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# 23  日本企業で働く中国人 ( 4 )


~ ある大手 IT 企業の面接で ~


昨年の 12 月に、ある大手 IT 企業が募集したブリッジ SE 候補者として 3 名の中国人 SE を紹介しました。ブリッジ SE とは、日本企業からシステム開発を請け負う中国やインドの IT ベンダーと発注者である日本企業との橋渡し役 ( ブリッジ ) を務めるシステム・エンジニアのことです。一般的には、日本語と、システム開発を行う国の SE が使用する言語の両方が堪能で、かつ、システム開発経験の豊富な上級 SE がこの役割を果たします。


最初に 3 名のプロフィールをご紹介します。


1) ST さん
■年齢 : 29 才
■日本語レベル : 日本語検定 1 級で、日常会話は中級レベル。
■中国での勤務経験:2002 年 7 月から 2007 年 3 月まで、中国の IT 企業に勤務して、様々な分野のシステム開発に従事。後半は日系 IT 企業の中国法人で日本の IT 企業が発注した地方自治体の公共事業執行支援システム、電力会社業務システム、製造業の資産管理システム等の開発に従事。
■日本での勤務経験 : 2007 年 3 月から、日本の IT 系派遣会社に勤務し、携帯電話システムの開発や SCM ( サプライチェーンマネジメント ) の需給調達システムの開発に従事。
■特記事項 : 中国で日本企業のシステム開発に従事した際の経験と、そこで習得した日本語を生かすために日本の派遣会社に就職した。日本での勤務開始後、まだ僅か半年であるが、現在の派遣会社で自分の希望する仕事ができないことと、待遇があまり良くないという理由で転職を希望している。


2) LH さん
■年齢 : 32 才
■日本語レベル : 日本語検定 1 級で、日常会話は ST さんと殆ど同じレベル。学校等で正式に日本語を勉強したことは無いが、約 1 年の独学でかなり高いレベルの日本語を身につけている。
■中国での勤務経験 : 1999 年 10 月から 2002 年 8 月まで中国の IT 企業に勤務したが、退職して大学のソフトウェア学部の修士課程に進んだ。修士課程の研究の一環で、シンガポールの理工系の大学に短期留学。修士課程終了後、2004 年 9 月から 2006 年 2 月まで米国の中国法人に IT 技術者として勤務。
■日本での勤務経験 : 2006 年 3 月に日本の IT 系の派遣会社に入社。主に携帯電話のミドルウェア開発、アプリケーション開発に従事していたが、昨年 10 月にその会社を退職して就職活動中。
■特記事項 : シンガポールの大学への短期留学経験もあり英語が得意で、TOEIC は 905 点。英語が使える外資系企業が第一志望。


3) SG さん
■年齢 : 37 才
■日本語レベル : 日本語検定は受検していないが、中国の東北地方の出身で、中学校から日本語を学んでおり、日常会話は全く問題無い。今回の候補者の中では最も高いレベル。
■中国での勤務経験 : 2000 年 8 月から 2004 年 6 月まで中国の IT 企業に勤務し、ガソリンスタンドの業務管理システムやロボットのシュミレーションシステム開発の技術責任者を務める。また、教育 WEB サイトやテレビ会議システムの改造等の幅広い経験を有する。
■日本での勤務経験 : 2004 年 7 月から、中国の IT 企業の日本支社に技術主任として勤務。大学の総合情報管理システム、銀行の業務管理システムやオークションシステムの開発に従事。
■特記事項 : 中国の大学のコンピュータ関係学部の准教授から SE に転身。大学では原子炉で使用するロボットシステムやシュミレーションシステムの開発等に関する研究・教育に従事。


候補者の内、2 名は日本の人材派遣会社に勤務していました。ここ数年、中国では大学新卒の就職難が深刻な問題となっていますが、既に中国で IT 技術者として活躍している人も、日本の IT 系の人材派遣会社に就職するケースが増えているようです。少し気になるのは、2 名とも日本の派遣会社に就職して、短期間で転職を希望している点です。日本の IT 系派遣会社に中国人社員がいったい何人在籍しているのかは知りませんが、最近このような傾向が強くなっているように思います。


~ 面接の結果は ~


さて、3 名の面接の結果ですが、残念ながら全員が一次面接で不合格となってしまいました。不合格の理由は幾つかありますが、ST さんと LH さんに共通するのは、1.「日本語のコミュニケーション能力が企業の期待よりも低かった」ことと、2.「中国企業や派遣会社で様々なシステムの開発業務の経験はあるものの、何れも短期間であり、核となる技術を保有していないと思われる」ことでした。


私自身、2 人と直接話しをしましたが、日本語の日常会話は殆ど問題ありませんでした。しかし、面接官は、システム開発の仕様や要件を、実際にシステム開発を行う中国企業のメンバーに正確に伝えるには十分ではないと判断したようです。


SG さんはその経験や日本語能力の高さから、多分合格するであろうと思っていましたが不合格でした。不合格の理由は先方が埋めたかった年齢層では無かったためのようです。私はブリッジ SE の業務に年齢はそれほど大きな要素ではないと考えていたので、この結果は少し意外でした。


私は、何れの候補者も採用後にある程度の経験を積めばブリッジ SE として十分に活躍できると思っていましたが、この企業が求める人材は「若くて即戦力の完成品」だったようです。


今回は私自身にも良い経験となりましたが、日本で勤務する中国人 IT 技術者の皆さんにもこのような実態を理解していただきたいと思います。


特に、日本の大手企業が外国人社員に求める日本語レベルはかなり高いということを知っておいて下さい。

執筆者 天田 恭司  Profile

1980年 一橋大学社会学部卒業、日本電気株式会社(NEC)入社。人事第二部海外人事課などを経て、1988年 初代の北京人事総務駐在として北京駐在員事務所に赴任。1994年に帰国、人材開発部国際人事部人事課長、NECラーニング株式会社の経営研修本部グループマネージャーなどを歴任。

中国勤務経験を活かすべく、2006年に株式会社国際交流センターに転職。営業推進部長として既存事業の新規顧客開拓を行う営業全体を統括する傍ら、中国人材活用ビジネスの立ち上げも受け持つ。本コラムでは、日本企業に直接ヒアリングを行える立場から、企業のリアルな本音やニーズを紹介していく予定。

■ コラムに関するご意見・質問・転職体験談はこちらへお送り下さい ! Mail to: marketing@daijob.com

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