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タカシの外資系物語

# 475  ■ “ブリーフ・セラピー” の効果は ? ( その 1 )


――― 部下が “ウツ” かも ? ―――
 
かなり前の話になります。その日、私のチームにいる A くんが、深刻な顔つきでやってきました。
「タカシさん、ちょっとご相談が・・・」
なんとなく青白い顔、足元もフラついている模様。こりゃ、ただ事ではなさそうです !
私 「一体、どうしたの ? 何か、元気なさそうだけど・・・ 風邪でもひいたの ? 」
A くん 「いや、とりたてて体調が悪い、というわけではないんですが・・・」
私 「ん ? じゃ、どうしたの ? 」
A くん 「実は・・・」


A くんの“症状”は、以下の通りでした。
・ 朝起きられない
・ 電車に乗るのがつらい
・ 仕事をする気になれない。何事にもやる気が出ない
おいおい、それっていわゆる“ウツ”ってやつじゃ・・・ 思わず口から出そうになった言葉を飲み込んで、私は会話を続けました。
私 「そっか・・・ で、医者には見てもらってるのか ? 」
A くん 「・・・」
私 「(どうしたもんかな、こりゃ困った・・・ よし ! ) 会社の産業医の先生に相談してみよう。なーに、心配することないから。俺に任せておけよ ! 」


本当は色々と、根掘り葉掘り聞きたかったんですよ。「いつからそうなったの ? 」「何が原因なの ? 」「プロジェクトで、客からイジめられたのか ? 」とか、「そもそも、気合が足りないんじゃないの ? 怠け病だよ、単に ! 」とか・・・ 日系企業にいた 10 数年前なら、間違いなく「怠け病」だと一蹴していたことでしょう。


しかし、最近は日本においても、メンタル上の問題を抱える社員をケアすることの重要性が認識されるようになってきました。相談に来た部下に対して、「怠け病 ! 」などというのは言語道断です(個人的な意見としては、最近の若手社員は“過保護”に扱われすぎているきらいがあるので、ときには「怠け病 ! 」と一蹴してもいいかな、と感じるときもありますが・・・)。


それよりも何よりも、こういう場合、わが社ではマニュアルがありまして、それを遵守することが求められます。マニュアルいわく、「部下にメンタル面の疾患が疑われる場合には、むやみにコメントやアドバイスをせずに、産業医の診察を受けること ! 」


――― タカシ、部下の診察に同行する ―――
  
実はわが社のマニュアルには、「産業医のカウンセリングを受ける際には、社員とともに、直属上司も付き添うこと」という文言も付記されています。大の大人に付き添いが必要なのか・・・という話もあるのですが、症状が症状ですから、やはり社員一人では心配です。ということで、私は A くんとともに、会社指定の産業医がいる病院にやってきました。


もちろん、診察そのものには付き添いません。プライバシーの問題がありますから。診察後、産業医の先生と一緒になって、今後の対応について相談するために、私は付き添っているといるのです。なので、A くんが診察を受けている間、私は待合室で待っているというわけ。


まだかな、まだかなー♪ って、陽気に歌っている場合ではありません・・・(失礼)。しかし、A くんが診察室に入ってから、すでに 30 分・・・ 少し、長すぎやしませんかね。
A くん 「・・・先生、ありがとうございました」
A くんが診察室から出てきました。
私 「で・・・ ど、どうだった ? 」
A くん 「カウンセリングの先生を紹介してもらいました。明日、早速行ってこようと思います。会社、休んじゃいますが・・・すいません」
私 「いいんだよ、そんなこと。心配しなくていいから・・・」
A くんの表情は、診察を受ける前より、少しだけ柔和になっているような気がしました。産業医の先生、一体何を言ったのでしょうか ?
看護婦さん 「では、奈良さん。診察室にお入りください」
私 「あ、はい・・・ 失礼します」
産業医の先生 「 A さんの上司の方ですね。 A さんの症状ですが・・・ 少し問題ありかもしれません」
私 「ええっ ! 」


――― “パンツ” で カウンセリング ? ―――
  
私 「“問題あり”って・・・ どういうことなんですか ? 」
産業医の先生 「いや、症状は“軽いウツ”だと思います。重症ではないので、投薬しなくても治るレベルでしょう。問題は、期間なんですよね。もうかれこれ、1 年以上、同じ症状が出ているようなんですが・・・ 直属の上司として、お気づきにならなかったんですか ? 」
私 「すんましぇん・・・(T-T)」


1 年も前から悩んでいたとは・・・ この数ヶ月の間にも、何度か 1 対 1 で話したことがあったんですが、全然気付きませんでした。お互い、別々のプロジェクトに入っていたものですから、普段の接点はほとんどないとはいうものの、本当に申し訳ないことをしました。


産業医の先生 「ただ、あなたの対応は非常に良かった」
私 「は ? 」
産業医の先生 「 A さんがこうなった原因について、根掘り葉掘り聞かなかったでしょう ? 」
私 「ええ、まぁ・・・(マニュアル通りですから・・・)」
産業医の先生 「実は A さん、半年ぐらい前から、ある病院で定期的にカウンセリングを受けてきたようなんです。そのカウンセリング手法が、根掘り葉掘り、原因を追究するようなアプローチだったのですが、それがどうもAさんには合っていないようなんです」
私 「そうですか・・・ (ん ? そもそも、根掘り葉掘り聞かないで、カウンセリングなんてできるんかいな ? )」
産業医の先生 「ということで、今回は、“ブリーフ・セラピー”という、違うアプローチのカウンセラーを紹介することにしました」
私 「“ブリーフ”(brief)って、“書類”を見ながらカウンセリングするんですか?」
産業医の先生 「そうそう、書類見て、どこが悪い・・・って、何でやねん ! “ブリーフ”(brief)というのは、“短い、要約した”という意味。短期で効果を上げるためのカウンセリング手法のこと ! 」
まさか、産業医の先生が、関西弁で「ノリ突っ込み」をするとは思いませんでした。それにしても、“ブリーフ”(brief)を “パンツ”と解釈しなくて、良かった、良かった・・・
(注: “brief” の主な意味 =  1.要約 2.短い 3.(法的な)書類 4.股下の短いパンツ ・・・)


私 「ところで、“ブリーフ・セラピー”って、何ですか ? 」
産業医の先生 「えっ ?  1ヶ月ほど前に、おたくの会社のマネージャー研修で、私が説明した内容を聞いていなかったの ? 」
私 「は、はぁ・・・(確かに、グッスリ寝てましたわな・・・(T-T))」


オフィスに戻ると、早速マネージャー研修の資料に目を通してみることにしました。
「“ブリーフ・セラピー”かぁ・・・ ふむふむ、なるほどねぇ・・・」
と、妙に納得。さらに読み進めると、
「・・・形式にこだわって、ウダウダと長時間かけるカウンセリングよりは、“ブリーフ・セラピー”の方が効果的なケースも多いんじゃないかねぇ・・・」
と、再度納得。


さて、“ブリーフ・セラピー”とは、どのようなものなのか ? それについては、次回お話しましょう。


(次回続く)


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タカシの外資系物語
奈良タカシ 1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。
「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。






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