中学の頃、私にとって画期的なアニメが放映されました。それは、「起動戦士ガンダム」です。ガンダムは現在でもその人気が衰えていない「お化け番組」ですので、読者のみなさんもご存知ではないかと思います。
さて、ガンダムはどこがすごいのか ? それは、従来のヒーローの典型的なパターンである「勧善懲悪」という図式を崩したことでしょう。
主人公のアムロはガンダムを操縦しており、従来のパターンなら完全無欠のヒーローでみんなの憧れの存在のはず。しかし、実は結構わがままで内向的だったりして、そんなにカッコよくありません。一方、アムロの相手をするシャア ( アムロから見ると「敵」 ) は、悪者でありながら、「赤い彗星」とか呼ばれていて、極めてかっこいい。仮に「ガンダムごっこ」をしたなら、アムロよりもむしろ、シャアの方に希望が殺到しそうなぐらい人気があったのです。
シャアの名セリフの 1 つに、「認めたくないものだな。若さゆえの過ちというものを … 」というのがあります。これは、だれでも若いときには周りが見えず、自分中心的に物事を進めてしまい、周りが見えずに失敗すること、またその失敗を認めない頑固さのことを言っています。確かに、恐いもの知らずで、勢いだけで仕事を進めてしまい、結局失敗した苦い経験、「若さゆえの過ち」はだれにでもあるでしょう ( 私など、おっさんになった今でも過ちが絶えませんが … (T-T))。経験豊富なシャアは、アムロなど若い戦士たちを、このような言葉で諌めたのです。
一方アムロは、そんなクールなシャアに対して、表面的には敵対心をむき出しにしていますが、実はほのかな憧れを抱いています。「いつかきっと追い抜いてやる … 」この思いが強烈なモチベーションとなって、アムロを突き上げます。そして最終回、アムロとシャアは 1 対 1 で対決することになります。ほんの数ヶ月前までは、シャアの圧倒的な力の前のなすすべもなかったアムロですが、いまや 2 人の力は拮抗しています。「こ、こいつ … いつの間に … 」 シャアは戦士として見事に成長したアムロに対して、敵・味方の関係を越えた、熱い思いを抱くのです。さーて、ここからがドラマのクライマックス ! アムロの攻撃に対してシャアはーーーーーーーーーーーっと … あ、このままではいつまでたっても本題に入れないので、ガンダム話についてはこのぐらいにして、またの機会にお話したいと思います。
読者のみなさんはすでにお気付きだと思いますが、シャアとアムロの間には、一種の師弟関係のようなものが成り立っています。アムロにとってシャアは、一種のコーチ、メンターのような役割を果たしています。一方のシャアも、急速に力を付けたアムロと切磋琢磨することで、現状の力に満足せず、常に向上しようというモチベーションを得ています。
前回のコラムで、外資における「One Team」 ( 個人としてではなく、チームとして考えること ) の考え方についてお話したと思いますが、高い業績を上げているチームというのは、ある種のピリピリとしたムードを漂わせている場合が多いように思います。それはギスギスした関係ではなく、シャアとアムロのように、敵 ( ライバル ) だけどお互いを認め合い、ときには師弟関係であったものが実力的に逆転するような、ダイナミックな動きを秘めた組織です。
一方、和気あいあいとしているチームは、居心地はいいのでしょうが、社員同士が個々を高め合うという意識がないため、スキルが伸びないばかりでなく、大した業績も上がらないように思います。つまり、社員にとって重要なことは、いかにして自分にとっての「シャア」を見つけ出し、その人を超えることを目標にすることができるか、ということが重要なのです。
さて、以上述べたことは、活性化した組織を作る上で、見本となる敵 ( ライバル ) を作るという、いわば会社の内部でのお話でした。一方で、お客様に対して、わざと「敵・味方」の関係を示して、効果的に交渉を進めるパターンもあります。
例えば、米国の本社から来た外国人をお客様に紹介する場合を想定してみましょう。多くの日本人のお客様にとっては、外国人の、それも本社のえらいさんというのは、「敵」とは言わないまでも、とっつきにくい存在であることは事実です。そんな場合には、日本人がわざと「敵」を演じることによって、外国人のえらいさんをお客様に馴染ませるようなアプローチをとります。
タカシ 「本日は私どもの米国本社で営業本部長を務めております Phil をご紹介します」
お客様 「は、はぁ … Nice to meet you … ( ちょっとタカシさん、大丈夫なの ? いきなり外国人連れてきて ! )」
タカシ 「いやぁ … この半年、私もお客様とのプロジェクトを担当させていただいているわけですが、やっぱり日本人だけではダメなケースも多いんですよねぇ … 特に、海外の先進事例なんてのは、やっぱりアメリカが本場ですから … ね、Phil !」
Phil 「Yes, I can introduce many brand-new case and methodologies for you … ( その通り。お客様のために、多くの先進事例と方法論をご紹介できます )」
タカシ 「お客様の場合ですと、現状は業績も良くて投資資金の余裕もあるのでしょうから、ここは攻めの経営で、さらなるシステム投資をされてはどうですかね ? 」
Phil 「No, You have to judge investment in cool, as time when achievement is good ! ( いや、業績がいいときほど、冷静に投資判断を下すべきです )」
このように、私がわざと一種の「悪者」を演じ、Phil に「いいとこどり」をさせることで、お客様からの信頼を得るという作戦です。お客様にとってみれば、私と Phil とのやりとりを通じて、「お、この外国人、それなりにわかってるじゃん。さすが本社のえらいさん … 」という印象を持つことができるわけです。
私が演じたこのような役割のことを、外資では Bad Actor または Bad Type と呼んでいます。日系企業でも、似たような役割を演じるケースはありますが、外資のすごいところは、事前にその役割を決め、練習までしていることだと思います。お客様に Phil を引き合わせた際にも、事前に 1 時間ほど、Bad Actor として私がどのように振舞えばいいのか、みっちりと打ち合わせしたんですから … ホント、悪役はつらいよ、って感じですがね。
以上、 2 回にわたりチームにおける様々な役割についてお話してきました。ピカピカのヒーローだけではなく、ときには縁の下の力持ちになったり、また、ときには悪役になったり … チームに所属する全員が、TPO に応じた役割を演じることができる点が、外資の強さの秘密なのかもしれません。
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