どんな会社にも当てはまることですが、採用面接には、「共通部分」と「個別部分」が存在します。共通部分というのは、相手がだれであろうと、また会社の事情がどのようであろうと、共通的に確認される部分です。例えば、自己紹介・志望動機・入社後の希望職種・現在の業務内容・これまでの業務経歴・資格の有無・希望給与・入社可能時期などは、どのような中途採用においても尋ねられる内容です。よって、これらの会話からでは、( 1 ) ~ ( 3 ) のどれかを見分けることはできません。
より重要なのは、個別部分です。一般に、「( 1 ) その他大勢採用型」というのは、あまり細かい話を聞かれるようなことはありません。そもそも ( 1 ) では、採用後において、個別具体的なアサイン先が決まっているわけではなく、ザックリとした採用をしているわけですから、細かい話を聞いても仕方ないのです。なので、「この人なら、うちの会社でやっていけそうだな。一緒に仕事ができそうだな … 」というのが、感覚的にわかれば OK という面接官が多いように思います。仕事に取り組む姿勢や部下に対するケアの仕方など、その人の「人となり」がうかがえるような質問内容が多くなってきます。
一方、「( 2 ) ( 3 ) 一本釣り採用型」というのは、具体的に何をやって欲しいのか、事前にかなり明確に決まっています。なので、( 1 ) に比べると、質問内容も具体的なものが多くなってきます。例えば、「銀行において内部統制を効果的に導入するためのポイントは何ですか ? 」と聞かれたら、おそらくは銀行向けの内部統制プロジェクトに関与できる人を採用したがっているのでしょう。また、「部下の転職が続いて、プロジェクトが立ち行かなくなった場合、あなたならどうやって立て直しますか ? 」と聞かれたら、おそらく前の PM ( プロジェクト・マネージャー ) は、部下の転職が原因でプロジェクトをうまく管理できなかったので、今回のあなたにはそれを解決することを期待していることがわかります。
また、一般的な「 ( 2 ) 一本釣り採用型」では、現在その会社に存在する業務内容について具体的に尋ねられますが、「 ( 3 ) 新規事業分野一本釣り採用型」の場合は、その会社はその業務をやったことがないケースが大半です。つまり、面接している側も、その業務が何たるかを知らずに質問している場合が多いので、質問されている側にしてみれば、「なーんだ、この人。全然わかってないじゃん … 」と感じることもあるように思います。
役員 「 … じゃ、タカシさん。いま仮に、私を銀行の経理部長さんだと思って話してくださいね。今後の銀行におけるリスク管理のポイントは何だと思いますか ? 」
私 「そうですね … 」
この質問を受けたとき、私は「えらい具体的な質問やなぁ … 」と思ったのですが、いざ入社してみて、その理由がわかりました。私は、その会社に入社後、銀行向けのリスク管理を扱う部署の PM 候補として配属されたのです。その役員は、私が配属される具体的なポストを念頭に置きながら面接をしていたわけです。どうりで、質問内容が具体的なわけですね。
一方、今の会社に転職してきたとき ( 外資コンサル → 外資コンサル ) は、どちらかというと、( 1 ) に該当するように思います。当時、今の私の会社では、業容拡大に伴って、とにかくマネージャーレベルのコンサル経験者を大量に採用していました。 PM ができるコンサルを集めれば、あとは入ってから配属を調整すればいいだろう … くらいの雰囲気だったように思います。面接も、何やら自分の仕事論みたいなことを延々と尋ねられたような記憶があります。実際に入社してみると、私と同時期に入ったマネージャーは 5 名もおり、配属先も入社後にみんなで相談して決めているような有様でした。私は銀行が専門なのですが、「別に、どんな業種でもいいっすよ ! 」なんて言ったばっかりに、カード会社向けコンサルのマネージャーとして配属されてしまったほどです … ( その後、徐々に銀行向けの仕事にシフトしていきましたが )。
さて、「その他大勢採用」 と 「一本釣り採用」 では、どちらが有利なのでしょうか? 一般に、一本釣り採用の方がシニア ( = 高いランク ) での採用が多いので、その他大勢採用に比べると、給料が高いのは事実でしょう。しかし前回のコラムでも述べたように、一本釣り採用には、「業務撤退等で、その仕事がダメになった場合、解雇される可能性が高い」というリスクがあります。
私の場合でもそうでした。私は前職のコンサル会社には、「銀行向けのリスク管理コンサル」として一本釣り採用されたわけですが、その 1 年後には銀行向けのリスク管理コンサルそのものが下火になってしまい、部門は大幅に縮小されました。 5 名ほどいた部門のマネージャーも、結果的にほぼ全員解雇されていきました。え ? お前もクビになったのか、って ? いや、私は幸いにも、部門が縮小される前に、他部門に異動していたため、危うく解雇されずに済みました。
一方、現在のコンサル会社には、大勢のマネージャーのうちの一人として、自分の専門外である「カード会社向けコンサル」として採用されたわけですが、結局のところ、専門である銀行向けコンサルとして落ち着いています。なぜなら、その他大勢の中でも、やはり私が最も銀行向けコンサルが得意だったからだと思います。入社後 2 年ほどした段階で、「銀行分野においては、マネージャーの中ではタカシが一番詳しい」という噂に、実績も加わって、晴れて私は銀行部門に異動することができました。
ここで私が言いたいのは、「採用のされ方は大きな問題ではない。常に状況を察知して、先取りして動くとともに、自分の得意分野を磨いておくことが重要である」ということです。確かに、一本釣り採用は気持ちがいいものです。しかし、前職の会社において、その地位に安穏として何も動きをとらなかったとしたら、私は早々に解雇されていたはずです。また一方で、たとえその他大勢採用であったとしても、何か光るものがあれば、頭 1 つ抜きん出ることは可能だということです。
重要なことは、客観的に自分の立場を見つめ、先を見据えた行動が取れるかということ。私の経験則からしても、実際の能力以上に評価され、破格の条件で一本釣り採用された人は、その後、伸びる可能性が低いように思います。いや、伸びないどころか、半年もたずに退職しているケースが多いように感じます。その人にとっては、破格の条件で中途入社すること自体が、ゴールになってしまったのでしょう。
中途採用というのは、あくまでも「スタート」であって、「ゴール」ではありません。マラソンのスタート時に、招待選手として先頭でスタートしようが、後ろの方でその他大勢からスタートしようが、 42.195km 走り終えた段階で先頭にいる人が勝ちなわけで、ビジネスも全く同じことが言えるように思います。
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