応がまずいのは、アメリカ式を取っていながら、2回目以降に具体性がない、ということではないかと思います。

 

最近は、“記者会見コンサルタント” なる怪しげな仕事もあるようで、私も一度、その手の人の話を聞いたことがあります。このような手法は、アメリカから “輸入” されるのがほとんどでして、どこか聞いたようなウンチクを語り、あとは、身振り手振り、声のトーンなどをレクチャーします。

ま、それはそれで、必要なことなのかもしれません。日本人は、そういう点が、あまりにも無頓着なので。しかし、記者会見というのは、結局のところ、話の中身 = コンテンツが最重要です。コンテンツが不十分な記者会見は、いくらテクニックを駆使したところで、炎上するリスクが高い。一方で、コンテンツがしっかりしていれば、揚げ足取りなどされないし、聴衆は話を聞いてくれるものです。

 

それ以前の問題として、経営者たるもの、お家の一大事に、想定問答なしで記者会見ができないということが、そもそも問題なのでしょう。詳細な数字やファクトは、違う人が答えてもいい。しかし、企業の舵取りをする立場として、今起こっている問題をどうするのか、どんな会社にしていくのか、どのように社会貢献していくのか、をシナリオなしで 語れないようでは、経営者失格の烙印を押されても仕方ないのでしょう。

そういう意味では、やはり日本企業の 日本人経営者、特に、創業者以外の人は、非常に線が細い。サラリーマン経営者だから仕方ない・・・、と諦めるのではなく、日本の大企業の大半はサラリーマン経営者なのですから、そこが変わらなければ、日本のビジネス社会は一向に変わらないわけで・・・、イマイチな対応を他山の石として、私自身も当事者意識を持って進んでいきたいと思う次第です。では!

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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