グローバル転職NAVI

キービジュアル キービジュアル

タカシの外資系物語

インターンシップの功罪 ( その 1 )2008.10.14

見慣れない集団の正体は ?

私 「何、あれ ? 」

A 君 「さぁ … 」
私 「若いな」
A 君 「若いっすね」 …

 

最近、隣の部署に、見慣れない若者を目にするようになりました。ま、そもそも私のいる会社は、典型的な日本の企業よりは、かなり平均年齢の若い会社なのですが、それにしても、明らかに「若い」! 彼らは一体何者なのか? 私は、おそるおそる、学生さんのそばにいた顔見知りの B さんに尋ねてみました。

 

B さん 「インターンシップの学生さんですよ」
A 君と私 「ふーーん」

 

インターンシップとは、「就業体験」のこと。つまり、就職前の学生さん達が、実際の会社で仕事をすることで、ビジネスパーソンとしての経験を積むのです。そういえば、アメリカ人の同僚も、学生時代に地元の企業でインターシップを経験したことがあると言ってましたっけ。当然、給料など支払われないのでしょうが、それにしても学生時代にそんな体験ができるなんて、何とまぁ、うらやましい限り。

 

私 「でも、どうせ体験するなら、もっと一般的な会社を選べばいいのにね。IT コンサルなんて、かなり特殊な仕事のような気がするけど … 」

 

B さん 「いや、そうでもないんですよ。あの学生さん達は、うちの会社に入社するのを狙ってるんですから」

 

私 「へ ? 」

 

B さん 「うちの人事部も、早い段階から有望な学生さんを確保できるっていうんで、ここ数年、かなり力を入れてるんですよ ! 」

 

何のことはない、つまり一種の「青田買い」なのです。企業にとっては、IR (Investor Relation:企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向に関する情報を発信する活動。この場合は、社会に開かれた企業であることをアピールする目的 ) の要素もあるのでしょうが、実質的には、学生さんを確保する意味合いが強いわけです。

 

日本では 1996 年に就職協定が廃止され、就職活動のスタートが明確ではなくなってしまいました。そこで、企業は採用を目的としたインターンシップに注目し、学生の利害とも一致した結果、一気に浸透したようです。私が就職活動をした頃 ( 1990 年 ! もはや、おっさんの域 ! ) は、「X デー」なるものが存在し、業界ごとに一気に就職活動が解禁になったものですが … もはや、隔世の感があります。(『タカシ・就職活動の頃』参照のこと ) 

いつ勉強するの ? いつ遊ぶの ?

私 「大変だね、学生さんも … 卒論とかもあるだろうに … 」

B さん 「大丈夫ですよ、だってまだ “3 年生” なんですから!」

 

3 年生 ! 大学 3 年生といえば、専門課程のゼミも決まって、「さぁ、これから本格的に勉強しようか ! 」って時期じゃないですか ! それに、まだまだ遊び足りないだろーーに …

 

B さん 「タカシさんも古いなぁ … 今の学生さんは、3 年生の夏から秋にかけてインターンシップに参加して、4 年生の 4 月には内定をもらっちゃうんですよ。うちの会社も、4 年生の GW 前には内定出してるみたいだし。」

 

なんと ! そんなんじゃ、いつ勉強するの ? いつ遊ぶの ?

 

B さん 「内定もらってから、本格的に専門課程の勉強をするみたいですよ。4 年の夏には、長期の海外旅行って人も多いし、それなりに学生生活を堪能しているみたいですけどね … 」

 

私の頃と比べて、学生生活も様変わりしたもんです。まぁ、勉強も遊びもそれなりに経験しているみたいだし、単に順序が変わっただけといえば、それまでなんですけど。でも、1 つ疑問が … 。まだ、専門課程の勉強をしてもいない学生さんを、企業はどうやって選ぶのでしょうか ?

 

B さん 「そんなのあんまり関係ないじゃないですかぁ … どうせ、勉強なんかしないんだし。タカシさんだって、そうだったでしょ ? 」

 

…ま、確かに … 妙に納得感があって、泣けるが … (T-T)

「資格」 と 「学問」 の差

早期のインターンシップについては色々と意見はあるでしょうが、素直に考えると、それなりにいい制度のような気もします。学生さんにとっては、実際のビジネスを体感できるわけで、これは大学の座学では難しい。ゼミで討論会をやったところで、やはりフィクションの域は出ません。しかし実際の企業では、自分のやったことについて、常に対価としての「お金」を意識できるわけで、この経験は大きいと思います。

 

一方、企業にとっても、多くのメリットがあります。「青田買い」の側面はさて置いても、その企業の業務内容を理解してもらえるだけでも意味があります。特に、コンサル業界などは、人気が高いわりには、実態を理解されていないケースが多いのも確か。インターンシップを通じて、その役割や意義を知ってもらい、志望者の母集団そのものを増やすことも重要です。

 

とは言うものの、大学での勉強をおろそかにしてまでインターンシップに参加するのには、個人的にかなりの抵抗感があります。確かに、私も学生時代には、「就職に強いかどうか ? 」という観点でゼミを選んでいたように思います。「偏差値の高い大学に入学すること」と「有名企業に入社すること」 は、ほとんど同じ意味だったことも否定しません。しかし、おっさん (40 歳 !) となった今になって振り返ってみると、学生時代に思いっきり勉強しなかったことを非常に後悔しています。

 

ここでいう「勉強」というのは、「英会話」とか、「簿記」とか、「情報処理」といった、仕事に直結する「資格」的な勉強ではなく、純粋な「学問」のことを言っています。資格の勉強というのは、社会人になってから、いくらでも勉強できます。しかし、純粋な学問 ( 経済学部出身の私にとってみれば、経済学 ) は、学生時代にしかできないのです。「純粋な学問って、意味あんの ? 」って、あるんですよ、これが ! 長く社会人をやってみるとわかりますが、学生時代にきちんと学問を修めた人は、人間的な「奥の深さ」があるのです。一方、資格の学問しかやっていない人は、器用なのですが、人間的に薄っぺらい。これは、管理職になると、一層身にしみてわかります。

 

「インターンシップもいいけど、勉強もしっかりね … 」

 

というわけで、どちらかというとインターンシップに対して否定的だった私。それから数日後、インターンシップの学生さんと会話する機会を得ました。実は、その場で、私の「偏見」は見事に打ち砕かれることになるのです ! その理由とは ? 次回、お楽しみに !

( 次回続く )

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

外資・グローバル企業の求人1万件以上。今すぐ検索!

この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

合わせて読みたい

---