私が勤める外資系企業の人事制度には、「カウンセラー制度」というものがあります。カウンセラー制度とは、各社員に対して、上位社員を 1 人ずつ設定し、普段の業務とは違うところでさまざまなアドバイスを行っていこうというものです。「カウンセラー」はマネージャー以上と決められており、また各マネージャーにもそれより上位のカウンセラーが設定されています。上位社員を「カウンセラー」、下位社員を「カウンセリー」と呼んでいます。
この制度のおもしろいところは、各カウンセラーにかなりの権限を与えている点です。たとえば、ある社員が、自分の直属上司から不当な評価を受けた場合、彼は自分のカウンセラーに相談することで、カウンセラーとその上司が直接話し合う機会を持たせることができます。カウンセラーはその話し合いを通じて、客観的に判断し、その上司の評価が不当であると判断できる場合は、さらに上の立場の人に報告することができます。こうやって、不当な評価を改善し、社員全員が納得できる人事評価を構築していこう、というのがこの目的です。
またカウンセリーは、自分のカウンセラーを評価することができます。「彼は忙しいといって、私の悩みを聞いてくれなかった」と告げ口された場合、当然のことながら、そのカウンセラーの評価は下がります。また「カウンセラー人気投票」なるものも存在し、自分のカウンセラーが気に入らなければ「年に 1 回だけ」、自分の好きなカウンセラーに変更することができます。まるでトランプのルールのようですが、実際に「カウンセラー・チェンジ」は頻繁に起こります。
マネージャーは平均して、3 人ぐらいのカウンセリーを抱えています。私にはなんと、6 人のカウンセリーがいます。これは私の交渉能力が高いために人気があるのではありません。私と同じ境遇 ( 新卒で日本の銀行に入ったが、そこがイヤになって転職した ) の若手が多く、私なら同じような悩みを抱えていると思われているからだと思います。現に私は、E ビジネス技術チームの若手から、「カウンセラー・チェンジ ! 」をされたことがあります。やはり、似た者同士で悩みを分かち合いたいというところでしょうか。
内容はどうであれ、私はこの制度を気に入っています。日系企業の場合は、上司の良し悪しによって、自分の処遇の大半が決まるといっても過言ではありません。この制度を利用すれば、上司に恵まれなかった場合にも、泣き寝入りしなくてもすみます。
カウンセリーのひとりが「タカシさん、実は相談が ……」と深刻な顔つきでやってきました。と、電話が鳴りました。「タカシさん、いま時間あります ? 」。おっと、E メールまで ……。「タカシさん、聞いてくださいよ」。やれやれ、今日も残業になりそうです。
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奈良タカシ 1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。 「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。 |