前回のコラムで、「自分のことは自分ですること」の重要性を書きました。ま、実際には、このこと自体は社会人としてごく当たり前のことで、今さら強調するほどのことでもありません。しかし多くの日系企業では、その「当たり前のこと」が実行されていないのも事実です。
例えば税金の年末調整処理をとっても、かなりの差があります。年末調整の処理とは言うまでもなく、あらかじめ源泉徴収で天引きにされた税金から、保険料分等を還付してもらうために、保険料支払済の証拠書類を付けて、税務署に提出する処理です。
もちろん私は、前職の銀行でも、必要書類自体は自分で用意していました。しかしその後の処理が、外資系とは違うのです。日系企業では、個人が作成したシートを課単位ぐらいで、再度、庶務係 ( ほとんどは一般職と呼ばれる女性です ) が念入りにチェックしてくれました。ですから、人事部厚生担当に書類が届くときには、ほぼ完璧な書類が出来上がっていたのです。
一方、外資系企業ではどのように処理されるでしょうか。外資系企業では、年末調整のように、個人レベルで必要な処理が発生する場合、事前に「処理マニュアル」がメールで送付されます。
「すべてはあなた個人の責任で行ってください。締め切りに遅れたら、一切受け付けません … 」一見すると、「マニュアルもあるんだから、何も問題ないじゃない」と思われるかもしれません。しかしながら、少しでも日系企業の「いたれりつくせり」の処理に馴れた人間にとっては、この微妙な差に何ともいえない違和感があるのです。
実は、昨年の年末調整の時期に、私はちょうどロンドンに長期出張していました。処理のメールを受け取ったのはいいのですが、いかんせん遠隔地にいますので、思うように処理が進みません。これが日系企業なら、前出の庶務係さんにお願いできたのになぁ、と思ったものです。
日系企業における、このような「過保護」な処理システムは、一部の「ぐうたら社員」に支持される一方で、余計なオーバーヘッド・コスト ( 間接的な費用 ) を発生させています。外資系企業では、これらの処理のほとんどをマニュアル 1 本で終えてしまうため、いわゆるバックオフィス部門の人数が極めて少なくなっています。以前にも書いたように、一部業務では、外部業者にアウトソースしている場合もあるほどです。その分で浮いたコストは、給与となってわれわれに還元されているわけですから、煩雑な処理を「オカネ」で買っていると考えればすむ話なのかもしれません。
先日、私のチームに日系企業からの中途入社組である A 君が入りました。私は早速彼を連れて、得意先に挨拶回りに出かけました。
( A 君 )「タカシさん、今日の交通費はどのように精算すればいいんですか ?」
( 私 )「"経費申請マニュアル" に書いてあるよ。それを見てみな」
( A 君 )「タカシさん、明日以降のチームのスケジュールはどうなっていますか ?」
( 私 )「うちのチームのスケジュールは、金融部門の掲示板に載ってるよ。スケジュール表の更新の仕方は、"予定表マニュアル" に書いてあるから、帰ったら確認しなよ」
( A 君 )「タカシさん、次のお客様のところでは、どのような話をすればいいんですか ?」
( 私 )「それもマニュアルに … っと、これは載ってないよな。よし、僕が話すのを見て、話題についてくるんだよ、いいね ?」
( A 君 )「は、はい ! よろしくお願いします」
世の中には、マニュアルでは伝えきれないこともあるわけでして、これについても日系・外資系共通に、「自分で身に付ける」しかないのかもしれませんね。
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