私の会社では、半年に一度程度、ボスの家でホームパーティーが開かれます。これは日本企業における「慰安旅行」にあたると思います。両者の目的は同じで、「社員の労をねぎらう」ということです。しかしその内容は、まったく違うのです。
外資系企業で、経営者層が部下を自宅に招く場合、主催者であるボス自らがいろいろなことを企画します。料理や部屋の飾りつけはもちろんのこと、余興として実施される「ビンゴ」の商品の買い出しにいたるまで、すべてボス自身が動いて準備するのです。主役は、もっとも下位レベルにいるスタッフたちです。「自分のビジネスがうまくいっているのは、みんなのおかげなんだよ。ありがとう ! 」ということが、身をもって伝わります。
一方、日本企業の慰安旅行は下位レベルのスタッフ、とくに若い社員たちに過大な負担をかけます。私が勤めていた銀行の、ある部署における慰安旅行は、私にとって「恐怖のイベント」以外の何ものでもありませんでした。バスの中でのおつまみの調達から、余興の出し物の練習まで、本来「労をねぎらう」べき対象のスタッフが、残業に残業を重ね、準備していたのです。確かに部長さんは乾杯のときに、決まってこういいます。「みなさんのおかげで、今年も優れた業績をあげることができました。本当にありがとう ! 」
でも、部長が慰安旅行の企画自体に何も関与していないことは、全員が理解しています。これでは「この人についていこう。この人のために頑張ろう」という気持ちにはなれません。上座でふんぞり返っていては、部下には何も伝わらないのです。このような行事を繰り返していても、強い団結力は生まれないのではないでしょうか。
さて、私は一応マネージャーという管理的立場なので、ボスから「何か料理をつくって、スタッフにごちそうするように」という指示を受けました。同じような指示を受けたマネージャーは 6 人。私はちらし寿司をつくりました。わりと好評です。「タカシ、料理うまいじゃないか !」。実は、ちらし寿司の素をご飯に混ぜただけなのです ……。大事なことは、部下をねぎらう気持ちですので、ここはご勘弁を。
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奈良タカシ 1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。 「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。 |