グローバル転職NAVI

キービジュアル キービジュアル

有元美津世のGet Global!

インドの多様性(5)― 多宗教国家の食文化2018.04.17


   前回の異宗婚ですが、宗教によって食べられない物があるので、食べ物でも夫婦の間で妥協しないといけない場面も出てくるでしょう。ヒンズー教では神聖と考えられている牛は食べませんし、イスラム教徒は豚肉を食べません。シク教徒は、儀式的に屠殺された肉を食べることは禁じられているので、イスラム教のハラール(Halal)食やユダヤ教のコーシャ(Kosher)食は食べられません。

 こうした多様な食習慣に対応するため、インドのレストランでは、牛肉も豚肉も出さず、肉料理であれば鶏肉や羊肉(mutton)のみというところが多いです。(マレーシアの非中華系レストランも同様。)

菜食主義者(ベジタリアン)の国?


 インドの食習慣について、先日、BBC.comで興味深い記事を読みました。「インドがベジタリアンの国というのは神話」というものです。私も、ヒンズー教徒にはベジタリアンが多いと思っていましたが、調査の結果、そうでもない、というのです。

 印政府の調査では、人口の3割前後がベジタリアンだと考えられていましたが、最近、学者が行った調査によると、実際にはベジタリアンは2割ほどしかいないというのです。とくに牛肉は「食べてはならない」という”文化的・政治的プレッシャー”があり、ベジタリアンでもないのに「自分はベジタリアン」という人が多いというのが一因のようです。

 なお、政府のデータによると、ベジタリアン家庭の方が、高収入、高消費であり、低カースト層や不可触民(Dalit)、部族(tribe)の人たちは、主に肉食ということです。

 地域によっても違い、一番ベジタリアンの少ないケララ州では、高価な羊肉より牛肉を食べる人の方が多いようです。

牛肉輸出大国


 政府の調査では、牛肉を食べるのは人口の7%のみと言われていましたが、今回の調査によると、実際には15%近く(1.8億人)いるのではないかとのことです。

 前々回、書いたように、とくにモディ政権になってから牛保護政策が進められており、大っぴらに「牛肉を食べている」とは言えないようです。すでに6割の州では牛屠殺に対し何らかの禁止条項を設けており、州や国をまたいだ牛の輸送中に殺される人も出ています。

 しかし、インドは世界で最大の(水牛を含む)牛肉輸出国でもあり、40億ドルという「国の一大産業をつぶすのか?!」という反対の声も大きいのです。昨年、政府は全国的に家畜市場での牛の販売を禁止しようとしましたが、牛の屠殺を禁じていない州や農家からの反発が大きく、今年に入り禁止条項は緩和されました。ですが、牛肉を巡る対立は、今後も、続きそうです。

絶対数は多い

 先日、トリップアドバイザーの日本フォーラムで、インドからの旅行者グループが「大阪で、インド料理は難しいにしても、ベジタリアン食を出すディナークルーズはないか?」という質問をしていました。ベジタリアンは人口の2割しかいない、といっても2億人以上ですから、数にすると日本の人口以上です。海外に旅行に行ったり、留学したりする比較的富裕な層にはベジタリアンが多いということもあり、日本ではベジタリアンのインド人に遭遇する確率が高いと思われます。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

外資・グローバル企業の求人1万件以上。今すぐ検索!

この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

合わせて読みたい

---