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タカシの外資系物語

# 458  ■ God is in the details! ( その 3 )


――― 「全体感」 重視の若手 ―――
  
(前回の続き) 最近の若手が、細部をおろそかにするのは、なぜなのか ? 今週のコラムでは、その理由を、「全体感」というキーワードをもとに、考えてみたいと思います。


さて、このテーマでは、前回・前々回に続き、 3 週目となります。実は私、同じコラムは 3 週以上引っ張らないように心がけています。なぜなら、読む側もみなさんも飽きるでしょうし、何よりも、書いている私本人が飽きてくるからです。


しかし、このテーマはその「ルール」をあっさりと破ってしまいました。なぜか ? 私がオチを考えずに、ダラダラ書いてしまったからなのか ?! (その線が濃厚という、もっぱらの噂ですが・・・) 実は、読者のみなさんからの反応が、半端じゃないほど大きかったからです。
普段、読者のみなさんからのお便りやご意見は、週に 1 通来るか来ないか・・・なのですが、今回に限っては、毎週複数の反応をいただきました。要は、みなさん同じことで悩んでらっしゃるということ。若手が育たない、言うことを聞かない、何を考えているかわからない・・・ という共通の悩みです。


ま、状況や立場によって、いろいろなケースがあるでしょうから、一概に「最近の若手は○○だ ! 」とは言い切れない面もあります。何度もお話しているように、私自身も「最近の若手は・・・」という言葉は、あまり好きではありません。
しかし ! 私の経験やコンサルティングでお邪魔している企業の状況や、そして読者のみなさんからのご意見をまとめると、 1 つ特徴的な事象が浮かんできます。それは、「全体感」重視ということ。例えば、こんな感じ。


「タカシさん、まだ細かいところは詰まってないんですが、全体の流れだけ作ってみたんで、見てもらえます ? 」
「まだまだ、ザックリしてますけど、最終的にはまとめますから・・・」
作業の優先順位として、細部よりも先に全体から作っていく、これ自体は悪くはありません。何となく、効率的に作業しており、スマートな感じもする。しかし ! このやり方には、ある前提とそこに潜む「罠」があることを忘れてはいけません。それは、何でしょうか ?


――― 「全体感」 だけを作れる人はいない! ―――
  
「細部よりも先に、全体から作っていく」という場合、「細部は後でどうにでもなる、時間さえあればできる」ということが、ある程度前提となります。想定される作業者像としては、「細部作業の経験が豊富な、中堅社員以上」ということになります。つまり、以下のような役割分担を前提としています。


・ 全体統括 = 管理職
・ 全体感作成、作業進捗管理 = 中堅層
・ 細部作業 = 若手


このとき、若手に最も期待されているのは「細部作業」を完璧に仕上げてくれることであって、「全体感」うんぬんは中堅がやればよい。にもかかわらず、若手が全体感を重視しすぎるため、細部がおろそかになっているように思うのです。


ここで誤解いただきたくないのは、「若手は組織の歯車として、黙って仕事をしていればいい。全体感はベテランに任せて、それについて来ればいいんだ ! 」と言っているわけではありません。より良い意見があれば、若手だって積極的に発言していいに決まっています。しかし、その場合でも、少なくとも自分の作業は完璧にこなしてから(または、こなす算段を得てから)、発言すべきでしょう。自分が期待されている作業そっちのけで、全体感がどうだ、こうだ、と言われても、中堅層にしてみれば、ムカッとくるだけです(たとえ、その意見が正しかったとしても・・・)。


また、私の経験則で言えば、細部の作業ができない人が描く全体感は、イマイチなことが多い。よく、「私は細かい作業は苦手だが、全体感を描くのはうまい。どちらかというと、“アイデアマン”タイプかな・・・」なんて言う人がいますが、それはちょっとおかしい。全体感が描ける人は細部作業も完璧です。逆に、細部が詰められない人は、全体感も作れない場合が多い。これは間違いない ! なぜなら、結局のところ、「全体」 は 「細部」 の積み重ねでできているからです。にもかかわらず、若手が全体感を重視する理由は、なぜか ? それはひとえに、その方がかっこいいから、(周囲から見ていて)仕事をしている感じがするからに他なりません。そして、その風潮を助長したのは、いわゆる欧米外資系企業をモデルとした仕事術や MBA などの考え方ではないかと思うのです。


――― 「全体感」 重視は、MBAの影響 ? ―――
  
一般に、 MBA をベースとした欧米流経営の特徴は、「トレンドの概略を分析・整理して、全体的な方向性を決める」「細部積み上げ(ボトムアップ)よりも、トップダウンで進める」 です。しかし、注意しなければならないのは、 MBA というのは主に経営者やリーダーを対象としたものであって、一般社員全てに当てはまるものではないということです。もちろん、一般社員の通常業務にも応用は利くでしょうが、それはあくまでも限定的ではないでしょうか。若手を含めた社員全員が、「細部よりも全体感を ! 」と言い出したのでは、仕事は回りません。


私が勤める外資系企業でも、私の上司以上のマネジメント層は、細かい話はしません。あくまでも、全体感をトップダウンで決めていきます。しかし彼ら (彼女ら) の下位レベルには、必ず、その意向を具現化し、細部を固める作業者が存在します。企業というのは、そのようにして成り立っているのです。


MBA や外資系仕事術のブームは、企業活動の中でも、極めて限定された部分のみを取り立てて、それこそが唯一の働き方、スマートな作業方法かのように、誤解させているように思います。実際には、外資系のマネジメント層 ( MBA ホルダーがほとんど) だって、若いときには、細部の作業を経験し、それなりの実績を上げて、ステップアップを遂げています。日本企業よりも格段に昇進スピードが速いので勘違いするのですが、みんな小さな作業からコツコツと始めているのです。


私から若手のみなさんに送るアドバイスは、やはり、 「God is in the details !」 (神は細部に宿る) ということ。細部をきっちりと仕上げていけば、全体感も自然についてきます。また、 MBA や仕事術に惑わされないようにすることも重要です。人材マーケットで売れる人というのは、アイデアをポンポン出すことができる人ではなく、やると決めたアイデアを確実に実践できる人です。「実践」 とは、細かい作業の積み重ねであることを忘れてはいけません。


「タカシさん! ちょっと、見てもらえますか ? 」


資料の修正を指示していた若手スタッフから、連絡が入りました。


若手 「今日はもう遅いんで・・・ ちょっと、全体感だけ見てもらえますか ? 」
私 「うーーん・・・ 遅くなってもいいから、細部まで詰めてから呼んでよ。」
若手 「え? ・・・ は、はいっ ! 」


あーーぁ、もうすぐ終電の時間、今日は徹夜になりそうです、トホホ・・・(T-T)。ま、我慢強く、忍耐強く・・・ 若手の育成も大変ですな。でも私は、彼ら、彼女らを信じてやっていこうと思っています。みなさん (若手も中堅もベテランも) 、頑張ってくださいね !



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タカシの外資系物語
奈良タカシ 1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。
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