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有元美津世のGet Global!

日本に人種差別はない?!2018.01.23


 前回のBlackface問題。「(過去の奴隷制度に基づいた)黒人差別のない日本にアメリカの基準を持ち込むな」という意見がありますが、前回、書いたように、オランダやスペインでも黒塗りが批判されており、問題になっているのはアメリカだけではありません。オランダやスペインでは、100年以上も続いた伝統的な行事を変えることになるかもしれず、バラエティ番組が問題になっている日本とは影響の度合が違います。

 オランダでもスペインでも「Blackfaceをやめてほしい」という要は国内のアフリカ・カリブ移民を中心に出たのですが、オランダは、数年前より何度か国連から「(Black Peteによる)文化的、社会的または伝統的な描写は、黒人やアフリカ系子孫にとって侮辱的で、ネガティブなステレオタイプを助長し得る。文化的伝統にも人権を侵害し得るものがある」と、blackface を止めるよう促されてきました。

 オランダ政府はblackfaceを禁止するつもりはないものの、毎年、その時期(12月初旬)になると論争が起こり、大都市ではblackfaceはなくなりつつあるようです。

見えていない・見ようとしない差別


 「ヨーロッパも、過去にアフリカを植民地とし、黒人を差別してきた。黒人差別の歴史のない日本とはちがう」という人もいるでしょう。中には「日本には黒人差別、人種差別がない」と言い切る人までいます。

 私の日本の知人にも「日本には人種差別がない」と思っている人がいますが、そういう人たちは、日ごろ、外国人に接することがないので、日本国内で外国人がどういう体験をしているかなど知らないのです。「差別がない」のではなく、そうした人たちには「差別が見えていない」だけなのです。

 日本で暮らす黒人には、電車に乗った際、「自分が座ったら横の人が立っていってしまった」「私の横には誰も座らなかった」という体験をしている人などいくらでもいます。アメリカに旅行に来た日本人男性が、日本からの機内で「黒人男性2人に挟まれて座って、怖かった」と”無邪気な”発言をするのも聞いたことがあります。*

 黒人と結婚しようとしたら入管から親に電話がかかってきて「お宅の娘さんは黒人と結婚しようとしてるんですよ」と阻止されそうになったという経験をした人すらいます。「日本に黒人差別はない」と言っている人の中にも、自分の子供が「黒人と結婚する」と言うと慌てる人なんて、いくらでもいると思います。

 黒人を含め外国人は、日本で住宅を借りるのに苦労しますが、多くの日本人は、それにすら気づいてないどころか、外国人であることを理由に賃貸を断るというのが差別である、という認識もありません。

 

自分の中の偏見に気づいてない


 私は、母が4人の子供を一人で育てる貧しい母子家庭で育ちました。**  小学生の頃、「お父さんがいないから〇〇なの?」と蔑むようなことを言う同級生がいましたが、私や妹弟が一番腹立たしく思ったのは、「そんな風に見えないね」という大人たちでした。

 父親がいない子供は、どんな風に見えるべきなのでしょうか? そうした発言の裏には「片親の子供は暗い?素行が悪い?」などの固定観念に基づく偏見があります。そして、そういう発言をする人は「褒め言葉」のつもりで言っており、自分の中に偏見があるなどとは微塵にも思っていません。

 ちなみに、私は片親ということで就職差別も受けましたが、その話をすると「日本に就職差別なんてない!」と怒り出す人もいました。

 以前、「Cultural Awareness」について書きましたが、awareness(気づき)は異文化・異人種には限りません。まず、自分の中の固定観念や偏見、世の中にある偏見に気づかなければ、差別も見えません。

  「グローバルに羽ばたきたい」という皆さんには、Cultural Awarenessは避けては通れない関門です。

 

 

* 生まれてそれまで実際に黒人に会ったことがない人が、そうしたステレオタイプを持っているのはハリウッド映画でのネガティブな黒人像が大きく影響しているのでしょうが。

** 40年前は、今のように「シングルマザー」という言葉もなく、母子家庭は珍しい存在でした。

 

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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