
その国の民族と国民性を理解するためには、その言語をよく理解することがキーポイントです。中国社会で日常的に使われる慣用句を知ることで、中国人国民性の片鱗を理解することもできます。以下、いくつか代表的なものを挙げてみましょう。

● 留面子 (Liu Mianzi):メンツを留める
ここにいう「面子」とは、日本語で言う「メンツ」と同じ意味で、信用、プライド、体裁といった意味です。その意味は「メンツを留める」、すなわち商談等でどんなに激論を交わし、喧嘩に至ることすらあっても、メンツだけは決して傷つけることなく最後まで大切に留める、という意味です。
中国人どうしが街角で大声で口論している風景をよく観察すると、彼らは直接相手をなじるのではなく、周囲のヤジ馬の人だかりに対して相手がどんなに悪く、自分がいかに正しいかを訴えていることが判ります。この様な喧嘩のスタイルは「罵街」 (Ma Jie) といわれ、中国独特の風習ですが、そんな場面で周囲の誰かが、「そんなみっともないことをしていると、あなたたちのメンツは丸つぶれになりますよ」とアドバイスすれば、嘘のように喧嘩はサッと収まります。
日本人には「メンツよりも実を取る」という価値観がありますが、なかなか中国では通用しません。自分のメンツを下げてしまえば、中国では経済的な果実を得ることも難しくなります。
● 講道理 (Jiang Daoli):道理を講ずる
ここでいう「道理」とは、日本で言う難しい「悟り」や、「真理」とは少し異なります。わかりやすく言えば、万人が首肯できる「社会的常識」 (Common Sense) のことです。とっさの場面でも、誰もが納得できる理屈を堂々と相手に講ずることができる、という自己主張能力は中国社会において極めて重要な資質です。
なぜなら、中国人が何よりも大切なメンツをみずから下ろす瞬間があるとすれば、それは相手の語る「道理」を認めたときだからです。「面子」に優先するものが「道理」であり、道理を語ることができるという能力は、ビジネス交渉においても大切なことです。
● 合情合理 (Heqing Heli):人情を大切にしスジを通す
ここでいう「合情」とは、「人情に合致している」ことを言います。また、「合理」とは「道理に合致している」ことをいいます。人間としての気持ち、感情を裏切らずに、法律や社会正義などのスジを通すことで、わかりやすく言えば、「水戸黄門」あるいは「大岡越前」にも通じるコンセプトです。このような価値観はタイなど東南アジア一帯にも通じており、中国に限らず、アジア一帯に共通する社会的価値観ではないかと思います。
企業進出などで日本人が中国に引っ越したとき、現地の人々は仔細にその人格を観察し、秤にかけようとします。そのときの基準となる尺度が、この価値観ではないでしょうか。表面は笑顔で友好的でも、心中で相手を見極めようとする眼は大変厳しいものです。
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執筆者 筧武雄(かけひ たけお) Profile
中国ビジネス・コンサルタント 1981年 一橋大学卒業 横浜銀行入行。 1984年 北京大学に派遣留学ののち銀行北京事務所開設、初代駐在。 1988年 海外経済協力基金(現・国際協力銀行)派遣出向。 2001年 銀行を退職し、独立。著書、雑誌連載等多数。 http://members.aol.com/ChinaInformation http://blog.explore.ne.jp/kakehi/index.php 主な著書 「中国との付き合い方がマンガで 3 時間でわかる本」 「中国ビジネス<超>成功戦術 252 」 「中国投資マーケティング戦略マップ」 「中国進出失敗・トラブル事例集」 「最新版中国投資・会社設立ガイドブック」(以上、明日香出版社) 「中国ビジネスのツボ」(重化学工業通信社)等 他多数
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