タカシの外資系物語

# 374  ■ キャリアを実現するための「就活」とは ? ( その 2 )


――― 具体的にキャリアを説明できるか ? ―――


( 前回の続き ) 今回は、キャリアを実現するために有効な「就活」とはどのようなものか ? について考えてみましょう。本題に入る前に、みなさんにとって「キャリア」って何なんでしょう ?


三省堂大辞林第二版には、以下のように出ています。
( 1 ) 経歴、経験
( 2 ) 職業、特に専門的な知識や技術を要する職業に就いていること


イメージ的には、自分が思い描く将来像 ( 目標 ) とそれに辿り着くまでの道のり ・・・ そんな感じでしょうか。誰にでもできる仕事ではなく、特殊なスキルが必要で、かつ社会的な地位も高く、収入も多くて ・・・ 欲を言えばキリがありませんが、そう簡単に達成できるものではないからこそ、計画性を持ったキャリアパスが必要だという論理になります。


では、次の質問。みなさんは、自分の目指すべきキャリアを、具体的に説明できますか ? 「うーーん、何でもいいから自分でベンチャー興して経営者になる」「IT コンサルタントとして有名になる」等々、まぁこんなもんでしょう。実は、具体的に自分の目指すキャリアを説明できる人って、あまりいないのです。どのような分野で起業して、どんな商品・サービスを社会に提供したいのか、IT コンサルタントとして、どのような足跡を残したいのか。単に、「なりたい、なりたい ! 」と言っているだけでは、子供の頃に「プロ野球選手になりたい」「歌手になりたい」と言っていたのと、ほとんど差がありません。


現在私は 30 人の部下を管理していますが、目指すキャリアが明確で、それを具体的に説明できる人はほとんどいません。中には、自分のキャリアが明確ではないにもかかわらず、「このままでは自分のキャリアパスが実現できないので、転職します ! 」なんてことを言い出す輩もいます。


私 「( おいおい、またわけのわからんことを言い出したよ、んったくぅ ・・・ ) で、転職先は ? 」


その輩 「△△ コンサルティングです」


私 「今の会社で実現できないものが、△△ コンサルティングに転職すればできるようになるの ? 」


その輩 「△△ コンサルティングの方が給料高いですから ! 」


私 「じゃ、君のキャリアってのは、給料が高くなりさえすればいいってことなの ? ! 」


その輩 「いや、給料だけではないですけど ・・・ 」

なんじゃ、そりゃー ! どないやねん ! (T-T)


――― 「キャリアがないとカッコ悪い症候群」とは ? ―――


どうしてこのようなことが起こるのか ? その最大の理由は、目指すキャリアなど見つかってもいないのに、「キャリア、キャリア」と大騒ぎすることにあります。別の言い方をすると、「キャリアがないとカッコ悪い症候群」ともいえる症状、他人から「そりゃ、すごいねー」と言われる目標がないと、ダメなやつだと思われるんじゃないかという恐怖心から、無理やりキャリアを設定しているのです。


私は、多くの場合、ビジネスにおけるキャリアとは、「働きながら形成されるもの」だと思っています。ある仕事を 5 年、10 年と積み重ねていく中で、「お ! この分野をもっと極めてみたいな」とか、「もしかして、この仕事に向いているかもしれない」なんて気づいて、徐々に、自分に合ったキャリアが見つかっていくのではないでしょうか。


思い返すと、私は自分の「就活」時には、「国際派のバンカー ( 銀行員 ) になりたい」と思っていました。でもこれって、前述の通り、子供の「プロ野球選手になりたい ! 」と似たノリがあって、現実味がないキャリアだったように思います。システム部で開発案件を経験し、IT の可能性を目の当たりにする中で、「金融機関向けの IT コンサルタント」というのが、自分の興味と適性が最も活かせるキャリアだと気づいたのは、30 歳になった頃でした。その結果、投資銀行の社員の給料には遠く及びませんが、日本の金融機関にいる国際部門の人と比べても遜色のない給料ももらえるようになりました。また、仕事そのものにやりがいも感じています。


あと、私のキャリア形成のモットーに、「極力、経験を無駄にしない」ということがあります。私は元来貧乏性なので、自分の経験が、後続のキャリアに活きてこないとムカツクんです。なので、自分が積んだ経験を、1 つも無駄にすることなく実現したキャリアは、現状のところ、今やっている「金融機関向けの IT コンサルタント」ということになっているという側面もあります。


――― キャリアは気楽に考えろ ! ―――


外資に勤めていると、外国人の同僚が思い描いているキャリアとは、それほど窮屈なものではなく、かなり柔軟性のあるものだということがわかります。それも、1 年 1 年変わっていくようなイメージです。彼らいわく、


「過去に思い描いていた夢とキャリアを混同しない方がいい。目指すべきキャリアなんて、そのときどきによって変わるんだから。経験を通して、そのときの自分に最も合っているキャリアを選択できなきゃ、意味ないだろ ! 」


まさにその通り。私のように、「どれも無駄にしないぞー ! ウガウガー」といった貧乏くさい戦略を採るか否かは別として、あまりにも過去に描いた理想に凝り固まってしまっては、キャリアに振り回されることになりかねません。


以上のことから、私から学生のみなさんにできるアドバイスは、「もっと気楽に考えろ ! 」 ということです。所詮、自分に何が向いているか、何が好きか、なんていうのは、働いてみないとわかりません。「就活」の時点で、何となく興味のあるものがあれば、その業界に入って、じっくりと自分のキャリアを見定めることです。例えば、金融に興味があるなら、とりあえず銀行に入ってみればいい。5 年もやれば、何となく見えてきますから、その段階で、次のステップに進むなら進めばいいのです。もはや、終身雇用の時代ではありません。中途でも不利のない会社がほとんどになっていますから、私のように、30 歳になってからでも、35 歳になってからでも、軌道修正は可能だと思います。そもそも、20 歳そこそこで、人生のゴールが見えている人なんて、ほとんどいないんですから。


先日、大学時代の友人であるヨウイチから手紙が来ました。彼は法学部を卒業して、実家のある京都で地方公務員をしていました。


「タカシへ  久しぶり ! 突然なんだけど、このたび、○○ 市役所を退職して、パン作りの専門学校に通うことにしました。親に言われるがまま、なんとなく公務員になったけど、やっぱり子供の頃からの夢が捨てられなくてね ・・・ 家族もサポートしてくれるようなので、まずは一から頑張ってみようと思います。いつになるかわからないけど、将来店を持ったら、一番に俺の焼いたパンを食べてくれよな。じゃ、また ! 」


こんなキャリアの実現もあるんですよね。貧乏性の私には、こんな思い切ったことはできませんが ・・・ でも、「キャリアがないとカッコ悪い症候群」に取り憑かれて、キャリアに振り回されている若者よりは、よっぽどカッコいいとは思うのですが、いかがでしょうかね ?




  • 奈良タカシ
  • 1968年7月奈良県生まれ。
    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る(外資系2社目)。