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タカシの外資系物語

# 73  ■ CEO の危機管理 ( NY テロ事件 1 )


9 月 11 日、その日私は夕食を外で済ませ、TV をつけながら新聞を読んでいました。時計は夜の 10 時を回っていたと思います。多少酔っていたせいか、TV が報じるその光景を、まるで新作映画の一シーンのように眺めていました。


「アメリカで大規模なテロ勃発 ! ニューヨークの世界貿易センターに旅客機 2 機、ワシントンの米国防総省に 1 機が突入。死者多数の見込み …」


た、大変だ …。私はとっさに電話をとり、NY の同僚に電話をしました。TV では、世界貿易センターが崩れ去っていく模様が映し出されています。トオルとエレンの携帯は通じないようです。30 分ほどたって、トオルのセクレタリーであるヨシコの携帯に電話がかかりました。


( タカシ ) 「ヨシコ、ヨシコ、大丈夫 ?!!」


( ヨシコ ) 「タカシーっ ! 何もかもなくなっちゃったのー、こわいよー …」


ヨシコはかなり混乱していました。その日ヨシコは、世界貿易センターにあるクライアントに書類を届けようと、地下鉄に乗っていたようです。地上に出て、「異変」に気づいたようでした。


( タカシ ) 「ヨシコ、落ち着いて。トオルとエレンはどうした ? ほかのみんなは ?!」


( ヨシコ ) 「えーん。わからないの。電話が全然通じないの … 」


( タカシ ) 「わかった。僕の方からみんなに連絡してみるから。ヨシコはすぐにうちに帰るんだ !」


それから 3 時間ほど、私は国際電話をかけまくりました。そして、プロジェクトメンバー全員の無事と、NY オフィスにいる日本人の無事を確認しました。


少し落ち着いたところで、e-mail メールを開いてみると、わが社の CEO から全社員に向けてメールが来ていました。


"Our offices in Manhattan, Washington and a few other locations are closed for business but open to support our people." ( マンハッタンとワシントンにあるオフィスは営業を中止する。ただし、社員のサポートのため、オフィスは開けている )


"Needless to say, we are all concerned about our friends and colleagues in the firm. We all hope and pray we will find everyone safe and sound." ( 言うまでもなく、社員の安全がもっとも重要である。社員全員が無事であることを心から祈っている )


一見すると無味乾燥としたメッセージですが、彼は事件発生後、すぐにニュージャージーのホテルの一室を「対策本部」として借り切り、ホテルからログインしてメールを発信したようです。メールの発信時刻は、NY 時間の 12:27 でした。私は事態の深刻さに気持ちが高ぶっている一方で、やや冷静な目で、彼の行動力と危機管理能力に驚嘆しました。もちろん、現場での陣頭指揮も、CEO 自らが任務にあたったようです。


それからの一週間、わが社の CEO は全世界にメッセージを送り続けました。そして、事件発生から 7 日目の朝、次のようなメールが送信されてきました。


"To All: I could find all the staffs being well, sound and safe」( 社員各位 弊社すべてのスタッフの無事が確認された." )


東京オフィスにいた同僚、特にアメリカ人は大歓声を挙げていました。


今はただ、事故で犠牲になられた方々の冥福をお祈りするとともに、今後このような痛ましい事件が起こらないことを願ってやみません。


( 次回続く )

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タカシの外資系物語
奈良タカシ 1968年7月 奈良県生まれ。
大学卒業後、某大手銀行に入行したものの、「愛想が悪く、顔がこわい」という理由から、お客様と接する仕事に就かせてもらえず、銀行システム部門のエンジニアとして社会人生活スタート。その後、マーケット部門に異動。金利デリバティブのトレーダーとして、外資系銀行への出向も経験。銀行の海外撤退に伴い退職し、外資系コンサルティング会社に入社。3年前に同業のライバル企業に転職し、現在に至る ( 外資系2社目 )。
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