「This might...give a bad impression. We had better correct it! ( このスライドは誤解を与えかねないな … 修正した方がいいぞ ! ) 」
とある日曜の夜 8 時。私は電話会議に参加しています。何を話し合っているかといいますと、あるお客様に対する提案書のレビュー。提案書はパワーポイントで書かれており、関係者がスライドを 1 枚 1 枚チェックしているわけです。で、ボスである Thomas のチェックが入り、あるスライドを修正することになりました。
Thomas 「By the way, who wrote this...? ( ところで … このスライド書いたの、だれだい ? ) 」
私 「It’s me! Takashi ( あ、俺です。タカシ … )」
Thomas 「You, again! ( また、お前かよ ! )」
「また、お前かよ … 」 その通り。提案書のスライドは、全部で 30 ページあるのですが、うち 22 ページは私が書きました。残り 5 ページがヒロシ、 3 ページが Richard の担当となっています。え ? 3 人で提案書を作ったわりには、担当したページ数に違いがありすぎるじゃないか、って ? ハハハ、そう言えば、そうですね。でも、もう慣れました。
「ハハハ … じゃ、ねーーよ!慣れました … って、えらい不公平じゃねぇか ! 」 確かに、ページ数から判断すると不公平ですね。でもね、みなさん。こうでもしないと、仕事って、なかなか進まないんですよ、これが !
3 日前のこと、私はヒロシ、 Richard とともに、 Thomas に呼び出されました。
Thomas 「○○銀行に対して、営業システムの提案を実施することになった。来週の提案に向けて、3 人で提案書のドラフトを作ってくれないか」
Richard 「OK, Boss!」
…
Richard 「それじゃ、提案書のパート毎に担当を決めよう。まず第一部 …このパートは、お客様の Pain ( 課題 ) を抽出して、 Solution ( 解決策 ) につなげていく部分だから、非常に重要なんだけど、だれが書く ? 」
ヒロシ 「 … 」
Richard 「 US でやっていたときに、同じような提案書を作ったことがあるんだけど …あの提案書、どこ行ったかかなぁ … あれさえあれば、すぐできるんだけど、失くしたかなぁ … 」
今回の提案は、最近出てきた新技術を適用したもので、過去の事例の「使い回し」がきかない分野です。一から書き起こす必要がありそうです。
私 「俺がやるよ」
Richard 「お、そうか ! じゃ、タカシに任せた ! 」
… とまぁ、こんな感じで、ほとんどは私が書くことに決まったというわけです。
そもそも Richard の頭の中には、「いかに最小限の努力で成果を上げるか ? 」 つまり「いかに手を抜くか ? 」ということしかありません。ヒロシは、そんな Richard の「術中」にはまらないよう警戒するあまり、主体的に行動がとれなくなっています。
実は、 Richard とヒロシのような構図は、外資系において、よく目にする構図です。調子のいい外国人と、その外国人に翻弄されまいと警戒するあまり、何もできなくなっている日本人 …しかし、これでは仕事が全く前に進みません。では、どうすればいいのか ?
これまで私も、このような事態を打開するために、いろいろと工夫してみました。 Richard やヒロシに仕事をさせるには、どうすればいいか。いろいろと試してみたのですが、どれもダメでした。そして、ある 1 つのことに気付いたのです。それは、「仕事をすることが “損” だと思っている人に、仕事をさせることはできない」ということです。
そりゃ、私だって、できれば仕事はしたくない。仕事をせずに給料がもらえれば、それにこしたことはないでしょう。しかしそんなことはありえないわけで、現に今も、提案書を書かなければいかんわけです。仕事をしなければならんわけです。ならば、四の五の言わずに、まずはやるべきことをやった方がいい。自分がやったら損だとか、だれかにやらせた方が得だとか、そんな話ではないのです。くだらない駆け引きをして、だれがやるかなかなか決まらない状況を作って時間を浪費している方が、余程時間のムダってもんです。なので、私は極力、自分から進んで仕事を引き受けるようにしているのです。
外資系企業は非常に効率的に仕事を回しているように思われがちですが、実はそうでもない部分もあります。上述の例は、その典型的なパターンでして、「俺がやる ! 」と言い出す人がいなくて、だれも面倒な仕事に手を出したくないと考えているような状況です。
私は、この部分こそ、外資の大いなる「弱点」だと思っています。もちろん、日系企業にも Richardのような人はいます。しかし、日系企業の場合は、提案書 30 ページが 3 人に割り振られた場合、少なくとも 1 人当たり 7 ~ 8 ページ程度は自分の担当になることを、常識的に覚悟していますから、担当割でもめて、時間を浪費することはありません。一方、外資における Richard のような人物の場合、「できれば 1 ページも書かずに済ませたい」と、本気で思っています。これが根本的な違いです。なので、外資で Richard やヒロシのような人ばかりのチームになると、全く仕事が進まないままに、数日が経過してしまうようなこともありえるのです。
「自分がやらなくても、だれかがやってくれる」「何もしないで成果を出すことこそ、優秀な証拠なのだ」 … これらは、古きよきアングロサクソンの考え方でして、 Richard もこれを信じてやまないうちの一人です。しかし、もはやこの考え方では通用しない世の中が来ています。
その最も典型的な例が、今回の提案のように、「過去の事例の「使い回し」がきかなくなってきた …」ということでしょう。アングロサクソンの真似をしていれば済んだ時代はとっくに終わり、常に最先端のアイデアを提示しなければならなくなっています。そんな時代に、 Richard やヒロシのような人がチームにいることは、単なる足手まとい以外の何ものでもありません。
「でも、外資の評価では、タカシよりも Richard のような人が高い評価を受けるんでしょ ? 」 いやいや、そんなことはありません。時代は既に変わっているのですよ。次回のコラムでは、そのことについてお話しましょう。
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