前回のシリーズでは「働く母の秘めたる可能性」というお題で、母親達が持っているいくつかのスキルが会社という形態の中でどう発揮できるのかを書かせていただきました。
今回のシリーズでは逆に働く女性が気づかずに間違って作ってしまう壁、もしくは落ちてしまう落とし穴について考えていきたいと思います。前回のシリーズ同様すべての女性に当てはまるというわけでは決してありません。ただ、今までいろんな女性そして男性と仕事をしてきた中で、多くの女性が同じような問題を抱えているように思えました。シリーズ初回は delegation についてです。
みなさんは delegation という言葉をきいたことあるでしょうか ? 外資ではとてもよく使われる言葉ですが、日本ではまだあまり知られていないかもしれません。意味としては「仕事を任せる」ということです。自分が現場にいて仕事をこなす人間なら、delegation という言葉はあまり言われないかもしれません。しかし少しでも役職を与えられ部下を持つ立場に立ったり、責任をもつ仕事を任されたりすると、すぐこの言葉が出てきます。トレーニングコースなどでも「 How to delegate 」というコースが単体で存在するぐらいです。
さて、それでは「人に任せる」ということにおいて女性はどのような落とし穴にはまってしまうのでしょう?それは、単純に人に任すことができないということです。得てして女性は自分ですべてをやらなくてはいけないと思ってしまいがちです。いえいえ、そんなことはありませんと言っている読者の方もいると思います。そういう方ももちろんいらっしゃるでしょうし、それはそれでとても素晴らしいことです。ぜひ落とし穴にはまっている女性に how to を教えてあげてください。でも自分でそんなに一人で背負いこんでいないと確信する前に、ちょっと次を読んでみてください。
あるストレスマネジメントのセミナーに出たときのことです。講師の方が女性をカウンセンリングするときに必ずやらなくてはいけないステップがあるとお話してくださいました。それは何かというと、せっかく女性のカウンセリングをしているというのに、その女性自身に行きつくまでに何枚もの仮面をはがしていかなくてはいけないというのです。女性は自分というものをとても奥深く隠してしまっている、自分がやりたいことや欲しいものは最後にもってくる傾向にある。だから本当にその人が何を求めているのかを知るには、まず外側の皮を何枚もめくっていかなくてはいけないのだそうです。
例えば最初にある仮面が母の仮面だとしましょう。そうすると子供のために何をしなくてはいけないとか、子供のために何を買わなくてはいけないとか、子供のためにしている行動があたかも自分のためのことのように話をするそうです。次に妻の仮面をもっていたとしましょう。そうすると夫のために何をしなくてはいけない、夫のために何々を買わなくてはいけない。そして次に会社員としての仮面、嫁の仮面、娘の仮面、町内の奥さんとしての仮面などなどが続きます。いくつもの仮面を何十にもかぶっており、その一つ一つにやらなくてはいけない事柄が百万とあるわけです。だからそのすべてを自分でやらなくてはいけないと思っており、実際にこなしているのが現実。なかなか本来の自分が何をしたいのかにいきつくまでにはとっても時間がかかり、人によってはあまりにも奥深くしまいこんでしまったため、自分が何をしたいのかわからない人もいるくらいだそうです。
この話を聞いたときに確かに自分にもあてはまる気がしました。自分がやりたいことなどはそっちのけで、一日のうち限りなく24時間に近い時間を他の人のために時間を使っている…。女性は自分よりも周りの人のために行動するような傾向にあり、自分のために何をしなくてはいけないのかがよくわからないようになっている…。
それに比べて男性はというと、カウンセリングしていてもすぐ自分がでてくるので仮面をとる作業というのはほとんど必要ないそうです。つまり男性は自分が何をしたいのか良くわかっており、それに集中できるように環境を整えていくことができるそうです。例えば自分は働きたいと思う男性は多く、まず働くことだけに集中できるよう、家や子供のことは妻に任せるといった具合です。妻が働いていたとしても、この考え方はあまり変化しないのが男性からみた視点の違いでしょう。
これを踏まえて仕事に当てはめて考えてみましょう。あるマネージャーというポジションがあり、それを女性に頼んだとします。女性は部下の管理、スケジュール調整、実務もすべて自分でやってしまう傾向にあります。それは自分でやらなくてはいけないと思っているから、会社が自分を雇ってくれたので頑張らなくてはと思ってしまうから、自分でできてしまうからといろいろな理由があることでしょう。同じポジションに男性をつけた場合は、どうなるでしょうか。男性はまず秘書を雇いスケジュール調整その他アドミ関係のことは頼んでしまうでしょう。部下を何人か雇い実務をしてもらい、更に仕事を増やし自分の責任範囲を大きくしていくことでしょう。自分は部下の管理をする部分や上司への報告など、管理職の部分のみをこなすように環境を整えていくわけです。
実は先日テレビを見ていたら同じようなセリフを耳にしたのでびっくりしてしまいました。「House」という病院を舞台にしたアメリカのドラマなのですが、みなさんご存知ですか ? このドラマの中の登場人物の一人である女性医師がいます。この女性は病院の中でもかなり高い地位におり、そして部下(男性も女性も)が何人もいます。結婚はしておらず、子供を育てたいということから養子を取ることにしました。そしてこの女性のとった行動というのは、赤ちゃんを病院に連れて来てまで自分で面倒をみて、そして仕事もこなすということでした。それもこれも養子までして家族をつくったので、すべて自分でやりたいと思ったからです。また、自分でやらないと気がすまないという気持ちもあるのでしょう。
普段通りの自分の仕事もする、上司として部下の面倒もみる、そしてそれに加えて今度は子供の面倒もみる。自分でやりたいから自分ですべてやる。悪戦苦闘してはいるものの、女性はそれでとても満足をしている様子でした。月日がたつにつれ、とても疲れてきて、現状を維持できる状況ではありません。女性はそれでもやり遂げようと自分にムチ打って頑張ります。そんな彼女をみていた男性の部下が一言彼女に助言するのです。「君が男性ならとっくにアシスタントを二人雇い、ドライバー、お手伝いさん、そして赤ちゃんの世話役も雇っているだろうよ」と。「すべてを自分でやらなくてはいけないと思うな」という助言でした。アメリカのドラマで言っているこということは、アメリカの女性も同じような落とし穴に落ちるのだなぁ、と感心してしまいました。
自分だけのことを考えていればいい人間というのはきっと少数派でしょう。多くの人はいろいろな仮面を持っている人たちだと私は思います。ここで考えていきたいのは、どの仮面を最初にもっていき、何を重点的にこなしていくかということです。人に任せられることは任せる。自分でやりたい事に集中できるような環境作りをする。そうできれば delegation もきっとうまくなって落とし穴に落ちなくてすむようになるかもしれませんね。
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