前回は、働く母の秘めた可能性としてタイムマネジメント能力をご紹介しました。私の経験から、仕事と家庭を両立しなくてはいけない環境におかれたためにタイムマネジメント能力が磨かれ、プライオリティーづけと仕事の簡素化ができるようになったというお話をさせていただきました。今回は人材育成に関して考えてみたいと思います。
みなさんの会社にも多種多様なトレーニングがあると思うのですが、たとえばどのような類のものがありますか ? リーダーシップを伸ばす、ストレス対処法、プレゼンテーションスキルなどなど千差万別な種類があるのではないでしょうか ? 実は、働く母には人を伸ばすという能力が備わっています。残念なことにせっかく持ち合わせている能力に本人たちが気づかず、仕事場で発揮できていないように思います。私がなぜ母親にその能力が備わっていると思うのかをいくつかの例を挙げてお話しさせていただきます。
始めに、子どもは「何故」の天才です。何かあるとまず母親に聞きます。「どうして砂糖は甘いの ? 」「何故、信号が赤の時に渡ってはいけないの ? 」「どうして食べながらテレビを見てはいけないの ? 」朝から晩までどうしての連続。母親はそんな質問を受けるたびに「何故なんだろう ? 」「どういう言葉で説明すれば理解しやすいだろう ? 」と考えて子供に返事するようにします。もちろんすべてに対して答えがみつかるわけではありません。ただこの「どうして」に対してきちんと対応する姿勢が子供を育てていると考えられるのではないかと私は思います。そしてこの誠意ある姿勢は、会社という環境でも大いに適用できる才能ではないでしょうか ?
「ゴチャゴチャ言わずに言われたことをやれ ! 」と怒鳴る上司、「頭じゃなくて体で覚えろ ! 」と無理をいう上司がいたりしませんか ? それでもついてくる社員もいることでしょう。しかし、社員の「どうして ? 」に向き合う姿勢をこちらも持っていれば、相手も成長してもらいたい気持ちにもっと応えてくれるのではないでしょうか ?
次に、やる気を出させる点でも母親はなかなかのやり手です。朝時間がないのに、子供がなかなか支度をしてくれない。そんな経験はありませんか ? 普段子供と多く接している母親は、子供の心理状態や行動パターンを分析する洞察力が磨かれるため、「こんな時こうすれば早く支度をし始める」ということなど、子供の気持ちを瞬時に察し、対応策を考えられるのです。この時にはこんな飴、あの時にはあんな飴とその時その時に適当な対処法を持っています。
同じようなことが社員のやる気を出させる手段にもあてはまるのではないでしょうか。その社員の性格等を考え、何をしたらやる気をだしてくれるのかを考える。子育てで経験している母だからこそしてあげられることなのかもしれません。更に大切なのは、放っておいても大丈夫というタイミングも計れるということです。その子(社員)が一人で大丈夫、独立できているという判断ができ、本人に任せることができるということは本人にとって成長するチャンスになります。いつまでも親(上司)に頼っているのではなく、自分自身でやってのける。自信もつき達成感も得られることでしょう。
最後に、母親は子育てを通してコーチングの能力も身につけます。何もできない赤ちゃんから一人前にするために、生きていくためのノウハウを一つ一つ教えていくのが母親です。何事も子供が一人で出来るようにならなくては意味がありません。根気よく時間をかけ、何度もお手本を見せ、コツを教えてあげます。仕事の環境になると、どうしてもコーチングができない人が多いようです。これはつい自分がやったほうが速いと思ってしまったりするからでしょう。
振り返ってみると、私自身も会社の中では教えるよりも自分でやってしまったことが何度もありました。教えるのが雑だったり、相手が勝手に学ぶことを期待したり、無理なスピードで教えたりしてしまいました。たまたまとても優秀な社員だったらそれでも学んでくれることでしょう。ただ一般的にはうまくいかない事のほうが多いのではないかと思います。筋肉がついていないのに急に走れとか、飛べとかいっても無理なのはよくわかりますよね。しかし、仕事となると筋肉がない(基礎がない)のに、突然走れ(プレゼンをしろ)とか飛べ(客に会ってこい)などと日常茶飯事のように行われています。子育てを思い出しながら、もう少しコーチングを見直してみるのもよいのではないでしょうか ?
今回は 3 つの例を出して、母親が秘めている可能性、人材育成能力に関して書かせていただきました。「どうして」の質問に誠意をこめて応対する。いろいろな手段でやる気を出させる。そして本人ができるようにコーチングする。すべて子育てを通して母親があたりまえのように日々行っていることです。社員教育に必要な要素が大いに含まれていると感じていただけましたでしょうか ? 現在働いている母親も働いていない母親も、人を育てることに適している可能性を秘めていることを自覚し、自分の可能性を更に向上させることに繋げていただけたら幸いです。そして、企業側でも母親が持つこういった能力を存分に活かせるような環境を整えていただけることを期待しています。
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