
中華人民共和国初の憲法は 1954 年に旧ソ連憲法をモデルとして制定されました。その後、75 年、 78 年、 82 年の三回にわたる全面改定を経て、現在の憲法 ( 全文 138 条 ) は82 年版をベースとしています。その後の 93 年改正では鄧小平の「社会主義初級段階論」が、 99 年改正では「社会主義市場経済」が、 2004 年改正では江沢民の「三つの代表重要思想」が前文に追記されました。このように、欧米や日本など諸外国とは異なり、中国憲法は政権交代や、その時折の指導思想の変貌に合わせて、たびたび改正されます。
中国憲法の前文には、中国の歩む基本路線として「中国各民族人民は、引き続き中国共産党の指導の下、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論および『三箇代表』重要思想の指導の下に、人民民主主義独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し、…」という有名な一文があり、これがすなわち中国の「国家四原則」と呼ばれるくだりです。
整理すれば、中国は
1 ) 中国共産党の指導の下に存在し、
2 ) マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論と「三つの代表」重要思想に導かれ、
3 ) 人民民主主義独裁体制を堅持し、
4 ) 社会主義の道を歩む
という国家の基本路線です ( 原文では、このあとさらに、改革開放路線、社会主義市場経済 … と続きます )。
このように、中国は日本と異なり、中央政府から地域の町内会 ( 街道居民委員会 ) 活動に至るまで、すべての組織と個人は中国共産党の単独一党の指導下に存在し、三権分立制度や議会政治制度、選挙制度をとっていません。また、日本では内閣総理大臣、最高裁判事、衆議院議長が「三権の長」と呼ばれ、それぞれ別の人物が歴代就任していますが、中国では、中国共産党総書記 ( 党 ) 、国家主席 ( 政府 ) 、中央軍事委員会主席 ( 軍 ) が「三権の長」に相当し、歴代同一人物 ( 現在は胡錦涛氏 ) が兼務しています。これも日本とは大きく異なる政治体制です。
ちなみに、一世代前の旧憲法は 75 年の文化大革命の時期に制定されたものでした。その主要な条文は労働者の団体交渉権、デモ権、ストライキ権などを全面的に保証したものでした。現在の新憲法から、これら旧憲法の条文は大幅に削除されましたが、それが現在でも一種の中国の「トラウマ」となっているようです。
現在、急速な経済成長と市場経済化の副産物として、中国社会では貧富の格差が拡大し、少なくない企業内で労使問題、ストライキ等も発生しているようです。ところが、本来は「労働者の国」にもかかわらず、現代の中国憲法では労働者に団体交渉権やストライキ権が認められておらず、労働者デモやストライキなどの運動は違法行為として処罰されます。このように内部から湧き上がる労使問題、労働運動の矛盾は、ポーランド「連帯」の前例もあり、これからの中国の行方を占う上で、重要なポイントのひとつと思われます。
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執筆者 筧武雄(かけひ たけお) Profile
中国ビジネス・コンサルタント 1981年 一橋大学卒業 横浜銀行入行。 1984年 北京大学に派遣留学ののち銀行北京事務所開設、初代駐在。 1988年 海外経済協力基金(現・国際協力銀行)派遣出向。 2001年 銀行を退職し、独立。著書、雑誌連載等多数。 http://members.aol.com/ChinaInformation http://blog.explore.ne.jp/kakehi/index.php 主な著書 「中国との付き合い方がマンガで 3 時間でわかる本」 「中国ビジネス<超>成功戦術 252 」 「中国投資マーケティング戦略マップ」 「中国進出失敗・トラブル事例集」 「最新版中国投資・会社設立ガイドブック」(以上、明日香出版社) 「中国ビジネスのツボ」(重化学工業通信社)等 他多数
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