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タカシの外資系物語

# 75  ■ 外資系企業のコーポレート・ガバナンス


最近、日本においても「コーポレート・ガバナンス」の議論が積極的にされるようになってきました。ここ数年来、日本企業における不祥事が起こるたびに、「経営者の独善的な経営を阻止するためのモニタリングが有効に働いているか」「いかにして有効な監視体制 ( ガバナンス ) が構築できるか」が問題となってきました。


日本の「商法」においても、コーポレート・ガバナンス強化のため、社外取締役の義務化が検討されています。


では、そもそも企業とは誰のものでしょう。多くの教科書では、それは「株主のもの」とされています。制度が機能し、株主の利益が最大になれば、コーポレート・ガバナンスは成功したことになります。


私は個人的には、この論理には賛成しません。確かに株式会社にとって「株主」とは営業資本を提供してくれる「旦那様」ですから、株主を重視すること自体は納得できます。しかし、こと日本においては、会社が株主のものである、とする議論には若干の違和感を覚えます。株主は株式を手放せば簡単に企業と縁を切ることができます。一方で、顧客や従業員は簡単に企業を離れるわけにはいきません。彼らはまさしく企業と命運を共にすることによって、ビジネス社会に存在しています。まず顧客と従業員を重視する、その結果として、株主に対してもきちんとしたメリットが還元されると考えるべきではないでしょうか。


この考え方は、私が勤める企業の考え方にも合致しています。弊社の「ガバナンス体制」は、株主・顧客・従業員を同レベルに位置させています。まずそれらの「満足度」を定数化します。株主の満足度とは、収益の向上でしょう。顧客と従業員の満足度は、主にアンケートなどで計測されます。重要なことは 3 つのバランスをうまく保つこと。どれか 1 つが突出していることは、必ずしも「良い経営」とは言えないのです。


以上のような方法は、「バランス・スコアカード」と呼ばれ、欧米企業経営のスタンダードとなりつつあります。


社外取締役は、各スコアを見て、企業の問題点を客観的に指摘します。弊社の取締役会は、弊社のプロパー役員のほかに、大学教授・某 IT ベンダ役員など、バラエティに富んだ構成となっています。


従業員に対しては、年度末に「経営陣向けアンケート」が実施されます。「経営方針が明らかでない」「福利厚生が不十分」といったものから、ズバリ「給料上げろ !」まで様々な意見が寄せられるようです。取締役会は、これらの意見を全社員に公開したうえで、全てについて回答しなければなりません。


私が提出した意見は、「どのような顧客に対して、どのような案件を売り込んでいるのかわからない。失敗したものも含め、社員にすべて公開して欲しい。」というものでした。


先日のボード・ミーティングの後、私はある役員に呼ばれました。


「タカシ、君の意見が採用されたよ。今日から早速『営業委員会』のメンバーとして頑張ってくれ … 」


何のことはない、単に自分の仕事を増やすだけなのです。まぁ、「いいだしっぺ」という言葉もありますから、自分で言った限りはそれなりの責任は取りましょう。


それでも、下の意見が全く反映されない日本企業よりは、よっぽどマシなんだろうと思う今日この頃です。

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タカシの外資系物語
奈良タカシ 1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。
「タカシの外資系物語」の作者、奈良タカシさんへメッセージをお寄せください。