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タカシの外資系物語

降格人事ヲ命ズ ( その 1 )2005.05.17

みなさんは、「降格」になったことがありますか ? 例えば、何かのプロジェクトの担当者からはずされたとか、そんなことならあるかもしれません。しかし、「課長から係長に降格」なんていうような、文字通りの職位が下がってしまった経験をお持ちの方は、ほとんどいらっしゃらないのではないでしょうかね。実は私、前職の外資時代に、「シニアマネージャーからマネージャーへ」降格されたことがあります。今回は、私が受けた「降格人事」の顛末をお話します。

何のために出世する ?

外資に転職して、はや 8 年。実はもう、人事上の「出世」とかにはあまり興味がありません。そりゃもちろん、職位は高い方が何となく気持ちいいですし、前回のコラム ( 『社内研修にて(その 2 ) - 年下の先輩」』) でも書いたように、自分より年下で職位が上の人がいたりすると、かなりムカついたりしているのは事実です。しかし、最も重要なことは「いくらもらっているか ? = 給料」であって、役職よりは給料が高い仕事の方がいいと考えています。


「そんなの当たり前じゃねぇか ・・・・・・ 」と思うかもしれません。しかし、私が「役職より給料」という考え方をするようになったのは、外資に転職してからのことです。日系の銀行に勤めていたときは、「給料よりも役職」という意識の方が強かったような気がします。それはなぜか ? そもそも日系企業は外資のように、給料に大きな格差が出ない仕組みになっていますので、給料の大小をとやかく言っても仕方ないということが挙げられます。給料で差がつかないので、役職で競争させるわけです。何のためか ? それは、自分のプライド・優越感のためでしょう。「出世すれば自分のやりたいことができるから」という、ちょっとカッコいい理由を挙げる人もいますが、私が日系企業に勤めていたときの感覚では、 95% の人は「プライド・優越感」のために出世をしたがっています。


よくよく考えてみると、これは何てうまい仕組みなんでしょう。数百人もの新卒学生を横一線に並べて、よーいドン ! 給料はそんなに出せないけど、みなさんのプライドに賭けて頑張ってねーー。みんな優秀な大学を卒業したんだから、隣のあいつになんか負けるわけないもんねーー ・・・・・・ こんな単純な仕組みに乗せられて、給料の何倍もの労働を強いられているというのが現状なわけです。

日系企業の複雑な役職体系

銀行時代の役職は、非常に複雑だったことを覚えています。入社後 10 年ぐらいは、いわゆる「ヒラ社員」なのですが、約 3 年ごとに内部的な役職は上がって行きます。ここで脱落する人は、 100 人に 1 人ぐらいで、余程のことがない限り、同期で差がつくことはありません。「ヒラ社員」の次は、「調査役」、その次は「主任調査役」と進みます。調査役でなければ課長になれませんし、主任調査役でなければ部長や支店長になれません。で、調査役になるときに同期の 3 割ぐらいが落とされます。主任調査役のときはもっと厳しく、一生勤めてもなれない人もいます。また、組合員か非組合員かという意味での役職として、主事とか参事とかいうのもあります。


以下にまとめてみましょう。


( ヒラ社員 ) ・・・ 同期全員が、ほぼ横並びに昇格


・入社後 ~ 3 年 総合職 3 級 

・ ~ 6 年 総合職 2 級 

・ ~ 9 年 総合職 1 級


( 調査役 = 課長になる権利 ) ・・・ 同期の 3 割ぐらいは遅れる


・ ~ 12 年 副主事 

・~ 15年 主事


( 主任調査役=部長、支店長になる権利 ) ・・・ 同期トップでなれるのは全体の10% ぐらい。一生勤めても、30% ぐらいの人はなれない。これまでは約 3 年ごとに昇進したが、これ以降、標準年数は決まっていない。


・副参事 
・参事


※これ以降は「役員」になります


私は銀行を 6 年半で退職したので、総合職 1 級までを経験しています。同期 160 名のうち総合職 1 級になれなかったのは 2 名ですから、ほぼ全員が同時に昇進したと言ってもいいでしょう。しかし、私は実質的な意味での最初の関門である「調査役への昇進」を経験せずに、銀行を退職したことになるわけです。

外資のシンプルな役職体系

転職先の外資系コンサルティング会社での人事体系は、銀行に比べれば、極めてシンプルなものでした。役職は 5 種類のみ。最上位で、一般企業の役員にあたる「パートナー」以外の役職には、その中が A/B/C/D と細分化されていました。


・アナリスト A/B/C/D 
・シニアアナリスト A/B/C/D 
・マネージャー A/B/C/D 
・シニアマネージャー A/B/C/D 
・パートナー ( 役員 = 経営層 )


いわゆる「管理職」にあたるのは、マネージャー以上です。パートナー以外の役職の標準年数は「 4 年」です。つまり、役職内の「 A/B/C/D 」というのを、それぞれ 1 年ずつこなして、次に上がりなさいという風になっています。


しかし、銀行のときのように、同期が横並びで昇進できるかというと、そうでもありません。銀行で差がつき始める「調査役」レベルは、この場合では「マネージャー」にあたりますが、それより下のランクでも、遅れる人は結構います。同期のうちで、標準的に上のランクに上がれる人の割合は、シニアアナリストで 80% 、マネージャーで 50% 、シニアマネージャーで 30% というところでしょうか。長く勤めていれば、たいていの人はマネージャーにはなれますが、それ以上は実力次第です。パートナーになれるのは、同期でも数 % 以下という狭き門です。

Stay ? Skip ?

さて、長々と銀行と外資コンサルの役職についてご説明してきました。そろそろ本題に入りましょう。銀行から外資コンサルに転職した私の最初の役職は、「シニアアナリスト C 」でした。その当時はその役職の意味するところがわからなかったのですが、今思うと、会社としてはかなり気前のいい採用をしてくれたことになります。なぜなら、シニアアナリスト C ということは、プロパー社員でも 7 年目の人が標準なわけですから、銀行に 6 年半勤めた私にとっては、転職による遅れのハンデは一切なかったことになります。


「やったぁー、シニアアナリスト C だ、わーい、わーーい ! 」と無邪気に喜んでいると、 1 年後の人事評価で部長から一言。


「タカシさんは、もう 1 年シニアアナリスト C やってね。ま、あんまり深刻に考えなくていいからね。そもそも、そういうことになってるから」


って、なんじゃ、そりゃーーーーーーー ! 「そういうこと」って、どういうことやねん ! それなら最初からシニアアナリスト B で採用しとけやーー ・・・・・・ と思ったのですが、 B よりは C の方が給料はいいわけで、実力は B だけれども、おまけとして C の給料をくれていたわけです。ちなみに、昇進せずに同じランクに留まることを「ステイ ( Stay ) 」といいます。マネージャー以上のクラスで「ステイ」は結構あるのですが、それより下のクラスではあまりありません。アナリストやシニアアナリストで「ステイ」になったということは、会社としては「あなた、この業界に向いてないから、転職した方がいいんじゃないの ? 」と言っているのに等しいのです。実際に、 2 年連続でステイになった人のほとんどは、退職に追い込まれていました。


さて、翌年の人事評価で、私は見事 ( ? ) シニアアナリスト D に昇進しました。ちょうどそのとき、ある銀行の海外業務システムの大型受注に成功し、かなりの実績を上げることができました。すると、その翌年の人事評価では、いきなり「マネージャー B 」になっていました。受注額が、マネージャー A の標準額を上回っていたために、すでにマネージャーAの実力を超えていると見なされたわけです。外資系っぽいと言ってしまえばそれまでですが、まったくゲンキンなもんです。この頃から私は、役職自体はどうでもいいと思うようになっていました。シニアアナリストだってマネージャー以上の受注をとれば、それに見合ったボーナスが出ます。役職の違いによる給料の差なんて、たかが知れているわけで、役職よりも実力・実績の世界なのです。


ちなみに、今回のケースのようにランクを 1 つ ( ないしは複数 ) 飛ばして昇進することを、「スキップ ( Skip )」といいます。日系企業においても、ステイはよくありますが、スキップは役員クラスでしか見かけることがないのではないかと思います。


さてさて、見事 ( ? ) マネージャー B にスキップした私ですが、体力的・精神的には疲れ果てていました。慣れない海外生活でストレスがたまり、とうとう体を壊してしまったのです。


「このままでは燃え尽きてしまう ・・・・・・ なんとかしなければ ・・・・・・ 」


そんなとき、付き合いのあったヘッドハンターを経由して、同業他社から現行の給料の 1.3 倍でオファーがありました。精神的に参っていたこともあり、私はそのオファーに乗ることにしました。


「よーし、明日部長に話を切り出そう ・・・・・・ 」


この時点では、私はその後起こる「恐怖のジェットコースター人事」について、まだ知る由もなかったのです。

 

( 次回に続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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