タカシの外資系物語

# 341  ■ 外資に巣食う "救急車を追う人" !? (その 1 )


 

――― タカシ、冤罪に泣く ―――
 


先日のこと、私は奥さんと愛犬ゴルゴを乗せて、都心をドライブしていました。


「もうちょっとで着くからなーー (^-^) 」 「あなたー、お疲れ様ーー (^-^) 」 「ワンワン ! (^-^) 」


実は私、こう見えても、神経質なほど安全運転を心がけています。大学時代の友人が、交通事故で亡くなったのが大きな理由なのですが、私自身もサンデー・ドライバーなので、決して無理はしないようにしています。信号も黄色に変わりそうなら即止まりますし、首都高でも 70 キロ以上出したことありません。これほどトロトロ走っているのは、私か路上教習車か、というぐらい。


さて、しばらくして車が側道の狭い道から環八 ( 環状 8 号線という、恐ろしく渋滞する道路 ) に差し掛かろうとしたところでのこと。


「あー、今日も環八混んでるなーー (T-T) 。 ( 車の ) 流れが切れやしない ・・・ 」
信号がないところだったので、私は一旦停止し、環八の流れが切れるのを待っていました。


「お ! 今だ ! 」 私が環八に入ろうとした、まさにその瞬間 !


「ピピピピピーーーーーーーーーーーーーーーーーっ ! その車、止まりなさい ! 」


見ると、自転車に乗ったお巡りさんが、車の前に立ちはだかっています。私は検問か何かだろうと思って、車を元の側道に戻して、路肩に着けました。


私 「どうしました ? ( ・・・って言うかあんた、急に飛び出したら危ないやんけ ! もうちょっとで轢くとこやったぞ ! ) 」


お巡りさん 「一時停止違反です ・・・ 」


私 「へ ? 」


お巡りさん 「だから、違反です。 ( 反則 ) キップ切りますから、免許証出して ! 」


な、な、なんでやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ ! (T-T) (T-T) (T-T)


私 「あの、一旦停止 ・・・ しましたよ、確かに。そもそも環八側、車がビュンビュン通って、すぐに入れなかったんですから ・・・ 」


お巡りさん 「ん ? ・・・ 不服ですか ? 」


私 「( なんじゃ、こいつ ! ) 不服っちゅうか、やってないもんはやってないんで ・・・ 」 


バタンっ ! 私は車の外に出ました。 「どこ見とんじゃ、おりゃー ! 」「ブヒブヒブヒブヒーーッ ! 」 車内では、うちの奥さんとゴルゴが怒りに荒れ狂っています。


お巡りさん 「とりあえず、ここにサインしてもらえますか ? 不服なら、不服申し立てしてもらっても結構ですが、その場合は、と ・・・ 平日に裁判所に行ってもらったりしなきゃならないんで、結構面倒ですよ」


完全に、居直られてる ・・・ 私は心の中で叫びました。「訴えてやるーーーーーーーーーーっ ! (T-T) 」


――― U くん、冤罪を切り抜ける ―――
 


え ? 結局、どうしたかって ? 私は泣く泣くサインして、反則キップを受け取りました。今回の違反分の点数を引かれたところで免停になるわけでもありません。それに、反則金の数千円は痛いですが、平日に会社を休んで不服を申し立てる手間に比べたら、「この違反金は厄払い。これで事故に遭わなくなると考えよう ・・・ 」と割り切って素直に従った方が身のためです。


え ? それで納得したのかって ? しとらんわーーーーーーーーーーっ (T-T) (T-T) (T-T)。私だって、できることなら、この「冤罪」を晴らしたいに決まっています。でも、でもーーーーーーーーーーーーーーーっ (T-T) (T-T) (T-T)、ハァハァハァ ・・・


読者のみなさんの中にも、私と同様の経験をされた方がいらっしゃるのではないでしょうか。理不尽とは思いながらも、「だからって、ちゃんと一旦停止したっていう証拠を示せるわけじゃないし ・・・ 」と、泣き寝入りされた方がほとんどではないでしょうか。


さて、これがアメリカだったらどうでしょう。これは私の友人 U の話ですが、彼が NY にいた頃、こんなことがあったそうです。その日 U は一人でブロードウェイ界隈をブラブラしていたのですが、急にお巡りさんに静止されました。お巡りさんが U のカバンの中を見せろというので、しぶしぶ見せたところ、身に覚えのないアクセサリーが入っています。どうやら、スリかなんかが、自分が盗んだ物を、知らないうちに U のカバンに入れた模様。「ちょっと、署まで来てもらおうか ? 」


U くん、絶体絶命のピーーンチ !


実は U くん、英語の達人でして、一切慌てませんでした。アクセサリーはだれかが勝手に入れたということ、自分は世界でも有数の企業に勤めており身元がはっきりしているということ、店側が納得しないなら買い取ってもいいということ … などを明確に告げ、身元引受人としてアメリカ人の上司に実際に電話したところ、お巡りさんも U くんの身の潔白を信用してくれたそうです。


で、この話は一件落着なのですが、そのときに面白い体験をしたそうです。お巡りさんに引っ張られそうになってワーワーやっているところに、スーツをバッチリ決めた、いかにもウサンくさそうなやつがやって来て一言。 「 You, OK? I can help you. I'm a lawyer! 」


――― ambulance chaser とは ? ―――
 


なんと、騒ぎを聞きつけて、弁護士が登場したのです。その弁護士にしてみれば、お金を持っていそうな日本人がトラブルに巻き込まれている。これは稼げるかも ・・・ と思ったに違いありません。 U くんが晴れて身柄を解放された後も、「どうする ? 訴えないのか ? Defamation ( 名誉毀損 ) で十分に訴えられるぞ ・・・ 」と、しばらくの間、 U くんの後をついて回っていたようです。


アメリカでは、このような弁護士のことを、「アンビュランス・チェイサー ( ambulance chaser ) 」と言います。直訳すると、「救急車の後を追う人」。事故や事件が起こりそうなところに顔を出して、訴訟を起こすことで稼ぐ、あくどい弁護士のことを指します。交通事故を専門にした ambulance chaser が多いのですが、 NY のような大都会では、 U くんのケースのように、街で起こる日常のトラブルに首を突っ込むことで生計を立てている輩も多いようです。


一般に、アメリカは訴訟社会だと言われます。これはアメリカ人の気質だと言ってしまえばそれまでですが、現実には、民間人が独力で訴訟を起こすのは困難です。つまり、訴訟したいと思う人とそれを手助けする人 ( =弁護士) がいなければ、訴訟は成立しません。アメリカが訴訟社会として成り立つためには、 ambulance chaser の存在が必要不可欠だということです。もし、日本にアメリカでいう ambulance chaser のような人がいたら ・・・ 私だって冤罪を晴らすために訴訟を起こしたかもしれません。


さて、前置きが長くなりましたが、実は外資系企業の中には、 ambulance chaser に似たような動きをする人がいます。ビジネス上、何らかのトラブルが起こった場合、日本企業の場合は「さわらぬ神にたたりなし」とばかりに、周囲はあまり触れないようにする傾向がありますよね。外資でも大多数のスタッフはそうなのですが、ごくまれに、スーッと肩に手をかけて、こう囁く人の影。


「You, OK? I can help you. I'm ・・・」  ギャーーーーーーーー ! だれやねん、おっさーーーん !


次回のコラムでは、外資に巣食う ambulance chaser の実態についてお話しましょう。


( 次回続く )
 




  • 奈良タカシ
  • 1968年7月奈良県生まれ。
    大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る(外資系2社目)。