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タカシの外資系物語

なぜ 日本人は スピーチ・プレゼン が下手なのか? (その1)2014.01.28

    外資のキックオフは KY ?!

    わが社では、毎年1月の早い段階で、「全社キックオフ・ミーティング」 なるものを実施します。対象は社員全員、つまり、相当な人数(千人規模!)を一堂に集めなければなりませんから、いきおい、場所も限られてきます。今年は、昨年に引き続き、都内の某有名ホールで実施しました。


    さて、“キックオフ” という言葉、日本でもかなり定着してきたように思います。私が外資系企業で働き始めた十数年前には、日本人の友人に話しても、「キックオフ? サッカーの話??」(ちょうど、日本が初めてワールドカップに出場を決めた時期でもありましたんで・・・)という反応が多かったのですが、


    - “Kick off (始める)”  
    - “Launch (これも 始める ですが、既に始まっている、というニュアンスが強い)”  
    - “Take off (こちらも 始める ですが、既に始まっている+相応の準備期間(=助走)があった、というニュアンスを含む)” 


    などの 外資系ワードも、多くの日本企業で普通に聞かれるようになってきました。


    そもそも外資におけるキックオフというのは、お祭り的な要素が強く、服装もフォーマルでOKな場合が多いと思います。毎回、何らかの “旬” のテーマが設定されていて、それに関連したエンターテイメントを行ったり、ノベルティを配ったりします。しかし・・・、このノベルティが、結構ハズしているケースが多い。例えば、日韓共催のワールドカップのときは、上述の通り、まさに会社のロゴ入りのサッカーボールが、社員全員に配られました。それも、本物のサッカーボールならまだしも、子供用のウレタンでできたような、フニャフニャのボール。一般に、外資系企業というのは、後先を考えずに計画するというか、おもてなしの精神がないというか、このときも持ち帰り用の袋を準備していなかったのです。だから、千人以上のビジネスパーソンが、偽モノのサッカーボールを小脇に抱えて、最寄りの駅から電車に乗るという、新手の新興宗教のような一団に、行き交う人から奇異な目で見られてしまいました。


    それでも、サッカーボールなら、まだマシな方でして・・・ キックオフで私がもらった企業ノベルティのうち、最も使えなかったものは、“太鼓のバチ” です。その年、うちの会社は、“Beat the Drum” キャンペーンというのをやっていまして、それに引っ掛けて、太鼓のバチ・・・(“Beat the Drum” には、「鳴り物入りで何かを宣伝する」という意味があります。ちょうど、eビジネス(って、この言葉自体、古っ!)の勃興期で、インターネット関連のコンサル=いわゆる、SIPS:Strategic Internet Professional Service が幅を利かせていた頃です。ああ、懐かしい・・・) それにしても、“バチ” て・・・ 長さも中途半端に長いため、カバンからはみ出て、会社帰りにスーパーで ごぼう でも買った風情を醸し出してしまいます。また、先が微妙に尖っていて、手で持つには危ない。そもそも、太鼓のバチを手に持って歩くなんざ、『アルプスのハイジ』のペーターじゃあるまいし、ビジネス街でやる所業ではない。こういうところって、外資は本当に KY なんですよね、まったく・・・。

    日本人は、大舞台ほど弱い?!

    話を戻しましょう。今年のキックオフ・ミーティングも、それなりの規模を有するホールで実施されました。それなりの規模ということは、舞台もデカい。そのデカい舞台上で、社長以下、上級役員やゲストが次々とスピーチをしたり、昨年業績の良かったスタッフを表彰したりするわけです。


    数年前から、役員のスピーチは、演壇で静止して話すのではなく、ヘッドセットのマイクを使って行うことになりました。そう、完全にスティーブ・ジョブズを意識した演出です。大画面のスクリーンに、会社の業績や今後の戦略を映し、舞台全体、端から端まで、身振り手振りのオーバーアクションでプレゼンするわけです。会場のキャパ的には、AKBや嵐とはいわないまでも、中堅どころの演歌歌手のコンサート程度の広さはありますから、さぞかし気持ちいいことでしょう。プレゼンを生きがいとしている私としては、毎度のことながら、「いつか、あの舞台でスピーチしたい!」と羨望の眼差しで見つめています。そんなに出世したいのか、いやいや、出世はしたいですが、そんなことより、私にとっては、大観衆の前でスピーチすることの方が魅力です。要は、目立ちたがり屋なだけなんですけどね・・・


    役員のスピーチを順番に見ていると、やはり、外国人はうまい! ジョブズとまではいきませんが、魅せますし、聴かせます。一方、日本人役員のスピーチは・・・、お世辞にもうまいとは言えません。シャイで有名な某役員などは、舞台全体を使え! と社長に指示されたのか、舞台の端から端までを行ったり来たり。おまけに、英語も不得手なようで、原稿を見ながら抑揚もなくブツブツと話すだけ。これで薪でも背負えば、見た目は 二ノ宮金次郎 ですが、悲しいかな、二ノ宮金次郎ほどの人徳があるとは思えないので、見ている側としては痛々しい限りです(って、自分の会社の役員を、よくここまでボロクソに言うよな・・・、って感じですが、外資というのはそういう所。数字さえ上げていればいいというわけではなく、数字と同じぐらい、自己をアピールすることも重要なのです!)。


    どうして日本人のスピーチやプレゼンは、大舞台になればなるほど、外国人と比べて見劣りするのか? もちろん、英語の流暢さでは、外国人には敵いません。しかし、これは英語の問題ではありません。日本人のスピーチは、聴衆の腹に落ちないというか、胸を打たないというか、何も残らないことが多いんですよねぇ・・・。 なぜか? 実は、理由は簡単でして、私は以下の3点に集約できると踏んでいます。


    (1) 絶対的な練習量が不足している 
    (2) 練習時に、第三者からのアドバイスを受けていない 
    (3) “遊び” がない

     『やっぱり見た目が9割』 なのか?!

    「練習量が不足している、って、外資では、スピーチやプレゼンの研修があるって聞いたけど・・・」 その通り。わが社を含め、多くの外資系企業では、魅せるため、インパクトを与えるためだけのプレゼン研修があります。それも、役員レベルになればなるほど、専門のトレーナーが付いて、本格的に研修を受けます(実は私も受けました)。


    魅せるため、インパクトを与えるため “だけ” のプレゼン研修とはいかなるものか? この研修におけるポイントは、プレゼンの内容ではなく、見栄え と インパクト に特化しています。スピーチの導入方法、観客への目配せをどうするか、言葉の強弱をどうつけるか・・・ 驚かれるかもしれませんが、スクリーンを横切ったときの影(シルエット)をスマートに見せる方法まで習います。例えば、プレゼン時には、スーツやパンツのポケットに、何も入れてはいけない、という原則があったり。まるで、タレントか何かのレッスンのようですが、こういうのも重要なんですよね。


    竹内一郎さんのベストセラーに 『見た目が9割』 その続編として 『やっぱり見た目が9割』 というのがありますが、それはその通りなんです。プレゼンの機会は、たった1回であることが多い。しかも、相手は時間の限られた役員層です。彼ら・彼女らの興味は、内容については価格と期待効果ぐらいのもんで、詳細はどうでもいいのです。それよりも、金を払う相手がパートナーとして信用するに値するかどうか、それを 見た目 で判断する方が、はるかに重要なのです。


    このように、外資では、重箱の隅をつつくほどのレベルで、スピーチやプレゼンの研修・練習をします。なのに、どうして、日本人のスピーチは下手なのか? それは、練習 はするけれども、練習 “量” が足りないのです。ここでいう “量” とは何を指すのでしょうか? 詳細は、次回お話したいと思います。

     

    (次回へ続く)

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    この記事の筆者

    奈良タカシ

    1968年7月 奈良県生まれ。

    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

    みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
    出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
    結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

    書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
    奈良タカシ

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