# 14 中国にもある日本的表現
「日本語と中国語は同じ漢字文化圏」という先入観と一部の誤解が日中双方にあるためか、日中ビジネスでは頻繁に誤解や行き違いが多発します。特に合弁会社の経営会議や労務管理の現場など、お互いの意思疎通が極めて重要な場所において、なかなか日本人の考え方や気持ちが中国側に通じず苦労するケースが多いようです。
たとえば、日本人が好み、多用する言葉として「きちんと」「ちゃんと」という表現があります。これはニュアンスも含めて直接外国語への翻訳がかなり難しい言葉です。このような日本語を適切に翻訳するためには、同じ意味を持つ他の具体的な日本語表現を幾つか列挙し、日本語を日本語にブレイクダウンして、「再」翻訳するようなステップ作業が必要になります。たとえば「きちんと」、「ちゃんと」という日本語を「集中して」、「専念して」、「細かく」といった別の具体的な日本語表現に焼き直せば、それに該当する中国語として、「小心」、「精心」、「専心」、「潜心」、「細心」、「悉心」、「細緻」、「仔細」、「工整」などが該当します。
同様に、「一生懸命やる」という言葉であれば、中国語の「刻苦」、「埋頭」、「一糸不苟」、「抓住細微之処」といった言葉が該当します。逆に「ボーツとする」、「いい加減」、「手を抜く」であれば、「粗心大意」、「馬馬虎虎」(※1)、「自以為是」、「自作聡明」などが挙げられます。因みに、「自作聡明」という言葉は日系工場などでよく見掛ける言葉で、詳しく訳すと「自分のやり方が最高だと自惚れて、決められた手順を自分勝手に省略したり曲げてはならない」という意味です。
このように、丁寧にわかりやすく表現することが苦手な人でも、海外にあっては面倒でもわかりやすく具体的に言い換えてあげる必要があります。「きちんと」という言葉の意味が判らず、言葉に詰まる通訳に対して「きちんと通訳しろ ! 」と怒鳴りつけるようでは意思疎通は全くままなりません。
「お客様は神様です」、「相手 (顧客) の立場に立って考える」という姿勢は日本人の専売特許と思いがちですが、そのような日本的表現でも中国語にも同様の表現が存在します。たとえば、「顧客是上帝」と言えば意味はすぐ通じます。「相手の心と自分の心を比較して考える」(心比心、推心置腹) という言い方もあります。そのほかにも、「心の中に犀がいて、互いにまっすぐに気持ちが通じる」という猪突猛進型の面白い表現もあります。
逆に、中国でも通じそうな言葉でも、実際にはまず通じない日本語があります。その代表格は「根性」と「問答無用」という言葉です。どちらも日本人の大好きな精神主義的な言葉ですが、中国人には、「根性」とは人の「本性」、「問答無用」とは「回答が役に立たない」という、まったく違う意味に聞こえてしまいます。彼らに通じる、わかりやすい言葉で言うなら、「忍耐心」、「絶対服従」と言えばすぐに通じます。
「中国人には愛社精神や滅私奉公という考え方が無い」という日本人もいますが、決してそんなことはありません。「廉潔奉公、勤政為民、団結協作、開拓進取」と聞けば日本人でもすぐ意味が理解できる言葉ですが、中国政府が呼びかけているスローガンのひとつです。
日本人と中国人は別の民族ですから、歴史も文化も習慣も異なる点はあります。しかし、通訳、翻訳の間違いやレベルの低さから誤った印象を持ってしまい、対応を間違えることのないよう注意したいものです。
----------------------------------
■ 新著「
中国とのつき合い方がマンガで3時間でわかる本
」 ( 明日香出版社 ¥1,300 ) 好評発売中 !
| トップページへ戻る |