ロンドンの 11 月は、非常にもの寂しい季節です。日増しに目に見えて日照時間が短くなり、午後 4 時ごろには、すでに街は薄暗くなっています。12 月になればクリスマス・シーズンということで、街もそれなりに活気を取り戻してくるのでしょうが ……。みんなには、「タカシ、お前ホントに最悪の時期に来たな」といわれました。私もそう思います。
さて、このシーズン、ロンドンでは雨が多いのも特徴です。そもそもロンドンは「スカーッと晴れた青空」なんていう日はほとんどないのですが、毎日どんより曇っているか、雨、雨、雨 ……。
雨が多いロンドンでは傘は常備品かと思いきや、そうでもありません。「オレは傘を持ち歩かない主義なんだ」という人が結構います。雨の日に歩いていても、傘を差していない人をかなりの割合で見かけます。では、彼らはびしょ濡れで歩いているのかと、そうでもありません。1 つには、ロンドンという街が非常に狭く、少し歩けばすぐに地下鉄の駅に行けるということがあります。また、ロンドンの町そのものが、雨が降ることを前提に構成されていて、店の軒下が長いのです。だから、普通に歩道を歩いていれば、雨が降っていても、それほど濡れずにすむというわけです。
クライアント先での重要なプレゼンテーションがあった日のこと。私は資料を人数分用意し、質問が出たときのために、それ以外の資料もたくさん抱え込んでオフィスを出ました。一緒に行く Simon は、プレゼンテーション資料とメモ帳しか持っていません。
「タカシ、何をそんなに持っていくんだい ? オレたちは、資料運びをしてるんじゃなくて、クライアントと話をしにいくんだぜ !」
「念のために ( Just to be sure )、だよ。」
地下鉄「St.Paul」の駅からクライアントのオフィスまでは、歩いて 10 分弱。案の定、雨が降っていました。われわれはしばらくの間、ロンドン流に傘も差さずに歩いていました。しかし、急に雨が本降りになってきたのです。
「タカシ、走ろうぜ。このままじゃ風邪ひいちゃう」
「ちょっと待って !」
私が差し出したのは、伝家の宝刀「折りたたみ傘」。
私はいつもカバンの奥に忍ばせているのです。
「タカシ、すごいな。いつも持ち歩いてるのかい ?」
「Just to be sure !」
恐れ入ったか、 Simon 。
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