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タカシの外資系物語

日本版 “女性活躍推進” が イケてない理由(その2)2015.03.10

東大に入ること が “目的” である社会

 

前回の続き)今回のコラムでは、外資系企業での事例を引きながら、目指すべき 女性活躍推進社会 について考えてみましょう。

 

「○年以内に、女性の役員比率を△%にする・・・」

 

非常にありがちなパターン。しかし、このスローガンは、“手段” であって “目的” ではありません。日本社会においては、この手の勘違いが非常に多い。以下に、日本社会における “手段” であって “目的” ではないにもかかわらず、勘違いされているもの を例示してみましょう。

 

  • (1) ○年以内に、「×××」 を△%にすること (「×××」内は、社外取締役比率、障がい者雇用比率等が入る)

  • (2) 東京大学や京都大学、早慶、医学部に入学すること

  • (3) 一部上場企業に入社すること ・・・

 

これらには相関関係があって、(2) (3) を “目的” とすることがまかり通る社会では、(1) を “目的” とすることに違和感がなくなってしまうのです。私はこれを 【手段-目的逆転症候群】 と呼んでいます(ちゅうか、そのまんまだし!)。

 

難関大学に入って、どんなスキルを身につけ、それをどのように活かすか?

一部上場企業に入社して、社会にどんな貢献をするか?

 

手段-目的 を逆転するという勘違いがなければ、大学生はもっと勉強するし、社会人ももっと頑張る。ちょっと叱られた程度で、「自分探し」の旅 になんぞ、現実逃避しないのです。

 

“目的” があっけなく崩壊した タカシ は・・・?!

 

例えば、私は (2) は達成できませんでしたが、(3) は実現しました。私自身、【手段-目的逆転症候群】にかかっていましたから、当時はそれだけで勝ち誇った気分。ま、残りの人生、それなりのレベルで生活できるだろうと、高をくくっていました・・・

 

しかーし! 入社後10年もたたずして、私が入った一部上場企業である大手銀行は、あっけなく破綻してしまいました・・・(T-T)

 

もし (3) が “目的” として妥当だったとしたら、私はこの時点で立ち直れなくなっていたことでしょう。しかし、私には 「食べていかなければならない」「家族を養っていかなければならない」 という 真の “目的” がありましたから、当時は胡散臭いと思っていた外資系企業に転職しました(今でも 胡散臭い という思いは大して変わらんが・・・)。

 

今私は、自分の仕事を通じて、社会に貢献したい、より具体的に言うと、貧富の差を無くして、戦争のない平和な世界を実現したい!という、非常にやりがいのある “目的” を持っています(相当チャレンジングではありますが・・・)。

 

しかし、これは “夢” でなく、“目的” です。そして私は、それを実現するための、具体的な “手段” と それに至るロードマップも説明できます(これについては、別の機会にお話します)。

 

こういうのが、本来の 個人 と 企業 のあり方なのだと思います。繰り返しますが、企業に所属することは “目的” ではなく、“手段” です。学校で学ぶことは、“手段” の幅 ≒ 個人の可能性を広げること であって、個人の価値 を示すものではありません。東大に入ることも、官僚になることも、全ては1つの “手段” にすぎない、ということを決して忘れてはいけないのです。

 

話は少しズレますが、よく大手のIT企業が、“クラウド戦略” なんてのを打ち出したりします。これも大きな勘違いです。クラウドという技術は、“手段” であって、“目的” ではありません。だから、「クラウドをどのように活用するか?」というのは戦略ではなく、道具の使い方、戦術 にすぎません。

 

考えるべきは、「クラウドをどのように使えば、儲かるか? コストが下がるか? リスクを低減できるか?」 です。そして、そこに至る道程を示したものが、戦略 です。IT業界には、【手段-目的逆転症候群】の輩がウヨウヨいますので、注意が必要です。インチキITコンサルには、十分にご注意を!

 

失敗に寛容な社会では、ダイバーシティが進む?!

 

以上述べたような、【手段-目的逆転症候群】 というのは、日本以外のグローバル社会では、あまりお目にかかりません(歴史的には、近世まで続いた中国の官僚登用試験である “科挙” は、それに近いものですが・・・)。 いずれにしても、“手段” と “目的” の切り分けは、ダイバーシティの前提となることを覚えておいてください。

 

さて、企業などの組織に所属して仕事をすることが “手段” だということが、社会の共通認識として確立されれば、実は性差(ジェンダー)の問題などなくなるのです。なぜなら、できるだけ効率的に仕事が進むよう、また顧客満足が高まるよう、役割分担に留意していれば、おのずと、男女平等の職場というのは出来上がってくるものなのです。

 

「そんなにうまく行くとは思えんが・・・」 もちろん、大前提として、“実力・実績主義” なんですよ! ダメな人は、男性だろうが、女性だろうが、容赦なく淘汰されます。そこは あゝ無情(by アン・ルイス 甘え上手にトドメ刺されて ~ ♪ ) 厳然たる 競争社会の原理 が働いています。

 

一方で、日本以外の国では、“失敗” について、非常に寛容です。むしろ、“失敗” の経験がないと、評価が低かったりする。事実、私の会社でも、昇進試験の申請フォームには、華々しい実績を書く欄よりも、「どんな失敗をして、どのようにリカバリーしたか?」「その失敗から、何を得たか?」 の欄の方に、数倍の記述量を求められます。

 

役員になってからの失敗は致命的ですが、一般社員の段階では、クビにならない程度に失敗を繰り返し、その都度、したたかに這い上がってくる経験をした方がいいというわけです。

 

一連の仕事を覚える → 小さな成功 → 失敗 → 普通の成功 → 大失敗 → amazingな成功! ・・・ → ガラスの天井ぶち破り!!

 

こういうサイクルが認められていないから、失敗を極度に恐れる、偏差値の高い ボクちゃん社員 ばかりになってしまうのです。一度の失敗で立ち上がれなく社会なんて、そもそも、挑戦する気が失せるじゃないですか?!女性って、相当な リスクテーカー(=博打打ち) ですからね。だからこそ、大化け もするわけです。失敗を許容しない社会に、ダイバーシティは根付きません。

 

次回のコラムでは、「ダイバーシティ」 の二重性 についてお話します。特にダイバーシティが進んでいるヨーロッパ社会において、性差(ジェンダー)を厳格に尊重する文化があります。ダイバーシティ と 性差尊重 は、どのように両立しているのでしょうか? 

 

次回、お楽しみに!

 

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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