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タカシの外資系物語

君はインドのベストセラーを知っているか?!(ホントの その3)2015.02.03

“ハラル” は リスク? それとも チャンス?

(先週の続き) 先週のコラムでは、イスラム国による日本人拉致問題について熱く語りすぎたため、本題に入ることができませんでした(私の “脱線話” は今に始まったことではないが・・・)。今回は、安全運行(?)で、お話します・・・。

 

テーマは、

 

「日本人にとってのグローバルは、欧米および中国と朝鮮半島のみ。それに対して、欧・米・中のビジネスパーソンにとってのグローバルには、中東やアフリカも含まれる・・・」

 

さて、グローバル市場で勝負する上で、上記の認識差異は、日本人にとってどのような不利益を招くのか?  

 

です!

 

欧米および中国と朝鮮半島以外の “グローバル” を知らないと、どんな不利益があるのでしょうか? 具体例でお話しましょう。

 

みなさんは “ハラル”(または ハラール)という言葉をご存知でしょうか? ハラルというのは、イスラム教の戒律において、許可されているモノや行為のことを指します。例えば、日本では普通のことであるが、イスラム社会、つまりハラルで禁止されていることには、以下のようなことが挙げられます。

 

(1)   豚肉を食べてはいけない

(2)   お金を貸して、利息を取ってはいけない

 

上記の内容は、みなさんもよくご存知だと思います。では、数あるハラルの中で、なぜ上記の事項を知っているのか? それは、日本企業がその分野の営業許可(“ハラル認証” といいます)を得て、ビジネスとして成果を上げているからです。

 

例えば「豚肉」について言えば、食べるのはもちろんのこと、ちょっとでも かすったら アウト! 

 

“かする” 例としては、日本の調味料大手メーカーが、その製造工程において、触媒として豚肉を使っていることがわかり、イスラム圏での販売を禁止されました。“触媒” というのは、物質AとBをくっつける手助けのみをするもので、触媒自体はAとBの結合体には混入しません。

 

つまり、最終製品に 豚肉 は一切混ざっていないのです。でも、ハラル上はダメ。だから、その大手メーカーは、豚肉を触媒としない製法を新規に確立し、イスラム市場に乗り込んだわけです。

 

金融も同様です。利息をとってはいけないので、手数料という形で支払ってもらうサービスを開発しました。具体的には、お金の借り手が必要としているモノや設備投資を、いったん銀行が自腹で購入し、それをリースすることで手数料を得るというモデルです。

 

ま、ここまでくると、経済行為としては全く同じコトをしているわけで、単に 言葉遊び(戒律・法の抜け穴探し) をしている印象を受けなくもないのですが、当事者としての銀行はよく頑張ったと思います。

 

私は元銀行員なので、銀行という融通の利かない組織で、よくこんなサービスの販売許可を通したな、という点に感心します。いずれにしても、日本人に馴染みの薄い地域でビジネスを展開するために、日本企業は血のにじむ思いで頑張った。結果、その果実を得て、日本人一般にも “ハラル” が認識されるようになったということです。

 

イスラム世界はわからない、リスクが大きい、だから進出しない・・・。イスラムを理解しようともしない・・・ このような発想では、何も起こらんわけです。

韓国財閥企業の “したたかさ”

「なーんだ、日本企業も欧米や中国・韓国以外で頑張っているじゃん。何か、問題あるわけ?」

 

大アリです。なぜなら、イスラム市場で、もっと儲けている企業があるからです。それは、どこか?

 

イスラム社会における最大のイベント(これは同時に、最大のビジネスチャンスともいえるのですが・・・)とは何か?

 

それは “ラマダン”(または ラマダーン) です。ラマダンというのは、ある特定の一ヶ月間、日の出から日没までのあいだ、「断食(サウム)」 をしなければならないという、非常に厳しい戒律を指します。

 

で、ラマダンの断食というのが結構変わっていて、日中は何も口にしてはいけないのですが、夜(=日没~日の出)は、飲食可能ということになっている。「なんやねん、それ・・・」 と思うかもしれませんが、日本人の常識から見て奇異に感じるだけで、イスラムでは普通のこと。多様性として認めなければビジネスなどできません。

 

話を戻すと、ラマダン中でも、夜は食事をするわけですから、冷蔵庫に食材を入れておかないといけないわけです。ただし、ラマダン的には、「日中は、食物を口にしてもいけないし、触れてもいけないし、見てもいけない」となっており、現実の生活においては、イスラム圏の住民は、かなりの不自由さを強いられているわけです。

 

しかし、見方を変えると、

 

「かなりの不自由さを強いられている」 → 「不自由さからの開放」 = ビジネスチャンス! 

 

とも言える。

 

そこに目をつけたのが、韓国の某巨大財閥企業でして、なんと、「ラマダン中は、ドアを開けてもライトがつかない、つまり、食材が見えない冷蔵庫」 を発売したところ、これがバカ売れしたんですよ! 加えて、その韓国企業は、下取りした中古品に手を加えて売っているため、このビジネス、利益率が非常に高い。まさに、ボロ儲けしているのです!!

 

インドでも同様のことが起こっていて、「鍵つき冷蔵庫」 がバカ売れしている。なぜ、“鍵付き” か? インドでは富裕層しか冷蔵庫を所有しておらず、その富裕層は、ほぼ100%の確率で、メイドさんや召使いを雇っている(インドの階級社会=カースト、は有名ですよね)。

 

で、どうも、そのメイドさんや召使が、冷蔵庫の中に入っているものを盗むらしいのです。だから、「鍵つき冷蔵庫」 がバカ売れする。そして、その冷蔵庫も、くだんの韓国の某巨大財閥企業の寡占状態にあるとのことで、ここでも 韓国企業の したたかさ が際立っていることがわかります。

タダの高級品 より、ニーズを捉えた中古 が売れる市場とは?!

「ラマダンの月だけ、日中は庫内のライトがつかない冷蔵庫」 「鍵つき冷蔵庫」 ・・・ イノベーションのかけらもありません。でも、ビジネスとしては成功している。それも、中古を売っているので、利益率抜群ときている・・・

 

冷蔵庫などの “白物家電” は、かつては日本のお家芸でした。日本は自国および欧米向けに、白物家電の高機能化・高級化を進めたわけですが、よくよく考えてみると、冷蔵庫の機能なんて、高機能にしたところでたかがしれています。

 

そのうち、高機能かつ高級品の市場は飽和し、購買の中心は、イスラム市場を含む、新興国・途上国に移っていきました。しかし、新興国・途上国市場では、“高機能” というニーズはなく(もちろん、“高級品” なんて眼中になく)、やがて、日本の家電大手は市場から駆逐されていったわけです。

 

一方、韓国の企業などは、コモディティ化して、価格破壊が起こりかけた製品マーケットに、その国ならではの、決して高機能ではないが、ユニークな機能を付加することで、下取りした中古冷蔵庫の再販に成功し、大儲けしている。日本の中古冷蔵庫は、ODAの名の下に、ほぼ無償で新興国・途上国に届けられているのですが、その市場では、タダ同然の高機能メイドイン・ジャパンより、お金を出してでも、「ラマダンの月だけ、日中は庫内のライトがつかない冷蔵庫」 「鍵つき冷蔵庫」 の方が売れる。

 

なんで、こーなるの?(萩本欽ちゃん風、ふ、古い・・・)

 

それは、日本人が新興国・途上国の実態を知らないからに他なりません。日本人の偏ったグローバル観が、ビジネスのビッグチャンスを、みすみす逃しているわけです。

 

なんか、無性に腹立ちませんか?! 日本人って、人がいいにもほどがある、って感じ。これまでに逃がした魚、またこのままでは、今後も逃がすであろう魚は、本当に大きいと言わざるをえません。

 

では、この状況を打破するために、われわれはいかに処するべきか? タカシの “外資流処方箋” について、次回お話しすることにいたしましょう。

 

(次回続く)

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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