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タカシの外資系物語

君はインドのベストセラーを知っているか?!(その4)2015.02.10

最後の脱線 : どうしても伝えたいこと

(先週の続き) 「日本人にとっての “グローバル” とは、欧米・ロシア・中国・朝鮮半島のみであって、それ以外の地域、アフリカ、イスラム圏、中南米等 のことは何も知らない・・・」 実際に、日本人の偏ったグローバル観 というか 無知 により、日本企業は大きなビジネスチャンスを逸している。

 

ひいては、日の丸製造業が衰退した一因も、日本人の グローバル無知 が影響している・・・、というお話をしました。この回のコラムでは、以上の状況を打破するために、われわれはいかに処するべきか? タカシの “外資流処方箋” について、お話しすることにいたしましょう。

 

と、その前に・・・、例の イスラム国による日本人拉致問題 について、再度コメントしておきます。ほらほら、始まったぞ・・・ また、長くなるな・・・ と思わないでください。すぐ終わります。

 

今回の事件、その結末については、本当に悔しいし、胸を締め付けられます。彼ら2名が、かの地に足を踏み入れたことは非常に残念ですが、事情はどうであれ、助かって欲しかった。助からなければ、彼らに反省を促すこともできません。本当に、本当に残念で、言葉が出ません。

 

政府もあらゆる手段を使ったのでしょう。でもダメでした。安倍首相は、

 

「許しがたい行為である!」 「テロには絶対に屈しない!」 

 

と言っている。当たり前です。そんな当たり前のことを繰り返し述べても仕方ない。一国の指導者であるならば、以下のことこそ、繰り返し述べる内容ではないでしょうか。

 

  • (1)  憲法でも明確に述べられている通り、日本国家は、国民の生命と財産を全力で守る。しかし、日本国家をもってしても、国民の生命を守れない “敵” = 地域と組織 が存在している。その敵は、アメリカのCIAやシールズ(海軍特殊部隊)の力をもってしても、どうにもならない。だから、国家がレスキューできない地域には行くな! ・・・ 行かないでほしい!(勧告) ではなく、 行くな!(命令) です。 結果、国家が国民の生命を守れなかったら、憲法違反になるわけですから、国家は、行くな! と言い切るべきなのです。

  • (2)   (1)で述べた警告にもかかわらず、行かねばならない正当な理由があるなら、国に相談すること。その理由が正当なら、国家が国民の代わりにそれを実施する。例えば、無法地帯と化したシリア国における現状(“イスラム国” の傍若無人さ)を、もっと国民に知らせるべきだ、というなら、海外メディアを総動員して、NHKで啓蒙を目的とした放送をする。あなたが直接行く必要はない。

  • (3)   それでもなお、(1) (2) を無視して当該地域に足を踏み入れ、何らかのトラブルに巻き込まれた場合でも、国家は全力であなたを救うアクションはうつ。しかし、それが成功する可能性は極めて低いこと、および そのアクションのためにかかるコストは膨大で、そのコストを使えば、救える命が別のところに多数あることを忘れないこと。これを認識し、適切な行動をとることは、国民の義務である。

 

首相でなくても、官房長官でも、外務大臣でも、補佐官でも、だれでもいいから、これを言って欲しい。テロという非条理のもとで、かけがえのない命が失われることをなくすために・・・ そう願ってやみません。

グローバルにおける “無知の知” を知る

ふーっ、あぶねぇーー、また最後までこのノリで突っ走るところでした。本題に入りましょう!

 

日本人の偏ったグローバル観を修正するためには、まずは、自身が知らないことを知ること が重要です。いわゆる、“無知の知” by ソクラテス ですな。そこから入らないと、知ろう! というインセンティブが湧きません。

 

例えば、欧米のビジネスパーソンは、イスラムの現状について、日本人の十倍以上の広さ・深さで理解しています。では、なぜ、彼ら・彼女らが理解しているのか? 理解しようと努力するのか?  その理由を、以下に列挙します。

 

  • ①  新規市場としてビジネスチャンスがあるから
    (具体的に、どのようなビジネスがありえるのか、については、前回のコラムで述べた通り)。

  • ②  テレビや新聞、雑誌などの主要メディアが、世界中の現状と課題を、もれなく報道しているから

  • ③  最貧国・途上国といわれる国の人々に富を再分配し、世界の格差を縮めることそのものが、欧米のビジネスパーソンにとって、強いモチベーションUPにつながるから

 

実は、一番大きい要因は ③ です。

 

貧しい人を助けることが、神のご加護に報いることである・・・ これは プロテスタント のベースとなる規範です。だから、強欲と言われるほど儲ける一方で、巨額の寄付もする。ビル・ゲイツ や ウォーレン・バフェット など、その典型ですね。ゲイツやバフェットのように、“超”がつくほどの億万長者でなくても、欧米のビジネスパーソンには、その考えが自然と染み付いている。

 

“ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)” という言い方をしてもいいかもしれません(意味がわからない方は、調べてください。Wikipediaに、いい解説が出ています)。だから、途上国・最貧国の現状を知ろうとする。昨今の ピケティ ブーム も、この延長線上にあるわけです。

カレー と シュラスコ が 歴史を作る?!

日本には、欧米のように リッチな情報 がありません。「知る術がないんだから、しょうがねぇじゃん!」 と開き直るんじゃなくて、ここは頭を使って工夫しましょうよ。

 

イスラム、アラブ、アフリカ、中南米、少数民族の情報が全くないか、というと、実はそうでもない。

 

専門書などの特殊なメディアに頼らなくても、それなりに情報収集はできます。私の場合は、ニューズウィーク(日本版でOK) と クーリエ・ジャポン(COURRiER Japon)。この2つの雑誌から、かなりの情報を得ています。今回のタイトルになっている、「インドのベストセラー」だって、クーリエ・ジャポンの特集 「世界の人はこんな本を読んでいる」(2015.2月号) を参考にしていますから。

 

あとはやはり、“欧米中韓 以外 のグローバル人脈” を持つことでしょう。私は外資系企業に勤務していますから、この点では、日系企業にお勤めの方よりは有利だと思います。しかし、実際には、私のグローバル人脈は、会社や仕事以外で、その関係を構築したものの方が多いのも事実です。

 

幼稚園のママ友、社外の仕事以外のコミュニティ(私の場合、映画のコミュニティ、LINEとかtwitterとか)、中華街のコック見習さん(フィリピン人)、カレー屋のインド人のおっさん 等々、最近は周りを少し見渡すだけでも、相当数の “グローバル人材” がいらっしゃいます。

 

そういう皆さんと仲良くなって、情報交換をしながら、相手の文化的背景やモノの見方を学ぶ、これだけでも、偏ったグローバル観を是正するのに役立ちます。

 

はっきり言いますが、六本木ヒルズに存在するグローバルなんて、もはや古いし、カッコ悪い! Coolじゃないんですよ!! これからは、インドのカレー屋さん や ブラジルのシュラスコ・レストランが、歴史を作って行くのです。

日本が成熟国家として衰退の一途をたどるか、新しい価値観を引っさげて、今後の歴史作りに貢献するか、それは われわれ自身が、知らない世界があることを認識し、それを知って、その輪に溶け込むかどうかにかかっています(もちろん、コントロールできないリスクを背負わない範囲において、という前提がつきますが・・・)。 

 

近い将来において、同じ土俵で、日本とインドのベストセラーについて、違う価値観の国民同士が意見を言い合える世界が来ることを楽しみにしています。その日に備えて、私も各国のベストセラーを定期的にチェックしておきたいと思います。では!

 

P.S 実は、この話はまだ続きます。某有名戦略コンサルタントで、現在はビジネススクールの教授をされているU氏と、非常に建設的な意見交換ができたので、それをみなさんにも紹介したいと思います。次回は、タイトルを変えて、そのお話をしますので、ご期待ください。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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