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タカシの外資系物語

# 10  ■ この上司と組んで、いいのか悪いのか


前回お話したように私が所属する外資系企業では、部下が「上司を選ぶ」ことができます。そのことに関して、私が体験したある出来事を紹介します。


私が以前担当した、ある金融機関に対する経営コンサルティング・プロジェクトでのこと。この金融機関は、私の会社にとっても非常に重要顧客であり、ほかのプロジェクトに比べて評価ポイントの高いものでした。案の定、私の上にいる 5 人のグループ長は、「私に担当させてくれ」といってきたのです。私自身は、アメリカ人のグループ長ボブに担当をお願いする気でいました。なぜなら、彼と組むことが、このプロジェクトを成功させるために、もっとも合理的だと思ったからです。私自身プロジェクトを失敗すると、自分のボーナスが減りますから、必死です。私は「このプロジェクトはボブに担当してもらいたい」ということを事業部長に相談しようとしていました。


そのとき、ある日本人のグループ長から電話があったのです。今すぐ会いたい、というので、彼の部屋まで行きました。彼のいい分は、「もし私を指名してくれたら、私の力で君を昇格させてやろう」というものでした。私は即座に「お断りします ! 」といって、部屋を飛び出しました。確かに、昇格そのものは、私にとっては魅力的です。しかし実際問題として、このプロジェクトを成功させたほうが、私自身にとってのメリットが大きいと判断したので断りました。


数カ月後、その日本人のグループ長は解雇されました。私が告げ口したわけではありません。ただ単純に彼の業績が悪かったことが原因のようでした。私自身の判断も正しかったようです。


外資系企業では、イヤな上司の誘いにつき合う必要はありません。私は日本企業にも所属した経験がありますから、これは非常に大きなメリットだと思います。しかし、外資系企業でやっていくためには、本質的な意味での「上司を見抜く目」が要求されます。すなわち「この上司と組んで、いいのか悪いのか」ということ。その判断を誤ると、自分の身の破滅につながる可能性があるのです。「上司を選ぶ」という自由を与えられる代わりに、選んだ自分にも責任が及んでくるのです。組織に縛られない自由とは、その反面で、個人の責任範囲が拡大することを意味します。「外資系は自由に何でもできる」ことは事実ですが、以上のようなことを肝に銘じておく必要があるでしょう。

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タカシの外資系物語
奈良タカシ 1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。
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