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有元美津世のGet Global!

アメリカの就労ビザ(1)2017.05.02


日本では吉本の芸人が渡米するとかしないとかで一部で騒がれているようですが、アメリカのビザのことが余りにも知られていないようなので、簡単に説明しようと思います。

まず「ニューヨークのおしゃれなカフェで働きながら俳優を目指す?英語を勉強する?」という形態が可能な就労ビザはありません。それで就労ビザが取れるのなら、アメリカには各国から単純労働者が殺到し、現在アメリカに1100万人いるといわれる不法入国者の大半は不法で入国する必要などないでしょう。

ビザを申請する前から「トランプ大統領誕生でビザ取得が厳しくなった」というのはネタであり、そもそも綾部氏の場合、下記で示したような就労ビザ取得の資格を満たしているのかも怪しいレベルです。(今後のトランプ政権による就労ビザへの影響に関しては、次回。)

米就労ビザの種類


アメリカの就労ビザには、主に下記があります。

H-1B ─ 大卒以上の専門職用。雇用主のビザスポンサー要。転職するには新たにスポンサーとなる企業が必要。米留学後に就職する場合、通常、このビザを取得。

H-2B ─ 農業以外の季節労働者用。一時的、季節的かつ米国人労働者が不足している職業。雇用主によるビザスポンサー要。

L-1 ─ 企業内転勤者用。管理職または専門職。駐在員が取得するビザ。

E ─ Eビザを取得している企業の役員や管理職、専門職。駐在員向け。

O-1A ─ 科学、スポーツ、教育などの分野で秀でた才能や業績を有する個人。世界的に著名なスポーツ選手や研究者など。業績のある博士号取得者にはH-1Bでなく、こちらを取得する人も。

O-1B ─ 芸術分野で秀でた才能、映画・テレビ業界で秀でた業績を有する個人。アカデミー賞やエミー賞、グラミー賞クラスでなければ、日本国内外での知名度や業績の証明要。雇用主またはエージェントのスポンサー要。有名シェフでも取得できるらしい。

P ─ パフォーマンスビザ。国際的に有名な運動選手・チームやバンド、芸術家の試合や公演、イベント向け。

 

日本の有名芸人が取得できるとすれば、俗に「アーティストビザ」と呼ばれるOビザでしょうが、これも米国内で活動するための受け入れ先が必要です。(ダンサーやアーティストならまだしも、喋りが本業なのに英語ができないと、まず受け入れてくれるところはないのでは?カリフォルニアにあるYoshimoto Entertainment USAがスポンサーすれば可能か?)

こうしたビザの取得には半年かかることなど珍しくなく、一年ほどかかる場合もあります。提出書類が多々あり、Refence Letter(推薦状)など人に書いてもらわないといけないものもあるので、揃えるだけでも結構時間がかかります。さらに日本語のものは英語の翻訳版が必要です。提出後、書類の不備などで戻されることも往々にしてあります。書類審査合格の後は大使館や領事館で面接がありますが、面接の予約は数週間先までいっぱいということもあるので、書類審査に通る前から、とりあえず入れておくという人もいるくらいです。

綾部氏の場合、今年に入って、まだビザを申請していないということで、申請に必要な書類をそろえるのに時間がかかっている、または揃えることができないのかもしれません。

就労ビザ申請は大半の人が弁護士を通じて行いますが、同氏の場合、有能な弁護士を雇うだけの財力はあるでしょうから、取れそうかどうかくらいは、すぐにわかりそうですが。

なお、Oビザで入国した場合、就労を許されるのはビザをスポンサーした雇用主先(契約先)の仕事のみであり、カフェでバイトなどはできません。

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この記事の筆者

有元美津世

大学卒業後、外資系企業勤務を経て渡米。MBA取得後、16年にわたり日米企業間の戦略提携コンサルティング業を営む。社員採用の経験を基に経営者、採用者の視点で就活アドバイス。現在は投資家として、投資家希望者のメンタリングを通じ、資産形成、人生設計を視野に入れたキャリアアドバイスも提供。在米30年の後、東南アジアをノマド中。訪問した国は70ヵ国以上。
著書に『英文履歴書の書き方Ver.3.0』『面接の英語』『プレゼンの英語』『ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア』『英語でTwitter!』(ジャパンタイムズ)、『ロジカル・イングリッシュ』(ダイヤモンド)、『英語でもっとSNS!どんどん書き込む英語表現』(語研)など30冊。

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