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タカシの外資系物語

外資における間接部門の評価 ( その 1 ) : IT ヘルプデスク編2007.04.17

幻の画面を見たか ?

数日前のこと。帰宅後にもかかわらず、私は自宅でシコシコと作業をしていました。明日が締め切りの作業が、まだ終わっていなかったためです。


「あぁーー、明日までに終わるかにゃ … (T-T)(T-T)(T-T) ドラえもーーん、助けてーーー ( のび太か、わしは … ) 」


深夜の 3 時を過ぎた頃でしょうか。明日までに送付すると約束していた資料もほぼ完成し、私は余裕をかまして、夕刊を読みながらコーヒーを飲んでいました。


「フフフ、やればできるじゃん。それにしても、仕事の後のコーヒーはうまい … ダバダー、ダーダダバダーダバダー ( 思わず『ネスカフェのテーマ』を口ずさむ ) 」


実は、さっきから気になることが 1 つ。どうも、 PC が「熱い」のです。ときどき、「フィウィィーーーーン ! 」と音を上げて、横から生温かい空気を出し続けています。以前にも、画像ファイルを立ち上げながら MS-ACCESS を処理したりすると同様のことが起こったりしていたのですが、今はエクセルしか立ち上げていません。


「そうかそうか、お前も徹夜で大変だったんだな … 。すぐに終わるから、もうちょっと辛抱してくれよ … (T-T) 」


私は作成した資料をメンバーに送るために、メールソフトを立ち上げました。「フィウィウィィーーーーーーン ! 」 PC の様子が明らかに変です。さっきまで生温かかった空気が、「熱風」に変わっています。


「わかった、わかった。すぐ終わるからな … よーーし、送信、と ! 」


シュイーーーーン … 送信ボタンを押そうとした、まさにその瞬間。私の PC は情けない音とともに、ダウンしてしまいました。画面は文字ばかりの、いわゆる「 DOS 画面」上に変わり、いくつかのエラーメッセージが表示されています ( DOS というのは、 PC の OS です。われわれは普段気にしていませんが、 Windows というのは DOS 上で動いています。最近では目にすることはほとんどなく、見ると不幸なことが起こるという噂。「幻の画面」とも言われています … ホントか !? )


「… ハハハ、ま、たまにはこういうこともあるだろーーさ、な ! PC だって完璧じゃないんだから … 電源落として再起動、っと … きっと復活してくれるはず … 」

コールセンターという名の樹海

・・・・・・ あれから何時間が経過したでしょうか。外は白々と、夜が明けてきました。私はすでに、「幻の画面」を 10 回以上見ています。もはや、幻でも何でもありません。現実として、明らかに「故障」しています。


「おんどりゃーー、なめとんかーー ! そやから、 PC は信用できんのじゃーーーーーー ! 」 というのを、セリフなしで、パントマイムで言ってみました。傍から見れば、さぞかし、気持ち悪かったろうと思います。


冷静に、冷静に … 急な PC トラブルに備え、私の会社では 24 時間体制のヘルプデスクが完備されています。私は、早速電話してみることにしました。


私 トゥルルル、カチャ ! 「あ、もしもし。 PC が壊れたみたいでして … 」


Please input your employee number ・・・ ( テープ音声 ) 


私 「社員番号入力、と ・・・ 」 トゥルルル、カチャ ! 「あ、もしもし、突然 PC がダウンしまして ・・・ 」 


Company application #1、General application #2、PC trouble #3 ・・・ ( テープ音声 )


私 「#3、と ・・・ 」 トゥルルル、カチャ ! 「あ、もしもし、幻の画面を見てしまいまして ・・・ 」


PC hardware trouble #1、Network ・・・・ ( テープ音声 )


早よ、出ろやーーーーーーーーーーーーーーーっ ! ハァハァハァ ・・・ 時計の針は、すでに 7 時になろうとしています。コールセンターのテープ音声地獄にイライラしているぐらいなら、直接、ヘルプデスクに出向いた方がいいように思われます。


「よーーし、ヘルプデスクに行こう ! 」

担当者タナカを評価する

ヘルプデスクは、本社オフィスの 18F にあります。


私 「あのー、おはようございます ・・・ PC の様子がおかしいんですが ・・・ 」 


担当者 「おはようございます ! まずはこちらに社員番号とお名前を記入いただけますか ? 」 


私 「は、はぁ ・・・ 873XXX、奈良タカシ ・・・ と」 


担当者 「はい、ありがとうございます ! 私は本日、奈良さんを担当させていただきますタナカと申します。よろしくお願いいたします ! 本日は、どうされましたか ? 」 


私 「 PC の調子が悪くてですね ・・・ Windows が立ち上がらずに、すぐにダウンしてしまうんですよ」 


担当者 「そうですか ・・・ それは大変でしたね。早速見てみましょう ・・・ あ、この画面ですね」 


私 「そう、それです ! 」 


担当者 「おそらくこれは PC 本体のマザーボードかメモリーの問題だと思います。ハードディスクは問題なさそうなんで、データは OK ですよ ! 」 


私 「ホントですか ! (T-T) (T-T) (T-T) 」 


担当者 「修理に出しますんで、同じ型番の PC を代替機としてお貸しします。ハードディスクごと入れ替えちゃうんで、ちょっと待っていてくださいね」 


なんとラッキーなことでしょう ! データが壊れていたらどうしようと思っていたのですが、最悪の事態は避けられたようです。ハードディスクを代替機に載せ代えたら、そのまま何事もなかったかのように使えるようなので、この手のトラブルとしてはかなり「軽症」で済んだ方です。 


担当者 「はい、終了です。ご苦労様でした。では、こちらのアンケート用紙に記入をお願いします」 


私 「アンケート用紙 ? 」 


アンケート用紙には、ヘルプデスク担当者の対応・専門知識・こちらの満足度などの記入欄がありました。 


「この人たちは、これで評価されてるんだな ・・・ 」 


一般に、社員向けの IT ヘルプデスクなど、企業の間接部門というのは評価が難しいと言われています。なぜなら、直接的に収益を生み出すわけでもなく、また、材料の調達などでコスト削減を実現できるというような、目に見える指標がないからです。評価が難しいから、評価しなくなる。評価しないから、やる気もなくなる ・・・ ということで、サービスレベルもいまいちだし、担当者にも覇気がない状況になりがちでした。 


外資ではこのような状況を避けるために、直接部門であろうが、間接部門であろうが、あらゆる部門において、評価指標を設定しています。間接部門の評価指標の 1 つが、私が依頼されたアンケートなのでしょう。おそらく担当のタナカさんは、修理を受け付けた社員からアンケート用紙を回収して、その内容で評価されているはずです。良い評価を得るためには、ハキハキと明確な対応をしなければなりませんし、愛想もよくなくてはなりません。タナカさんにとっては、私は「顧客」であり、「顧客の声 ( VOC : Voice of Customer といいます ) 」が評価指標になっているというわけです。 


そういえば、毎期の優秀社員表彰の中には、営業部門などに混じって、必ず間接部門の社員も含まれています。外資系企業では、間接部門に対しても明確な評価指標を設定し、優れた社員に対しては、直接部門と同様の評価や表彰を与えることで、社員全員のモチベーションを引き出し、活き活きと働ける職場を作り上げているわけです。日系企業も大いに見習うべき部分があるように思います。 


いやー、タナカさんのおかげで、トラブルも解消されました。私はコーヒーを飲みながら、メールのチェックをしていました。 


「フフフ、それにしても、トラブル解決後のコーヒーはうまい ・・・ ダバダー、ん ? 」 


見ると、緊急メールの嵐 ! タイトルは、と・・・ 「【緊急】資料まだですか ? 」「【大至急】早く送ってください ! 」 か ・・・・・・ 


あーーーーーーーーーっ、資料送るの忘れとったわーーーーーーーー (T-T) (T-T) (T-T) 


次回は、間接部門を評価することによるデメリットについてお話します。 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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