
中国には日本と大きく異なる憲法と国家原則があり、歴史伝統的に都市と農村が分離され、多くの民族が同居する社会で、企業に終身雇用はなく、表向きは労使関係も存在しない等、いろいろ日本と中国の社会的構造の相違点について説明してきました。なかでも日本との最大の相違点は、政治が中国共産党による単独執政制になっているという点です。今年の秋にも党大会 ( 正式名称「中国共産党第 17 回全国代表大会」) の開催が予定されていますが、五年に一回開催されるこの大会で、共産党組織の人事が上から下まで一斉に刷新されます。現在の胡錦涛政権はこの秋の大会で任期の折り返し点を迎え、オリンピックや万博などの控える後半戦のラスト・スパートに入っていくことになります。
1949 年の建国以来、中国共産党には何度か政権交替や基本路線転換がありましたが、この単独執政の政治支配体制には一貫して変化がありません。その基本構造 ( すべてにおいて党の指導にもとづく構造社会 ) は中国語で「単位 (UNIT) 社会」と呼ばれます。
毛沢東の時代、特に 65 年から 80 年代初頭まで続いた文化大革命の時期、「企業」や「経営」等といった言葉は中国社会から消滅し、企業も公共機関も、すべてが「単位」という名前で呼ばれていました。これは党組織そのものを指す呼称ですが、その基本構造は現在の改革開放社会でも色濃く受け継がれています。現在では、企業や役所が 「表の顔」とすれば、この単位構造は「裏の顔」と言っていいかもしれません。図に示したような単位構造が無数に集積しているのが中国社会です。
中国では政府組織、公共機関、企業、社会団体、町内会に至るまで、すべての社会組織が「党の指導」の下に存在する、と憲法の国家原則に定められていますが、社会組織の上にあって指導にあたる党組織のトップに立つのが、党委員会書記 ( 略して「党委書記」) です。党委書記が個々の社会組織の経営・運営全般にわたって実権を持つ権限者です。 80 年代頃まで党委書記は交渉会議にもよく出席していましたが、 90 年代以降は、多忙になってきたためか、公の席に顔を出すことが少なくなってきました。そのため、日本側としては、もっぱら表に出てくる社長や市長など「○長」をトップの権力者と認識しがちですが、実は彼らの上位には党組織があり、その党委書記が本当のキーマンということになります。
では、中国ビジネスは常に「陰の実権者」を相手に交渉しなければならないのか、と言えば、必ずしもそうではありません。それなりの適切なルートを経由すれば党書記と直接面談することもできますし、あるいは宴会の席等、公式会議以外の場であれば直接会って話すことも比較的容易です。表面の交渉相手を追い詰めることなく、その裏の動きを見ながら柔軟に対処していくのが「単位社会」中国での上手な交渉スタイルなのです。
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執筆者 筧武雄(かけひ たけお) Profile
中国ビジネス・コンサルタント 1981年 一橋大学卒業 横浜銀行入行。 1984年 北京大学に派遣留学ののち銀行北京事務所開設、初代駐在。 1988年 海外経済協力基金(現・国際協力銀行)派遣出向。 2001年 銀行を退職し、独立。著書、雑誌連載等多数。 http://members.aol.com/ChinaInformation http://blog.explore.ne.jp/kakehi/index.php 主な著書 「中国との付き合い方がマンガで 3 時間でわかる本」 「中国ビジネス<超>成功戦術 252 」 「中国投資マーケティング戦略マップ」 「中国進出失敗・トラブル事例集」 「最新版中国投資・会社設立ガイドブック」(以上、明日香出版社) 「中国ビジネスのツボ」(重化学工業通信社)等 他多数
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