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タカシの外資系物語

# 421  ■ VIVA ! EXPO ! ( その 2 )


――― 超・有名人 登場! ―――

(前回の続き) アメリカの銀行業務・システム系展覧会 (Banking EXPO) に出張した私。会場のスケールの大きさに七転八倒 (本当にコケた ! 前回コラム参照のこと)、捻挫した足を引きずりながら、基調講演の会場に向かっていました。


実は、会場では高齢の方などのために、会場内を移動する三輪の簡易スクーターを貸し出していました。私もそれを使わせてもらおうかと真剣に悩んだのですが、万が一、クライアントなど知り合いの人に会って、「タカシさんは、アメリカのEXPOで仕事もせずに、スクーターを乗り回して遊んでいた・・・」などと噂されるのを恐れ、やむなく断念 (心配しすぎ ? )。確かに、怪我をしていなくても乗りたくなるほど、楽しげな乗り物ではあったのですがね。


基調講演が実施される会場に着くと、参加者の多さにびっくり ! 例年、基調講演というのは、銀行業務の本質にはあまり関係のない有名人を呼ぶようなのですが、それにしても、今年は異例の多さ、立ち見の人までいます。さて、その講演者は・・・
「Ladies and Gentleman, General Colin Luther Powell ! 」
Mr. Colin Powell、パウエル前アメリカ国務長官その人でした。


さて、パウエル氏の講演内容ですが、予想通り、銀行業務とは全く関係のないものでした。しかし、面白い ! それも、半端ではない面白さ !


「国務長官時代は、飛行機に乗るときも VIP 扱いでセキュリティ・チェックなどなかったのに、辞めた途端、昨日のフライトでも靴下まで脱がされてチェックされた・・・」 「私はホワイトハウスでは一度も謝罪したことはないが、家内には毎日謝っている・・・」等々、ま、彼の持ちネタなんでしょうが、思わず笑ってしまいました。


話を聞いていて感心したことの 1 つに、アメリカのリーダーの「スピーチ能力の高さ」があります。講演時間は 60 分でしたが、全く台本を見ずに、身振り手振りを交えて、話を続ける能力。聴衆を引きつけ、 10 分に 1 回程度の割合で、力の抜けたジョークやウイットを飛ばす・・・ これはパウエル氏に限ったことではありません。今回の講演では、数多くの金融機関経営者が講演を実施していましたが、彼ら・彼女らの全てが同じような能力を持ち合わせていました。


――― 日米におけるリーダーの資質 ―――
 
一方、日本のリーダーはどうか? 企業の経営者はおろか、政治家にいたるまで、上記のようなスピーチ力を有するリーダーはほとんどいないのではないでしょうかね。


もちろん、パウエル氏をはじめ、アメリカのリーダーは、それ相応のトレーニングを受けていることは間違いありません。「トレーニングを受ければ、俺だって・・・」という日本にリーダーのみなさん、じゃ、受けてくださいよ ! とかく日本では、雄弁すぎることを良しとしない文化がありますが、リーダーには一定の雄弁さ、聴衆である国民・社員を引きつける魅力があった方がいいに決まっています。いずれにしても、日本人のスピーチ能力には、まだまだ課題があるということです。


さて、パウエル氏の講演を聞いていて、感銘を受けたことがもう 1 つあります。それは、彼を迎えるときの聴衆の態度です。ステージへの登壇時、パウエル氏は 「General Colin Powell」 と紹介されています。 General というのは、「将軍、軍司令官」といった意味です。日本はアメリカのような軍隊制度がないので、彼の位置づけを日米間で単純には比較できないのですが、乱暴な言い方をすれば、「防衛大臣や外務大臣を歴任した元・軍人」ぐらいのイメージでしょう。


で、パウエル氏がステージに現れた際、何が起こったか ? Standing Ovation です。全員起立して、拍手、拍手 ! それも、 2 分以上続いていたと思います。また、講演の中で、「われわれアメリカ国民は、テロには絶対に屈しない ! 」と発言したときにも、同様のStanding Ovationが起こっていました。


この様を見て、日本人の私は、若干の違和感を覚えるとともに、アメリカという国、アメリカ人という国民の本質を垣間見たような気がしたのです。つまり彼らは、アメリカという国を、そして自分がアメリカ人であるということを、心の底から誇りに思っている。自分の国を守ってくれるGeneral (軍司令官) を称え、その司令官を選んだ自分たちをも称えているのです。


それを理解すると、今回の大統領選におけるオバマ氏に対するアメリカ国民の熱狂振りも理解できます。確かに今回の大統領選は、史上初の黒人大統領選出という特殊事情はあったにせよ、本質的には、彼らアメリカ人は大統領選のたびに、自分たち自身を評価して、その結果を賞賛しているように思えるのです。大統領というのは、国民一人一人の評価=賞賛を具現化したシンボルだということです。


翻って、日本はどうか ? 選挙制度の違いはあるにせよ、基本的にはだれが首相になっても、国民は熱狂したりしません。小泉元首相時代に、上記で述べたようなイメージの一端はありましたが、それとてアメリカの比ではありませんでした。


――― 日米、生き残るのはどっち? ―――
  
政治においても、企業においても、アメリカは自己陶酔の「劇場型」スタイルをとります。熱狂するアメリカ人と、冷め切った日本人。一概にどちらがいいとは言い切れませんが、少なくとも、日本人よりもアメリカ人の方が当事者意識を持って、物事に対処する素地があるのは間違いないでしょう。「自分が選んだ大統領のもとで、アメリカンドリームを実現する」 この発想が、アメリカ人の根底にあるのです。


アメリカも日本も、今後は過去のような発展は見込めず、どちらかといえば安定期から衰退期に向かっています。しかし、その衰退のスピードが、日本の方がより大きいのではないか。当事者意識を持ったアメリカ人は、衰退するとはいえども、世界の盟主として踏ん張り続ける。一方、冷め切った日本人は、没落の一途をたどる・・・ そんなシナリオが見え隠れし、なんとも背筋が寒くなる思いをした次第です。


今回の展覧会と講演会は、いたるところで「CHANGE !」という言葉が聞かれました。ま、オバマ・フィーバーが覚めやらぬ中、一種の流行語になっているのでしょう。では、どのように「CHANGE !」するというのか ? How to change ?


EXPO全体を通じて、私が感じ取った「CHANGE !」の方法、その行間に潜んでいる真のメッセージは、「Back to Basic ! (原点に帰れ)」だったように思います。アメリカの産業界に蔓延し始めているこの思想については、次回のコラムでお話しすることにいたしましょう。

( 次回続く )

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タカシの外資系物語
奈良タカシ 1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。
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