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タカシの外資系物語

パッケージ導入コンサルのすすめ ( その 1 )2008.03.04

紹介されたプロジェクトに難色を示すヨシオ

「タカシさーーん、なんかいいプロジェクトないっすかねぇ … (T-T)」

 

私のチームに所属するヨシオくん。つい先日、ある銀行の IT 戦略立案プロジェクトを終え、今はプータロー ( = ヒマ人 ) の身。このまま遊んでいたのでは、自分のボーナスに影響しますので、次のプロジェクトを必死に探しています。もちろん、ヨシオくんの稼動状態は私自身のボーナスにも影響します。なので、私もヨシオくんには優先的にプロジェクトを紹介しているのですが、「ある理由」でアサイン ( = プロジェクトに配属すること ) ができないのです。

 

私 「だから、パッケージ導入コンサルの案件を紹介してやったじゃない ? 」

ヨシオ 「パッケージ導入ですかぁ … それはイヤなんだよなぁ … 」

 

アサインできない理由とは単純でして、せっかく紹介してやったプロジェクトをイヤがるのですから仕方ありません。「なんだ、タカシはいちいち部下の好き嫌いを聞いているのか、甘いな … 」 いやいや、そういうわけでもないんですよ。私は社内では「鬼のタカシ」と言われているぐらいで、部下からは非常に恐れられています ( コレ、ほんと ! ) でも、私には 1 つ信念めいたものがありまして、それは「本人がやる気を出さない限りはうまくいかない」というもの。いくら周囲がとやかく言ったところで、本人がやる気を出さないことには、より良い成果が上がらないばかりか、本人のスキルアップにもつながりません。

 

これが日系企業に勤めていた頃なら、「ヨシオくん、だまされたと思って、しばらくやってみなよ~ ( 猫なで声 ) 」 などと言ってなだめるか、または、「アホかーーーっ ! つべこべ言わずに、紹介してやった案件に入れや、コラァーァ ! 」などと恫喝に近いようなこともしたのでしょうがね … 。経験上、外資においては、好き嫌い言う人というのは、長い目で見ると、かなり高い可能性で「淘汰」 ( = 排除される、つまり、クビになる ) されているように思います。短期的に無理やりアサインしたところで、本人がシブシブ仕事をしていたのでは、早晩、破綻するというわけです。なので、やはり本人の自主性は尊重した方がいいのです。もちろん、本人が知らないことについては、先輩・上司として教えてやらなければならないのですが。

 

さて、話を戻しましょう。ヨシオくんは、「パッケージ導入コンサル」へのアサインを嫌がっています。なぜか ? その理由について、以下でご説明することにしましょう。

パッケージ導入 と Pure コンサル

まず、「パッケージ導入コンサル」についてお話します。ここでいう「パッケージ」とは、パッケージ・ソフトウェアのことを指しています。要は、市販されている出来合いのソフトのことです。ただし、ソフトといっても、ワードやエクセルなどのことを言っているわけではありません ( ワードやエクセルをインストールするのに、いちいちコンサルなんて受ける必要ありませんよね ! ) 。 IT コンサルの業界で「パッケージ」という場合は、企業の基幹業務そのものを処理するソフトのことを指しています。製造業でいえば、「発注 → 仕入れ → 製造 → 在庫管理 → 物流 → 販売 …」などの一連の業務を対象としたもので、「 ERP 」などとも言われています ( 「 ERP 」というのは、Enterprise Resource Planning の略で、文字通り訳すと、「企業資源計画」となるのですが、これでは何のことかわかりません。なので、企業の業務全体を対象にしたソフトウェア … くらいの意味だと思っていただいて結構です )。

 

「 ERP 」をはじめとしたパッケージソフトは、各企業が平均的に行っていると想定されるプロセスを前提としています。つまり、「標準的な仕事のやり方」です。なので、パッケージの想定している通り、標準的な仕事しかしていない企業ならば、パッケージソフトを買ってきて、ポンッと入れてしまえば、その日から使えるはずです。

 

しかし、実態はそう簡単ではなくて、いくら標準的な企業でも、その企業ならでは仕事のやり方というのが、どこかにあるものです。本来なら、「その企業ならではやり方」を捨て去り、すべてパッケージ合わせれば簡単なのですが、そうもいきません。なので、パッケージを導入する際には、「どの部分を残し、どの部分をパッケージ合わせるか」ということが重要となります。そこで登場するのが、「パッケージ導入コンサル」です。

 

コストの観点からすると、パッケージソフトに合わせれば合わせるほど、導入コストは低く抑えることができます。なぜなら、その方が、「ポンッと入れる」イメージに近いわけですから、余分なシステム開発が減るからです。一方、パッケージには存在しない、その企業ならではのやり方を残せば残すほど、追加の開発が発生するので、コストがかさむというわけです。

 

さて、 IT コンサル業界において、上記の「パッケージ導入コンサル」に対峙する分野として、いわゆる「 Pure ( 純粋 ) な IT コンサル」があります。何が Pure かというと、パッケージソフトありきではなくて、白紙の状態から、純粋に IT 化を検討するコンサルティングのことを言っているからです。ヨシオくんをはじめ、「パッケージ導入コンサル」を嫌がる人には、「 Pure な IT コンサル」をやりたいと思っている人が多いように思います。一体、どういう思考で、「パッケージ導入が嫌で、 Pure コンサルがいい ! 」 となるのでしょうか ?

パッケージ導入を嫌がる理由

私自身は「パッケージ導入コンサルほど、若手のコンサルタントに適した仕事はない ! 」と思っています。なので、それを嫌がる人の気持ちが、実は良くわからんのですが、話を聞いていると、どうも以下の理由に集約されるようです。

( 1 ) 「パッケージありき」でコンサルを進めるということについて、何となく抵抗感がある = Pureコンサルの方が、何となくカッコいい感じがする

( 2 ) パッケージ導入 = システム開発の「におい」がする

( 3 ) パッケージの内容を覚えるのが面倒である

… アホか、こいつらは … 自分で書いておきながら、情けなくなってきました。

 

( 1 ) 「 Pure コンサルの方が、何となくカッコいい」だとぉー ? 仕事のカッコよさとパッケージなんて、何の関係もないやろーがぁーーーーーーーー ! (T-T)
( 2 ) 「におい」って何やねん、「におい」って … IT コンサルにシステム開発の「におい」がなかったら、一体何やるんじゃーーーーーーーーーーーーーーー ! ハァハァハァ … (T-T)(T-T)
( 3 ) … め、面倒って、アンタ … 論外 … (T-T)(T-T)(T-T)
 
ふぅ … 、少し落ち着きましょうかね。ヨシオくんをはじめとする「アンチ・パッケージ派」は、どうしてこのような考えを持つに至ったのか ? それは、パッケージ導入コンサルの経験を通じて得られるスキルの何たるかについて、「知らない」からです。なぜ、知らないのかというと、これまでそういう経験がなかったからです。経験がないのなら、だれかが教えてあげる必要があります。ならば、私が教えて進ぜよう、というわけです。

 

そもそも、パッケージ導入コンサルというのは、IT コンサル会社の大きな収益源となっています。その分野に関与しているコンサルも大勢いますし、出世の仕方を見ても、Pure な IT コンサルをやっている人より、若くして高い地位に就いているケースが多く見受けられます。

 

次回のコラムでは、パッケージ導入コンサルが、なぜ若手コンサルタントのスキルアップに有効なのか、また、なぜパッケージ導入コンサルを経験した方が、出世が早い傾向にあるのか、ということについて、私自身の経験を踏まえてお話したいと思います。キーワードは、「型」 ( かた ) です。どうぞ、お見逃しなく !

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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