タカシの外資系物語

# 355  ■ "うまい" プレゼンテーションとは ?


――― プレゼンが得意な理由 ―――
 


先日、あるクライアントの A さん ( 銀行員 ) と話していたときのこと。


A さん 「ほーっ ! タカシさんはわれわれと同じ、元銀行員なんですね」


私 「実はそうなんですよ、お恥ずかしながら … 」


別に、恥ずかしがることは全くないのですが、なぜだか妙に恐縮してしまいます。「なーーんだ、コンサルタントとか言っても、元は銀行員。同じ穴のムジナじゃないですかぁ … 」なんて言われるのを、少しビビっているのかもしれません。


A さん 「でも、タカシさんって、銀行員らしくないですよね ? 」


私 「そうですか ? どういう点が ? 」


A さん 「だって、プレゼンがうまいじゃないですか ! われわれ銀行員は、資料を作るのはそれなりにうまいですが、いざプレゼンとなると、からっきしダメで … 」


実は私、プレゼンには少々、いやかなりの自信があります。仮に、「あなたの強みは何ですか ? 」と問われたら、私は迷わず「プレゼン能力」と答えます。「コンサルなんだから、プレゼンがうまいのは当たり前だろ ! 」と言われればそれまでですが、どんなに優秀なクライアントに対しても、プレゼンだけは負けない自信があります。( ま、クライアントと勝ち負けを競っても仕方ないのですが )


では、なぜ得意なのか ? まず、元来、話し好きであることは間違いありません。小学校時代も、授業中にペチャクチャ話して止まらないため、教卓のすぐ横の「特定席」に、生徒側に机を向けて座らされたことが何度もあります。それに加え、単におしゃべり好きというだけではなく、特に大勢の聴衆の前で話すのが大好きなのです。


人前で話したくて話したくて仕方がないので、高校は放送部と演劇部、大学では英語劇のサークルに入っていました。教師になりたいと思ったのも話し好きが高じたものですし、経済学部にもかかわらず、国語の教員免許を取ったのも、全ての教科の中で国語が一番話す機会が多そうな気がしたからです。「プレゼン上手 = 話し好き」だとすると、私はまさにピッタリの素養を持っていたことになります。


役者、アナウンサー、教師、コンサルタント … 全てが「話すこと」を基本にしていますから、話すのが苦手な人には辛い仕事かもしれません。しかし、話し好きな人全てが、プレゼンがうまいわけではありません。なぜなら、プレゼンは単に話せばいいというものではないからです。では、「うまいプレゼン」というのは、一体どのようなものなのでしょうか?


――― どこが、"うまい" のか ? ―――


私は思い切って、A さんに尋ねてみました。


私 「いやー、お褒めいただいて恐縮ですー。そこで、 1 つ質問なんですが … 私のプレゼンのどこが "うまい" とお感じになりますかね ? 」


A さん 「そーねぇ、声が大きくて、ハキハキしていて、ポイントが明確でわかりやすい。あと、感情表現もうまいよね … 」


( あーーん、そうなんだ … でもこれって、演劇部と放送部出身者の域を出ないよなぁ … (T-T) )


A さん 「もちろん、説明資料のパワーポイントも見やすいですよ … 」


( あぁーーん、そうなんだ … でも今日のスライドって、スタッフの K くんが書いたものなんだよなぁ … (T-T)(T-T) )


A さん 「あとはねぇ … 」


私 「あとは ? ( ワクワク ! )」


A さん 「そんなとこかな ! 」


がっくし ! それで終わりかいなーーーーーーーーーーっ ! わしゃ、単なるおしゃべり好きの役者くずれっちゅうことかいーーーーーーーーーーーっ ! (T-T)(T-T)(T-T) ハァハァハァ …


「タカシさんのプレゼンがうまいのは、先に進めようと考えている点だよ」


隣にいた B さんが割って入ってきました。


A さん 「先に進める ? 」


B さん 「常に先のこと、次のことを考えているから、プレゼンが終わってから 『 … で、何の話でしたっけ ? 』 とならないんだよ」


にゃるほど B さん、うまいこと言いますね。確かに B さんの言う通り、私は常に「先のこと、次のこと」を考えながらプレゼンをしています。しかし、どうしてこれが「うまいプレゼン」といえるのでしょうかね ?


――― 目的を明確に伝えるためのテクニック ―――


そもそも、プレゼンには何らかの目的があるはずです。コンサルタントである私の場合、大抵のプレゼンにおいて、その目的は「先につなげる」ことです。提案時のプレゼンなら、その提案を買ってもらった後の作業が、いかに効率的かつ効果的でスムーズであるかを説明しなければなりません。


そのためには、先の作業内容がわかる何か - 例えば、成果物のアウトプットイメージやお客様側の作業負担、作業上のリスク - などを具体的に示す必要があります。


最終報告時におけるプレゼンだって同じこと。最終報告以降は、コンサルとしては、そのクライアントとの接点はなくなるかもしれませんが、クライアント側の作業はずっと続きます。「最終報告なので後は知りません。はい、サヨウナラ … 」というわけにはいかないわけで、その先の作業イメージを具体的に話す必要があるのです。


プレゼンのテクニックというのは、「目的」を達成するための「手段」にすぎません。大声を張り上げてもいいし、奇抜な服装でやってもいいし、オールカラーで写真付きの凝ったスライドを使っても構わないでしょう。結果として、目的が達成できれば、どんなプレゼンをしてもいいのだと思います。


しかし、目的のことを忘れ、手段にすぎないプレゼンのテクニックのみを重視してはいけません。
最近は、「最強のプレゼン本 … 」みたいな、プレゼンテーションのテクニックに関する解説本が多く売り出されています。その多くには、「プレゼンには目的と手段があり、この本で解説するのは主に手段であるテクニックの方です … 」とちゃんと書いてあるのですが、本の 98% はテクニックのことしか載っていません。そのため、「プレゼンはテクニックで決まる ! 」と考えている人の、いかに多いことか …


みなさんにも経験があると思いますが、非常にうまいプレゼンをしているのに、妙に薄っぺらい感じがする人がいると思います。こういう人は、目的というか、何を伝えたいのかという意志がなく、単にテクニックのみでプレゼンしていると思っていただいて間違いありません。重要なのは、「テクニック」よりも「目的」です。そして、それを伝えようとする意志に他なりません。


いつの日か、私のプレゼン能力にさらに磨きをかけて、みなさんの前でお話できる機会が来ることを楽しみにしています。では !

 




  • 奈良タカシ
  • 1968年7月奈良県生まれ。
    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る(外資系2社目)。