# 455 ■ Derail ? , or Not ? ( その 2 )
――― 超・エリートの同期 Y は、絶対辞めない ? ―――
(前回の続き) 私が所属する外資系企業では、「やめるかもしれない社員」がリストアップされている 『Derailment List』 が存在します。一方、私の前職の日系企業(銀行)には、「絶対辞めない社員」を対象とした 『絶対辞めないリスト』 が存在するらしい・・・との情報を、前職時代の同期から聞いたタカシ。『絶対辞めないリスト』 とは、どのようなものなのでしょうか ?
同期X 「 Y は絶対辞めないんだよ ! 」
私 「絶対、って・・・ なんでそんなこと言い切れるんだよ ? 」
同期X 「 Y は、入社時から 『絶対辞めないリスト』 に入ってるんだよ。そんなことも知らないのか、能天気なやつだなぁ・・・」
そもそも、Y とはいかなる人物なのか ? Y と私は同期入社( 1991 年)です。私は銀行が破綻してすぐ、スタコラサッサと転職してしまったのですが、Yは今でも銀行に残っています。現在の所属は、経営企画部、ま、会社の中枢ですね。
Yは銀行に入社後、大阪支店 → 人事部 → 財務企画部 → 営業企画部 → 経営企画部 ・・・ と、いわゆる花形部署を渡り歩いています。だれがどう見てもエース、このまま行けば、役員間違いなしってとこでしょうか・・・ ?
Y は京大卒でして、その中でも明らかに頭 1 つ飛びぬけていました。以前にもお話しましたが、旧態依然とした日系企業(特に、銀行とか)では、東大卒や京大卒は他の大学卒と比較して、あからさまに「別扱い(つまり、ひいき)」を受けます(そのあたりについては、
No. 216 『学歴の話』 を参照のこと)。Y のキャリアを見ても明らかに、将来、銀行の中枢を担うことを約束された足跡をたどっています。
私 「『絶対辞めないリスト』って、そんな無茶な・・・ ホントか、Y ?」
同期 Y 「・・・」
おいおい、否定せんのかーーーーーーーーーーーーーーっ ! ということは、やっぱり・・・ ?
――― 絶対辞めない超・エリートが、MBAを取得しない理由 ―――
同期X 「仮に、200 名の新入社員がいたとするよな・・・」
事情通( ? )の同期 X によると、 1991 年当時の銀行人事の仕組みは、以下のようになっていたとのこと。
( 1 ) 200 名の新入行員のうち、5-10 名程度を 「将来の幹部候補生」 として認定。つまり、この 5-10 名が『絶対辞めないリスト』 にリストアップされる。リストアップされたことについては、本人に通知され、同期の規範・リーダーとして振舞うよう、半ば強制される。その見返りとして、出世は同期で必ずトップ(成果に関わらず ! )、経営の中枢部署のほか、本人の希望部署(海外等)に優先的に配属される。ただし、MBAなどの海外留学をするケースは少ない。
( 2 ) 残り 195 名は、「自由競争」で頑張ってもらう(つまり、優先配属などしない。あくまでも、運と実力の世界)。ただし、MBA などの海外留学をするのは、この層がほとんど。
同期Xの話は、「都市伝説」の域を出ないという説もありますが、一方で、それなりに信憑性もあるように思います。みなさんの同期にも、明らかに(1)の層として、ひいきされている社員がいるのではないでしょうか。
さて、Xの話の中で少し不思議に思ったのは、「MBAなど海外留学」のくだり。どうして、(1)の層はMBA留学をするケースが少ないのか ?
同期X 「だって、将来が約束されているんだから、留学なんかしなくてもいいじゃん ! (1)の層っていうのは、MBAホルダーを部下として使う側にいる連中なんだぜ ! あと、会社内部でMBAと同等の教育機会というか、帝王学みたいなものを受けさせてもらってるから、留学する必要がないっていう説もあるしね・・・」
なんと ! (1)の層というのは、MBAホルダーを自分の手足として使う役割なのだから、自らMBAは取りに行かない(取る必要がない)という、画期的な説 ! ほんとか、おい !?
同期X 「だから、伝統的な日本企業って、MBAホルダーの社長が少ないだろ ?」
にゃるほどぉ・・・ でも、そもそもMBAって、出世の手段として取得するんでしたっけ・・・?
――― あなたは、会社から注目されていますか ?―――
同期Xの説、その真偽は別として、日系企業が(1)のような層を囲い込んでいたことについては、なんとなく、そうじゃないかなって気もしてきます。そしてこのことは、外資との対比でさらに特徴的になってきます。
● 日系企業 ・・・ 入社時点で、特定の人材を囲う = 『絶対辞めないリスト』
● 外資系企業 ・・・ その時点で、優秀 かつ 辞めそうな人材をケアする = 『Derailment List』
逆にいうと、日系企業には 『Derailment List』 はなく、外資系企業には 『絶対辞めないリスト』 はない、ということ(もちろん、非公式には存在するんでしょうが、人事部門がそのリストを元に、何かアクションを打つということは少ないと考えられる)。非常に対照的ではありませんか!
現在の常識的な感覚では、『Derailment List』 を活用して、辞めそうな人材をケアしている外資の方が、まっとうな考えのように思えます。出身大学だけで将来の幹部候補生を決めてしまう日系にやり方は、かなり前近代的。しかし、「会社は絶対潰れない」 「右肩上がりで成長を続ける市場」 「いったん入社した会社は、よほどのことがない限り、辞めない」 という前提に立てば、『絶対辞めないリスト』 のような策もアリかな・・・、とも思えます。思えば、戦前の旧陸軍なども、特定の学校(陸軍幼年学校や陸大)を卒業した人材を、幹部候補生にして、優先的に育成してきたわけで、このような政策は日本の伝統なのかもしれません。
しかし、「会社は絶対潰れない」 という大前提中の大前提が崩壊した今となっては、『絶対辞めないリスト』 による囲い込みも、かなり形骸化していることは否めません。現に、同期Yは依然として銀行に残っていますが、同様にリストアップされていたと思しき同期Z(東大卒)は、数年前に転職したようです。『絶対辞めないリスト』 の効力も、ほとんどなくなったということでしょう。
要は、企業でも、マーケットでも、出世でも、「絶対」 はない ! ということ。そんな不確実性の時代の中で、いかに自分のスキルを向上し、会社が欲しい人材となりえるか・・・、それに尽きるわけです。外資の 『Derailment List』 だって、結局のところ、優秀な人材が辞めるのを水際で止めるために存在するわけで、その目的は、『絶対辞めないリスト』 と同じです。会社がどんなリストを作ろうが、まずは、会社にとってかけがえのない人材にならなければ、話にならんというわけです。
あなたは会社から注目されていますか、それとも・・・
(終わり)