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タカシの外資系物語

"ロジカル・シンキング" のすすめ2002.02.22

外資系企業で働くようになって以来、日系企業にいた頃に比べると、明らかに「論理的思考能力」が向上したような気がします。


そもそも「論理的思考」とは何でしょうか ? 定義はいろいろとあるでしょうが、要は「 A は B だから C である」というようなロジックを当てはめることによって、結論を導くことだと思います。


日本の教育では依然として、論理的思考よりも暗記に重点が置かれていると言われています。例えば円の面積は「πr2( パイアールの 2 乗 )」ですが、なぜそうなるかを説明できる人は少ないのではないでしょうか。教科書では、円を極限まで細分することによって、1 辺が「πr」と「r」からなる長方形に置き換えることができるため、その長方形の面積と同値であると説明されています。しかし、そのようなプロセスを覚えたところで、テストではそのことはほとんど問われません。結局は「πr2」のみを覚えておけば、少なくとも大学入試レベルはクリアできるわけですから、みんな暗記に走るのも無理もないかもしれません。小学校において、円周率を「3.14」から「3」にすることが話題になっていますが、実は問題の本質はそういう議論ではないのです。


さて話を元に戻しましょう。私自身、日本で教育を受けてきたわけで、そういう意味では「論理的思考」があまり得意ではありませんでした。というか、「論理的思考」に馴れていなかったというべきでしょうか。


仕事をする上で、論理的に思考する機会はたくさんあります。例えば、ビジネス上の意思決定をする場合、常に長所と短所を考えながら議論していると思います。それぞれ予想される結果を比較し、長所が短所を上回れば実行することになります。


このように考えてみると、日本人だって日々論理的に思考しているはずです。しかし欧米から「論理的でない」と非難され、日本人自らもそのように感じている原因は何なのでしょうか。


最も大きな原因は、「主体の曖昧さ」である、と私は考えています。例えば、上記の例で考えてみましょう。あなたが、ある企画を通すときに、次のような「長所」と「短所」を挙げたとします。


( 企画 ) ある商品の販路を、現状の「デパートのみ」から「コンビニ・スーパー」に拡大する


( 長所 )- 購買層が広がり、売り上げが増加する


( 短所 )- 当該商品が持つ「高級」なイメージが低下する


- 一部の役員連中から反発がある → ( A )


さて、この場合の短所 ( A ) はどのように考えるべきでしょうか。実はこの場合、( A )は短所ではありません。なぜなら、販売戦略の主体は「企業」「商品」であって、「一部の役員連中」ではないからです。確かにこの企画を進める上で、反発する役員を抑えこむのは骨の折れる仕事かもしれません。しかし商品の売り上げが増加し、企業に収益をもたらされるという結果に比べれば、比較にならないほど些細な、「どうでもいい」ことなのです。


つまり、日本人の多くはプロセスの途中で起こると想定される「どうでもいいこと」に気を取られるばかりに、物事の本質を見誤っているケースが多いのです。ですから、その「どうでもいいこと」さえ取り去れば、実は「論理的思考」のみが残るということになります。


外資系企業の多くでは、以上述べたような「どうでもいいこと」は、ハナから考えません。理由は単純で、その方が楽に短時間で済ませることができるからです。また、外資系企業では、多くの文化的背景を持った人間が働いています。そのような職場では、物事は極力わかりやすくしておくことが重要で、その結果が「論理的思考」となっているだけなのかもしれません。


最近では、「ピラミッド原則」とか、「クリティカル・シンキング」なんていう、いろいろな解説本が出ています。これはあくまでも私見ですが、実はどれも似たようなものでして、本を読んで勉強するというのは、どちらかというと「時間のムダ」かな、と。それよりは、何かを考える際に、最終的な目的となる「主体」と、そのプロセスで起こる「どうでもいいこと」を切り分けるように心がけていれば、欧米人の言う「論理的思考」にひけをとらない思考が可能ではないかと考えています。

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この記事の筆者

奈良タカシ

1968年7月 奈良県生まれ。

大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。10年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。肩書きは、パートナー(役員クラス)。 昨年、うつ病にて半年の休職に至るも、奇跡の復活を遂げる。

みなさん、こんにちは ! 奈良タカシです。あさ出版より『外資流 ! 「タカシの外資系物語」』という本が出版されています。
出版のお話をいただいた当初は、ダイジョブのコラムを編集して掲載すればいいんだろう ・・・ などと安易に考えていたのですが、編集のご担当がそりゃもう厳しい方でして、「半分以上は書き下ろしじゃ ! 」なんて条件が出されたものですから、ヒィヒィ泣きながら(T-T)執筆していました。
結果的には、半分が書き下ろし、すでにコラムとして発表している残りの分についても、発表後にいただいた意見や質問を踏まえ、大幅に加筆・修正しています。 ま、そんな苦労 ( ? ) の甲斐あって、外資系企業に対する自分の考え方を体系化できたと満足しています。

書店にてお手にとっていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
奈良タカシ

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