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タカシの外資系物語

" インセンティブ・デバイド " と外資系 ( その 1 )2005.03.01

” コネ “ のあるヤツ

「 えっ ! ヨシノリのお父さんって、○○銀行の常務なの ? 」


ヨシノリというのは、私の銀行員時代の同期です。ヨシノリだけではなく、私の同期には、どこかの社長の息子だの、おじさんが役員だの、そういった連中がかなりいました。


「 いいよなー、” コネ “ があるやつは ・・・・・・ 」


やっかみ半分、このように陰口をたたく連中もいました。正直言うと、私も 「 コネがある人はいいなぁ ・・・・・・ 」 と思っていたうちの一人なのですが、そう言っている一方で、実は少し違和感があったのも事実。 「 コネ、コネって言ってるけど、ホントにそうなのかな ・・・・・・ 」


例えば、冒頭のヨシノリの場合、お父さんが○○銀行の常務であることは確かですが、かといって、ヨシノリ自身がお父さんと同じ銀行に入社したわけでありません。また、ヨシノリ自身も有名国立大を出ているわけで、そういう意味ではコネなど使わずとも、私がいた銀行に入社することはそれほど難しくないはずなのです。確かに、ヨシノリのお父さんが別の銀行の役員であることが、ヨシノリの就職活動に多少は有利に働いたかもしれません。しかし、それはいわゆる「コネ」というほどのものではなく、そんなものなどなくても、ヨシノリ本人の能力によってほとんどの銀行に入社できたような気がします。


その一方で、ヨシノリを見ていると、自分の父親が役員であることを「隠す」とまではいかないまでも、そのことに触れられるのはイヤだという感じがありありと見て取れました。 「 自分は父親の力などなくてもやっていける。父親と同じぐらいの地位にはたどりつける ・・・・・・ 」 なんとなく、こんな雰囲気がにじみ出ていました。そして、他人の 5 倍ぐらいの努力していたように思います。ですから、最初のうちは 「 コネ、コネ 」 と言っていた周りの連中も、そのうち、ヨシノリ個人の努力と能力を認めるようになっていきました。同じように、私の周りにいたヨシノリと同じような境遇 ( 親か親類がどこかの会社の偉いさん ) の連中は、みんなそれなりにやる気があり、優秀だったような気がします。つまり、 「 コネ 」 を利用しているようなやつは、ほとんどいなかったように思うのです。

“ インセンティブ・デバイド ” って、何 ?

さて、ここで質問です。ヨシノリのお父さんが社会的に高い地位にいるということと、ヨシノリ自身が仕事に積極的に取り組むことの間には、一体どのような相関関係があるのでしょうか ? それとも、全く関係のないことなのでしょうか ?


私は、かなり相関関係があると思っています。まず彼ら ( 彼女ら ) は、小さい頃から、それなりの英才教育を受けてきたはずです。塾や家庭教師はもちろんのこと、小学校から私立の学校に行っていたような連中も多いと思います。このように、子供の教育にオカネをかけることができたのも、親にそれなりの稼ぎがなければ無理な話です。


そのこと以上に私が大きな要因として考えているのは、彼ら ( 彼女ら ) が、ビジネス社会で活躍している父親や母親の姿を間近で見て育ってきたということです。一流企業で働いていれば、かなりの高確率で生活が安定し、その結果、自分を含めた家族の安心感が得られる( = 幸せに過ごせる ) ということを、 「 親の背中を見る 」 ことで身をもって感じてきたわけです。ですから、コネだなんだといわれても、親と同じような道をたどってさえいれば、幸せで安定的な生活を得られる可能性が高くなることを知っているからこそ、彼らは必死で頑張っているのです。


このように、それなりに裕福な家庭に育った子供が、親と同じようになろうという意欲を出して頑張ろうとすることと、ごく平凡な家庭の子供が持つ意欲の「格差」を、 「 インセンティブ・デバイド 」 ( 意欲格差社会 ) といいます。一流企業に勤める親を持つ子供は、自分も親のようになりたいと頑張るので、同様に一流企業に入社する可能性が高い。その一方で、親が一流企業に勤めていないような、平凡な家庭に育った子供は、 「 やる気 」 という意味ではやや劣るのではないか、という考え方です。

みんな「ヤル気」は持っている

私は、この考え方が全く正しいとは思いません。しかし、かなり当たっている面も否定できません。冒頭に述べたように、銀行に入社した同期の連中の多くが、それなりに恵まれた家庭環境で育ってきたのはその通りなのです。


そのように考える一方で、このことを否定したくなるのも確かです。仮に、このような社会が成り立つとすれば、金持ちはずーーっと金持ち、そうでない人はずーーっと ・・・・・・ ということになってしまうわけですから。


私自身、自分で言うのもなんですが、かなり平凡な家庭 ・・・・・・ いやどちらかと言えば、貧しい家庭に育ちました。塾にも一度も行ったことはないですし、私立の学校に行くなどという選択肢はハナからありませんでした。大学進学についても、 「 国公立のみ、落ちたら就職 ! 」 なんていう条件が付けられていたわけで、浪人できる連中をすごく羨ましく思ったこともあります。親のことは今でも尊敬していますが、でも、親のようになりたいと思ったことは一度もありません。むしろ、自分の親のように苦労したくないからこそ、何とか頑張ろう、社会的に成功してやろうという意欲がムクムクと湧いてきたような気がします。


このように考えると、裕福な家庭に育った子供も、平凡な ( または、それ以下の ) 家庭に育った子供も、それなりの向上意欲 ( インセンティブ ) は持っているわけです。では、両者の違いは何なのでしょうか ? ( 以下では、「裕福な家庭」と対比するという意味で、「平凡な家庭」という言葉をあてていますが、どちらかというと、「平均以下」というニュアンスで使っています )

家庭環境に見る「ヤル気」の差

( 違い1 ) 平凡な家庭に育った子供は失敗が許されない

私の場合、仮に大学に落ちていたら、高卒で公務員になる予定でした。まぁ、それはそれで違った人生にはなっていたのでしょうが、少なくとも、今の社会的地位があるのは、あのときに大学に合格したことが大きいと思っています。一方で、裕福な家庭に育った子供は、浪人してもいいとか、数回なら失敗してもいい環境にあります。失敗してもいいということは、多少無理なチャレンジも可能なわけで、失敗を恐れてより堅実な選択肢しか選べない平凡家庭に比べれば、かなり有利であることがわかります。


( 違い 2 ) 裕福な家庭に育った子供はプレッシャーが大きい

私の親は、私が大学に行くこと自体、どうでもいいと思っていたようです。 「 大学など行かなくてもいいから、人様に迷惑をかけない人生を歩んでおくれ ・・・・・・ 」 ってな感じですから、受験や就職についても、自分で勝手に決められたし、仮に受験に失敗していても、結果について問われることもなかったと思います。一方で、裕福な家庭に育った子供のプレッシャーたるや、半端なものではありません。上に述べたヨシノリにしたって、父親と同じ ( またはそれ以上の ) 大学に行くために 2 浪していますし、大学入学するまで片時も生きた心地がしなかったと言っていました。それはそれで、かわいそうな気もしますよね。


( 違い 3 ) 平凡な家庭に育った子供の方が、目標が大きい

ヨシノリの場合もそうでしたが、裕福な家庭に育った子供の多くは、「自分の親と同じレベルにまで出世すれば、それで十分だ」と思っています。目標はあくまでも、自分の親というわけです。一方で、平凡な家庭に育った子供は、自分の親を目標にしていないので、ここまでいったら終わり、というような「縛り」がありません。もちろん、高い目標を達成するためには、それなりのリスクを冒す必要もあるわけで、いきおい、転職率が高く、ベンチャー志向が強くなる傾向も出てきます。裕福な家庭に育った子供は、目標が限定されている分、大きなリスクをとりません。ですから、転職率も非常に低いように思います。

「 カエルの子はカエル 」 社会 = 日本

さて、みなさんは 「 インセンティブ・デバイド 」 について、どのような考えをお持ちですか。くれぐれも誤解いただきたくないのは、私は一流企業に勤めることだけが、社会的な成功だと言っているわけではありません。しかし現状においても、ほとんどの子供たちがそれを目指して過酷な受験戦争に立ち向かっている事実がある以上、一流企業に勤めて社会的に安定することが、多くの国民の目標となっていることは否定できないと思います。また、多くの場合は 「 カエルの子はカエル 」 よろしく、お父さんが偉ければ、子供も偉くなりやすいのも確か。 「 トンビがタカを産む 」 なんてのは、ごくわずかだというのも事実だと思います。


以上述べてきたことは、日本社会における典型的な例として、よく見られる傾向です。しかし、外資系企業においては、これとは少し異なる点があるのです。それについては、次回のコラムで詳しくお話ししたいと思います。

 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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