タカシの外資系物語

# 391  ■ タカシの昇進試験 ( その 1 )


――― タカシ、昇進試験で回答できず ? ―――


審査官 「…..Who? Who does it? 」


私 「 … 」


こ、これは困りました。回答を考えていなかった … (T-T)。 


え ? 何が困ったんだって ? いや、実はですね、私は今、Promotion Interview、つまり昇進のための面接試験を受けています。私の会社では、マネージャー以上のランクには、次のものがあります。


「 1. マネージャー」 「 2. シニア・マネージャー」 「 3. アソシエイト・パートナー」 「 4. パートナー」


現在、私は「シニア・マネージャー」です。よって、今回は「アソシエイト・パートナー」への昇進試験ということになります。


一般に、外資系コンサルティング会社では、「コンサルタント」 → 「マネージャー」 → 「パートナー」 という流れで昇進していきます。一般企業で言えば、「マネージャー」=課長、「パートナー」=部長以上 ( 役員も含む ) と考えていただければ、だいたい対応していると思います。2. と 3. については、「シニア・マネージャー」=上級課長、「アソシエイト・パートナー」=副部長 といったところでしょうか。


個人的には、Senior ( 上級の )、Associate ( 準~、副~ ) というのはなくして、シンプルに 「マネージャー」 と 「パートナー」 の 2 本立てでいいのではないかと思っています。しかし、それでは困る理由がある。 ズバリ、給料が違うんですよ ! 1 ~ 4 の間には、年収ベースでそれぞれ数百万の差があります。はっきり言って、これは大きい。眼の色も変わってくるというわけです ( クライアントにとっては、どうでもいい話ですがね )。


実際には、給料以外の意味合いもあります。上記 1 – 4 のランクに上がっていくためには、ランクに応じた過酷な競争が待っています。どのランクも、そう簡単になれるものではないのですが、その中でも、いくつかのランクには、他と比較して大きな「壁」が設けられているのです。


――― コンサル昇進における 2 つの 「壁」 ―――


昇進の「壁」とは何か ? ここで、100 人がコンサル会社に新卒入社するとして、生涯のうちに、どのランクまで上り詰めることができるかということを考えてみると、だいたい以下のようなイメージだと思います。


1. マネージャー = 30 人 / 100人 ( 30% = 下位レベルのうち昇進できる割合 )
2. シニア・マネージャー = 15 人 / 30 人 ( 50% )
3. アソシエイト・パートナー = 3 人 / 15人 ( 20% )
4. パートナー = 1 - 2 人 / 3 人 ( 33 – 67% )


「 100 人中 30 人がマネージャーになれるの ? 大したことないじゃん ! 」と思わないでください。ここで言っているのは、生涯のうち、つまり一生勤めたとしたら … という前提で言っています。マネージャーになれる 30 人についても、全員が 30 代のうちになれるわけではなく、50 歳を目前にやっとなれる方もいます。また、マネージャーになれなかった 70 人のうちの半数以上は、淘汰 ( つまり、クビ ) されるという現実もあります。


さて、100 人のスタッフから 1 人のパートナー ( 部長・役員クラス ) が生まれるとして、それぞれのランクに昇進する際の「下位レベルのうち昇進できる割合」を見ていただくと、あることに気付きます。それは、「 1. マネージャー」 と 「 3. アソシエイト・パートナー」 になるときの競争率が、他の場合より高い ( つまり、なれる確率が低い ) ということです。


まず、「マネージャー」というのは、コンサルタントのキャリアパスにおいては、大きな節目となります。マネージャーになると、プロジェクトを統括する立場の PM ( プロジェクト・マネージャー ) も任されます。それ以上に重要なのは、収益目標等の数字を負わされることが挙げられます。会社の業績というのは、マネージャーが稼いだ数字の積み重ねという言い方もできるわけで、やはりそれなりに人選がされるというわけです。


では次に、私が今回チャレンジしている「アソシエイト・パートナー」とは、どのような位置づけなのでしょう。「昇進できる割合」だけ見ると、ここの競争率が異様に高い。なぜか ? それは、「パートナーの予備軍をごく少数で選抜しているから」なのです。少数にしている理由は、パートナーを選ぶにあたっては、大勢の母集団から実力主義でポンッと昇進させるやり方ではなく、「これは ! 」という人材に、あらかじめ目をつけておいて、今後数年間にわたって、その人材がパートナーにふさわしい人材かどうかをじっくりと見極めようとしているからなのです。


「… ということは、タカシはパートナー予備軍に選ばれたってわけだろ ? 大したもんじゃん ! 」 いやいや、まだ選ばれてませんから … 今まさに、その試験を受けてるんですってば !


――― 昇進候補となるための「条件」とは ? ―――


アソシエイト・パートナーへの昇進試験を受けるには、いくつかの条件があります。一番大きいのは、「前年度に稼いだ収益 ( 売り上げ ) 」でしょう。もちろん、リーダーシップや人柄なども重要ですが、何と言っても「数字」には勝てません。外資では、定性的な評価と出世とは、あまりリンクしていません。定性的な評価が高ければ、おのずと定量的にも結果が出るはずだ ( もっと言うと、出ない方がおかしい ) と考えるのです ( No.183 『数字は人格 !? 』 参照のこと )。


では、私は昨年度、どれだけ稼いだのか ? 正確な数字を言うことにそれほど意味はないので、ざっくりお話しすると、「○億円」です。これじゃわからん … という話もありますが、数千万ではないということをご理解いただければと思います。ま、かなり大変なんですよね、これが。


もちろんこの金額は、私のチームに所属する PM が統括したプロジェクトの総額であり、そのプロジェクトには多くのスタッフが関与していたわけで、私ひとりが稼いだわけではありません。チームメンバーのみんなには、感謝の一言に尽きます。その感謝を形で表すためにも、是非昇進したい ! やはり、リーダーが「シニア・マネージャー」では、できること ( 権限の範囲 ) も限られます。より大きなプロジェクトにおいて、メンバーに経験を積んでもらうためにも、私が「アソシエイト・パートナー」にならねばならんわけです ( 私自身の給料の問題だけではない ! こういう、高尚な理由があるわけです )。


それともう 1 つ、昇進試験を受けるためには、「 ( 昇進することに対する ) 意思表示」を要求されます。「アソシエイト・パートナー」になると、収益目標が大幅に UP し、目標を達成すれば大きなリターンも期待できるわけですが、その逆、つまり達成できなかった場合には、解雇される可能性も高くなります。なので、そのリスクを嫌う人の中には、数字で条件を満たしていても、昇進への意思表示をせずに、比較的リスクの低い「シニア・マネージャー」にとどまる人も少なからずいます。ま、このあたりは人それぞれということですね。


さて、私は上記のような高尚な ( しつこい ! ) 目的もあって、昇進に対して「意思表示」しました。ということで、今、面接試験を受けているわけです。


前置きが長くなりました。冒頭に戻りましょう。さて、面接官のどのような問いに、私は困ってしまったのか ?


審査官 「Who? Who succeeds to you? Who is… “ Post Takashi “ ? 」 ( あなたの跡継ぎ=ポスト・タカシは誰なの ? )


私 「 … 」


どうして私は困っているのか ? また、この問いはどのような意味を持っているのか ? 次回、その本質に迫ります。


( 次回続く )




  • 奈良タカシ
  • 1968年7月奈良県生まれ。
    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る(外資系2社目)。