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タカシの外資系物語

アクション・ラーニングしよう ! ( その 1 )2003.09.19

3 ヶ月ぐらい前のこと。当社の人事部から私のところに、次のようなメールが来ました。


「Takashi, Our board members decided you would be commissioned to "Training Planner"...」( 当社の役員会は、あなたを "トレーニング・プランナー" に任命しました。… )


おいおい、またかよ …… 実は似たようなフレーズのメールは以前にも届いており、そのときは、"CKO"(Chief Knowledge Officer) のサポートという、わけのわからない役職に就かされていました。( 『"CKO" って何 ?』参照のこと )


「給料は上げてくれないくせに、よくも仕事ばっかり増やしてくれるなよなぁ ……」


私は早速、人事部に苦情を言うつもりで問い合わせてみました。


私 「もしもし、トレーニング・プランナーの件なんですけど ……」


人事担当者 「あぁ、タカシね。引き受けてくれて Thank you!」


私 「いや、引き受けるも何も、そっちが勝手にメール送ってきたんじゃ ……」


人事担当者 「先日のグローバル経営会議で決まったんだけど、わが社のトレーニング・プランを抜本的に見直すことになったの。それで、セクション毎に代表者を募って、その人たちに新プランを作ってもらうことになったのよ !」


私 「いやだから、"募って"ないでしょ ? そっちが一方的に決めたんじゃ ……」


人事担当者 「金融セクションは、CKO のタスクで実績をあげたタカシがいいだろうってことになってね。大抜擢ね ! 頑張ってね。じゃ !」 ガチャン !


…… なんてうらやましい性格の持ち主なんでしょうか ……


「要は、新しいトレーニング・プランを考えればいいわけね。ハイハイ、わかりましたよーだ !」


実は私自身、現状のわが社のトレーニング体系には不満を持っていました。ここ 2 年ほどの間に、わが社のトレーニングのほとんどは、Web を活用した「e ラーニング」に置き換わっていました。。( 『e ラーニングの効果』参照のこと )


確かに、知識を詰め込むタイプのトレーニングでは、講義タイプのトレーニングよりもe ラーニングの方が効率的かつ効果的だと思います。しかし、講師と生徒が face to face で触れ合う方が、効果が上がるケースもあるような気がします。私はその日のうちに、トレーニングに対する自分なりの考え方をまとめて、人事部に送付しました。


翌日、早速人事部から返事のメールが来ました。


「お ?、早いじゃん !」


――― Please write in English! ―――


…… こりゃどーーも、すみませんでした。面倒クセー、トホホ ……


早いもので、それから 3 ヶ月が経過しました。私の提案が通ったのかどうかはわかりませんが、US 本社から新しいトレーニング・プランが発表されました。題して「New Training Plan - Action Learning -」


アクション・ラーニングというのは、「業務の現場で生じている問題点をグループで検討し、解決策を実施していく中で、学習の仕方を学んでいくもの」と定義されます。簡単に言うと、実際に起こっている問題をケースとして取り上げ、それを解決する方法をグループで検討していくという形式のトレーニングのことです。


従来わが社でも、ケーススタディ型のトレーニングは存在していました。しかしそこで取り上げる「ケース」というのは、どこかのビジネススクールで使われているような、「解答のあるケース」がほとんどだったように思います。つまり選択肢が存在して、講師がそれぞれの選択肢について解説することが可能だったのです。実際に起こって結果が見えていることだから、後から何でも言えるのです。


一方、現実のビジネスでは解答の選択肢など存在しません。経営者だけでなく、一般の社員も日々の業務の中で、「このような場合には、こういう方法を採ろう」ということを頭の中で無意識に考えながら仕事をしています。逆に、今まで経験したことのないような決断に迫られることもあるでしょう。


アクション・ラーニング型のトレーニングでは、実際の業務で起こりえるケースを、実際に解決すべき社員が一同に会して討論することで、より効果的な方法を生み出そうとするものです。また、その思考方法を学習するものです。それは、実際に起こる可能性はあっても、事前に結果が見えているものではありません。あくまでも自分たちが当事者として、問題にどのように対処するかを自力で考えることを目的としているのです。


このように説明すると、「アクション・ラーニングって、何だか素晴らしいトレーニング形式だなぁ ……」と思われるかもしれません。それは確かにその通り。しかし、アクション・ラーニングを成功させるためには、いくつかの条件をクリアしなければならないのです。まず 1 つに、講師 ( ファシリテーター ) の力量が問われます。解答のない課題を扱うわけですから、相当の経験がなければ研修を円滑に進めることができないでしょう。それともうひとつ、参加者自身のスキルも必要です。アクション・ラーニングは完全に参加型のトレーニングですから、「お客様」として座っているようなタイプの人には向きません。


いろいろと心配事はあったのですが、本件は US 本社での決定事項でもありますから、何とか成功させなければなりません。私は人事担当者と打ち合わせを何度も重ね、ようやく「第 1 回アクション・ラーニング実施要綱」をまとめることができました。議論する内容は以下の 2 つです。


( 1 ) Stakeholder Relationships …… 扱いにくいお客様の対応方法について考えます


( 2 ) Scope Creep …… プロジェクトのスコープ ( 範囲 ) がどんどん変わっていって、管理できない場合の対応方法について考えます ( 注:コンサルティング業界では、結構よく起こる問題なのです。経理のシステムを再構築するためのプロジェクトが、いつの間にか在庫管理のシステムに話題が移っていて、プロジェクトの費用が予算内に収まらなくなるようなケースのことです )


「これでよし …… と。じゃ早速、全社に募集をかけよう !」


HR のヘッド ( 人事部長のこと ) の名前で書かれた募集要項が、全社にメール配信されました。


「何人応募してくるかな …… 楽しみだね !」


1 週間後のこと、私は人事担当者に、トレーニングの応募状況について確認の電話を入れてみました。


私 「どう ? 何人来た ?」


人事担当者 「それが …… まだ 2 人なのよ …… タカシ、どうしよーー(T-T)」


げげっ ! と驚いた反面、私には思い当たる節もあったのです。


「あれをやってみるか ……」


私と人事担当者は、あるメールを追加で発信することにしました。その内容は …… それは次回のお楽しみということで !

 

( 次回続く )

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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