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働く女性のライフワークバランス術へ

# 29  働く母の秘めたる可能性 - リスク管理編



みなさんもご存知の通り、ここ数年でリスク管理に対するニーズがものすごく高まってきました。例えば、金融業界では、バーゼルや ISO など規制が作られ、きちんとした業務プロセスになっているか、リスク管理がなされているかなどを、こと細かく調査・設定するようになっています。就職氷河期といえどもリスク管理関係のニーズだけはどこの会社にもあるようで、常にスタッフを募集しているように見受けられます。


10 年前まではリスクという部署はコンプライアンスや内部監査の一部であったものが、今では社長直属の部署ができるほど、重要視している会社も多々あります。そんな中、私がふと思ったことは、母親業を経験している人は、もしかしてリスク管理ができるのでは ? ということでした。少し突拍子もないことに聞こえてしまうかもしれませんが、なぜ私がそんなことを思いついたのか、具体例をだして説明していきたいと思います。


「危ないから椅子から降りましょう。」子供が背もたれ側を向いて椅子に立っていた時に母親が発した言葉です。同席していた母親は、みなそれがどういう意味かすぐわかりました。しかしながら母親ではない女性はまったく意味がわからなかったのです。しっかり立てる子だし、椅子もちゃんとしているし、特に悪さをしているわけではないのにどうして椅子から降りなくてはいけないのだろう ? その女性は「なんで ? 」と自分の感じたことをすぐ口にだしました。母親たちは「それは椅子が倒れたら危ないからよ」と一斉に即答。「なるほどね~」と女性は感心していました。母親たちは普段の経験から、子供が何をしでかすかわからないと知っており、椅子が倒れて怪我した例なども聞いていることから、自分の子供が怪我しては大変と、瞬時に椅子から降ろしたほうが安全と判断したわけです。


もっと身近な例を出してみましょう。お茶碗やコップがテーブルの端においてあり、子供が食事をしていたとします。母親はそんな時、黙って食器を真ん中に移動します。こんな光景ならみなさんも見たことはありませんか ? これもまた、子供が肘などで食器を倒してしまう、もしくはテーブルから落としてしまうと察知して、その前に食器を安全地域に動かそうと頭が働いているのです。このように、母親は常に子供の行動の先読みをして、危険から守ってあげています。この察知能力というものを仕事に当てはめればリスク察知能力にならないか ? というのが私の発想の源です。周りでどういうことが発生していて(子供は何をするかわからない)、どんな結論が多いのか(椅子から転ぶことが多い)という分析能力を応用できれば、リスク管理にも役立てられそうだと考えたわけです。


少し違った例をあげてみましょう。これは私が妊娠した時に起きた変化なのですが、物事を慎重に、また正しく行うようになった経験があります。道路を渡ること一つとってもしかり、以前はチカチカと点滅し始めても走って渡っていました。それが妊娠して一人の体ではないと思ったとたん、急がずに待つようになったのです。食事にしてもしかり、以前は好きなものを好きなときに食べていたのですが、これもまた生まれてくる子供に害があってはいけないと塩分や糖分を控えるようになりました。ちょっとしたことなのですが、自分がすることがすべて子供に影響を与えると思うと安易にできなくなったのが事実です。また、生まれてきてからも、子供達は自分をみて学んでいくのだと思うと、うかつな行動はとりにくくなりました。


このように、母親になると慎重にかつ正確に物事を行おうとします。この「慎重にかつ正確に」物事を行うということも、リスク管理の観点からみて何が正しいのか、どうすべきなのかという発想につながっていくのではないでしょうか ? みんながやっていれば怖くないという無責任な事件が多発した日本。輸入物を国内産と偽ったり、牛肉以外の肉を混入してあるにもかかわらず牛肉 100 %とうたったり…。利益ばかり追求するようなことなく、他人から見られても恥ずかしくない行動をとろうと自覚していれば、それだけでもかなりのリスク管理になるのではないでしょうか ?


今回は母親の秘めたる能力としてリスク管理能力に関してお話させてもらいました。ちょっと飛躍しているのでは ? と思う読者の方もいたと思います。私も決してすべての母親がそのような能力を保持し会社でいきなりリスク管理ができるとは思っていません。ただ、子供を危険から守ろうという気持ちから、リスクを察知し、避けるというマインドセットが鍛えられている母親だからこそ、もし同じように会社を危険から守るという考え方ができれば、そういった強みも発揮できる可能性があると思った次第です。


会社のことを思い、会社がどんな行動を起こすのか、どんな結果が一般的に多いのかなど情報収集し、分析できれば子供を危険から守るように会社も危険から守ることが可能かもしれません。そして母親でなくとも、会社や行なっている事業を自分の子供として置き換えてみた時に、今行なっていることは正しいことなのか、長期的な信頼につながるのか、などが具体的に見えてくるのではないかと思います。


さて、「働く母の秘めたる可能性」と題し、4 回に渡ってお話しさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。母親というものは、性格や好き嫌い、得手不得手に関係なく「子育て」というチャレンジに立ち向い、乗り越えています。この世界的な不況の中で人員削減や業務効率化を進めている企業も多いかと思いますが、こういう時こそ未知数の可能性を秘めた「働く母」の活用に踏み出してみることも、打開策の一つになるかもしれませんね。


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  • 横浜 リサ
  • 横浜で育った浜っ子。中学 3 年生から親の仕事の関係で海外進出。英語がまったく話せないところから、体当たりで学ばされ、今では日本語より英語のほうが得意になるほど成長。アメリカ、シンガポール、香港等海外に居住経験 10 年以上。外資系金融会社にて 20 年以上の勤続。母として仕事と家庭の両立をはかりながら、主にオペレーションを専門とし、現在は日系の金融にて日々精進している。外資から日系に転職した逆輸入型。