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タカシの外資系物語

“時代劇” の衰退 から見た 日本の弱み (その1)2014.10.14

タカシがリスペクトする “書評家” は?!

私は本を読むのが大好きです。では、自分が読む本を選ぶ際、何を基準とするか? 私の場合は、仕事上、読んでおいた方がいいと思われる本(主にビジネス本)は直感でわかります。というか、元来の負けず嫌いも手伝って、ベストセラーのビジネス本には、ほぼ全て目を通しています。 
息抜きで読む小説の類は、好きな作家(東野圭吾さん、誉田哲也さん、宮部みゆきさん、有川浩さん等々)の新作が出たら読むという感じ。加えて、司馬遼太郎さんや山崎豊子さん、松本清張さんなどは、すでに “古典” と呼べる域ですが、日本人の常識として一読はしておくべきだと考えているので、普段の読書の合間にチビチビと読むようにしています。つまり、自分が読みたい本は上記の通りほぼ確定しているので、余程強く推薦されなければ予定外の本は読まないし(実際には、人から推薦される本は、大抵の場合、既に読んでしまっているので)、新聞や雑誌の書評もほとんど参考にしません。

 

しかし、そんな私が唯一チェックしている書評家がいらっしゃいます。それは、時代小説の書評を専門にされている 縄田一男さん です(日経新聞の夕刊に書評を掲載されていますよね)。私が縄田さんをリスペクトしている理由、それは “はずさない” からです。

 

十数年前に、クライアント先の役員から、「タカシさん、戦略なんちゃらのビジネス本もいいけど、どれも同じことの焼き直しだろ?! そんなしょーもない本を読んでる時間があったら、池波正太郎や藤沢周平の時代物を読んだ方が、百倍価値があるぞ! 最近の若い連中は、そういう “ホンモノ” を読まないから、人間の機微というものが理解できんのだ!!」 と、思いっきり頭を殴られて以来、時代小説も読むようになりました。『蝉しぐれ』『鬼平犯科帳』『御宿かわせみ』・・・ 確かに、現代小説にはない、日本人の機微、情緒、文化。それらを通じて、われわれ日本人の長所だけでなく、短所も見えてくる。そして、それは決して古臭くなく、現代人にも通底しているもの。経営者層が、時代小説を愛読する理由が、なんとなくわかったような気がしたものです。

★(星)はいくつ付いたのか?!

縄田さんの書評は、非常に手厳しい。しかし、手厳しいからこそ、“はずさない”し、評価が低い作家に対しても、「もう一息だ、ガンバレ! 俺を唸らせるような小説が、きっと書ける!!」という愛情が感じられます。よって、私は彼を信頼しているし、“★(星)5つ” の評価があった作品は、欠かさず読むようにしています。

 

そんな縄田さんの書評に、“異変” が起きたのは、つい先日のことでした。★5つが最高評価である書評において(★5つが1作もない週も頻繁にある、というか、むしろないのが普通)、なんと、彼はある本に対して、“★10こ”!!! というあり得ない評価を付けたのです。 
★10こ、て・・・ 例えるなら、1問正解すると10点もらえるクイズ番組で、「さーーて、とうとう最終問題となりました。この問題に正解された方は、なんと 1万点 のボーナス・ポイントが追加されます!」 と言っているようなもんです(この例えも相当イマイチですが・・・) 縄田さんは、奇をてらって、書評欄で “遊ぶ” ような人ではありません。前代未聞の ★10こ、一体どんな作品だったのでしょうか?

 

それは、時代劇・映画史研究家の春日太一さんの著書、 

 

『なぜ時代劇は滅びるのか?』(新潮新書)

 

という本でした。縄田さんいわく、「近年における時代劇の衰退を、情に流されることなく、客観的に分析している」 とのこと。そして最後に、「春日よ、一緒に頑張ろう!骨は俺が拾うぞ!!」という主旨のことが書かれていました。おそらく、時代小説の書評を本職とし、時代劇をこよなく愛している縄田さんが、最近の時代劇衰退を自身のものとして、身を切られる思いで春日さんの著書を読まれたのでしょう。結果、感極まって ★10こ という、ぶっとんだ評価になったのだと思います。 
いやぁ、それにしても ★10こ。 私も物書きの端くれとして、リスペクトする書評家から、こんなスーパーな評価をいただきたいものです。「一体、どんな本なんだろう・・・?」 私はやや興奮しつつ、そして、無礼にも春日さんに対して嫉妬心のようなものを抱きながら、翌朝は早めに起床して、通勤途中の本屋に駆け込んだわけです。

“時代劇” が滅びるのは、日本だけ?!

『なぜ時代劇は滅びるのか?』 新書版ですが、文字は比較的大きいので、1時間程度で読み切れます。で、その内容は・・・ ま、タイトルからだいたいのイメージはつかんでいただけると思いますが、ほぼその通りです(って、もっと丁寧に説明しろってか?)。つまり、かつて娯楽の帝王として、映画・テレビ業界を席捲した “時代劇” が、なぜかくも簡単に、かつ急激に衰退の途をたどったのか?

 

「要は、マンネリでネット時代の視聴者にウケなくなったから・・・ でしょ?」

 

ま、そうなんですけどね。しかしですよ、ほんの十数年前には、例えば 『水戸黄門』 などは視聴率30%をたたき出すオバケ番組だったわけです。それが突然のように視聴率を下げ、2011年末に、とうとう終焉を迎えてしまった。この事実を説明するのに、単に「視聴者にウケなくなったから」では、あまりに軽薄すぎやしませんか? ねぇ、ご老公! (うっ・・・ 思わず、うっかり八兵衛口調になってしまいました・・・) 著者の春日氏はその理由を、客観的な事実をもとに、冷静に(というか、冷徹に)分析されています。春日氏は、時代劇研究を職業とされているわけで、時代劇が大好きで大好きでたまらない方のはず。その春日氏が、この本を上梓されたことに意味があり、その心中を察すると、本当に頭が下がります。 
1つ申し上げておくと、本書は本当に面白い!(実際に、多くの書店でベストセラーになっています) なので、みなさんにもその詳細をお伝えしたいのですが、ここではこれ以上内容には触れません。是非、みなさんも手にとって、春日さんの卓越した論説を堪能してください。

 

さて、ものすごく 前フリ が長くなってしまいました。私がどうして、コラムでこの題材を取り上げたのか? それは、日本における時代劇の衰退が、日本における製造業の衰退、ひいては日本経済が衰退した理由に、そっくりそのまま該当すると感じたからです。もちろん、時代劇・時代小説の衰退は、日本に限ったものではないでしょう。しかし私見では、アメリカにおける西部劇やヨーロッパにおける古代&中世ローマもの、ドイツやフランスにおける貴族ものは、日本の時代劇ほどには衰退しない、日本のように壊滅的に無くなったりはしない、と考えています。 なぜか? 理由は3つあります。 詳細は・・・、次回お話することにいたしましょう(と、じらす。結構、壮大な(?)理由なので楽しみにしておいてください)。

 

次回へ続く

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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