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タカシの外資系物語

外資の年始は人事異動から ? ( その 1 )2007.01.16

秘書からの不吉な電話

トゥルルルルルー♪ トゥルルルルルー♪


年末も押し迫った 12 月 29 日の夕刻、「いやぁ、今年も頑張った、頑張った ・・・ そろそろ仕事納めして、帰ろうかにゃ ・・・ 」 ということで、 PC の電源を落として、席を立ちかけた私。突然、携帯がけたたましく鳴りました。


(T-T)  非常にイヤな予感と寒気がします。ブッチして帰ろうかな、と思ったのですが、何か問題を抱えたまま新年を迎えるのも気持ち悪いし。しぶしぶ電話を取ると、聞きなれた声。


「もしもしタカシさんですか ?  秘書のアキコですが ・・・ 」


上司の Thomas の秘書をしているアキコさんです。年末最終日のこの時間に、 Thomas の秘書さんから電話 ・・・ ろくな話でないことは、容易に想像がつきます。私は、ブッチして帰らなかった自分を呪いながら、話を続けました。


私 「どうしました ? 今ミーティング中なんで、簡単に要件だけ ・・・ ( ミーティング中って ・・・ うそつけ ! 帰ろうとしとったやんけ ・・・ ) 」


アキコ 「お忙しいところ、すいません。人事異動のことなんですが ・・・ 」


私 「人事異動って ? いつの ? 」


アキコ 「 1 月 1 日付です。 5 分ぐらい前に、 Thomas からタカシさんにメールしたようなんですが ・・・ 返事がなかなか来ない、って、Thomas がイライラしてるもんで ・・・ 」


私 「 ・・・ ( あ、あのなぁ ・・・ ) 」


5 分前に送ったメールの返事をイライラして待つ Thomas もどうか、という感じですが、それよりも何よりも、 1 月 1 日付人事異動の相談を、暮れも押し迫った 12 月 29 日にやるなよ ! と言いたくなります。あと、 3 日しかないやんけーーー !


タカシ 「 ・・・ ちょ、ちょっと待ってくださいね、今確認しますから ・・・ Thomas からのメール、っと ・・・ お、これだな、どれどれ ・・・ 」

ボスからの無理難題

メールに書いてあることを簡潔にまとめると、以下の通り。


・ タカシの現行チーム ( 20名 ) を 2 分割し、タカシと A さんをリーダーとする 
・新しいチームは、 IT 戦略 ( IT Strategy ) とプロセス戦略 ( Business Process Strategy ) とする。各チームの陣容は、タカシと A さんが素案を作り、 Thomas が承認する 
・本件は、 1 月 1 日より実施


「んなもん、できるかっ ! 」


私のチームを 2 分割して、もう一方のチームリーダーを A さんにするのはいいとしましょう。 Aさんならしっかりしていますし、リーダーを任せても大丈夫です。加えて、各チームの人選案を、私と A さんに作らせるというのも、まぁ、良しとしましょう。し、しかしですよ、みなさん ! その案を Thomas に承認してもらって、1 月 1 日付で人事異動を発令するなんざ、時間的にどう考えてもできるわけがありません。年末の 2 日しかないやんけーーー !


私 「アキコさん、こりゃ時間的に、かなり無理があると思うんですがね。ま、Best effort っちゅうことで、やるにはやりますけど ・・・ ちょっと、 Thomas に代わってもらえます ? 」


アキコ 「 Thomas さんなら、さっきお帰りになりましたが ・・・ 」


私 「へ ? 私の返事が来ないと、イライラして待ってるんじゃ ・・・ 」


アキコ 「いや、私は Thomas がイライラして待っていることだけ伝えたかっただけでして ・・・ Thomas の計画では、本日中にタカシさんと A さんが話し合った人選案が送られてきて、明日の朝一で人事に申請するってことになってましたが ・・・ 」


私 「んなもん、できるかっ ! ! ! (T-T) (T-T) (T-T)」

人事異動は気分転換 ?

さて、みなさん。上記の件、随分無茶な話だと思われたことでしょう。しかし、外資ではそれほど無茶な話でもないのです。そのことを理解いただくために、外資の人事異動における基本的な考え方をご説明しましょう。


外資は日系企業のような、定例の人事異動はありません。そもそも各人が、ある特定分野における「スペシャリスト」という扱いですから、役割がピッタリはまって業績が上がっていれば、人事異動などする必要がないからです。では、どんな場合に人事異動が起きるのか、大きく分けると、以下の 3 点に集約できると思います。


( 1 ) 適切な人材がアサインされていなくて、業績が芳しくないとき 
( 2 ) 何か新しいこと ( 新規事業など ) を始めようとしたとき 
( 3 ) 業績はボチボチなのでこのままでもいいのだが、ちょっと刺激を与えてみたいとき


今回 Thomas が検討している人事異動は、( 1 ) と ( 3 ) の中間ぐらいではないかと思います。業績が著しく悪いわけではないので、ちょっと「喝 ! 」でも入れようと思ったのではないでしょうか。はっきり言うと、 Thomas の「気分転換」みたいなもんです。


「き、気分転換って ・・・ そんな安易な理由で人事異動をしてもいいのか ! 」って、ちょっと思いますよね。いいんです ! 外資というのは、ルールを守って業績を上げてさえいれば、基本的にはリーダー ( この場合、 Thomas ) の好き勝手にしていいのです。逆に言うと、すべての責任は Thomas が取らされるわけですから、リーダーは、その時々に応じて、最も成果の上がる組織を作っておく必要があるということです。


このように、ある意味「思いつき」で人事異動を発令しようとしているわけですから、週末に思いついて翌週実施 ・・・ なんてこともありえるわけです。確かに、今回のように「年末の金曜夕方に指示して、正月の翌月曜実施」というのは、処理期間が短すぎるような気もしますが、 Thomas にしてみれば、そんな意識はありません。指示が年末になったのは、自分がクリスマス休暇で休んでいたために、指示ができなかっただけです。処理が年末年始になったのも日本人的には奇異な感じですが、外国人にしてみれば、正月など関係ありません。彼らにとってみれば、クリスマスに働いて、正月に休むことの方がおかしな話なのですから。

人事異動で始める年始

「 Hi, Thomas. This is TAKASHI speaking… 」


とは言うものの、あまりにも時間が短すぎるのも確かです。私は Thomas に電話して、何とか締め切りを延ばしてもらうことにしました。


・・・・・・


Thomas 「 Takashi, You OK ?! 」


私 「お、オーケー ・・・ 」 
・・・ 結局、 1 月 4 日まで待ってもらうことに「成功」しました。え ? どこが成功やねん、って ?  これが、精一杯なんやぁーーーーーーーー (T-T)、これ以上引き伸ばしたら、「タカシのせいで、組織のオペレーションがうまくいかなかった ! 」とか、後からブチブチ言われるのがオチなんやーーーーーーーーーーーー(T-T) (T-T) (T-T) ハァハァハァハァ ・・・


でも、 1 月 1 日と 4 日の違いは大きい。これで、元旦ぐらいは休めそうやないですかーーーっ、ホッ ・・・ って、なんちゅうレベルの低い願望 ・・・ な、泣ける (T-T) (T-T) (T-T)


「ま、いずれにしても、 A さんと相談しないとな。電話、電話、と ・・・ 」


A さんに電話したのですが、かかりません・・・


「年末だもんな ・・・ 実家に帰ってるかもしれないし。ま、とりあえず、メール、メール、と ・・・ 」


A さんにメールを出したところ、ものの 5 秒で「返事」が返ってきました。


「は、早っ ! なになに ・・・ 」

 

【 A さんからの返信メール】 

Subject : A is out of office 

I will be out of office starting 2006/12/29 and will not return until 2007/1/10. 

長期休暇で旅行に出かけております。ご迷惑おかけしますが、宜しくお願い致します。 



・・・ ふ、不在時の自動配信メールかい ・・・ なんでやねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん ! (T-T) (T-T) (T-T)


次週は、外資における人事異動の中身についてお話します。

 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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