
先日、前回のコラムの後半で紹介した中国人男性の H さんは今年の 4 月に通信機器の製造・販売会社にソフトウェア技術者として入社した留学生ですが、その上司と本人に会い、それぞれから個別に話を聴くことができました。H さんの現在の問題点や今後の課題についてご紹介したいと思います。
まず、上司のマネージャーから話を聴きました。H さんには直属上司として主任がおり、このマネージャーは上司の上司となります。最初に、H さんの入社以降の業務内容について伺いました。
H さんは即戦力としての活躍を期待されて入社し、入社と同時にソフトウェア開発部門に配属されました。中国での就業経験があったため、新入社員研修は全て受講する必要は無いとの判断により、必要最小限の研修を受講しながらソフトウェア開発の仕事を開始しました。同期入社の社員の研修中に職場で仕事をするのはもちろんですが、研修を受講した日も、終了後に職場に戻って仕事をするという形で H さんの日本企業での勤務が始まったのです。最初はある製品のソフトウェア開発を担当していましたが、8 月に緊急性の高い新しい業務を担当することになり現在に至っています。
上司から見た H さんの状況ですが、技術面や能力面では全く問題が無いとのことでした。最初に担当した業務で期待された成果が出たため、重要度の高い業務を任せることになったようです。この会社では、年に数回、社員とその上司が一対一で面談を行う制度があります。面談では仕事の成果や業務上の課題の確認を行うと共に、将来の希望等についても話し合います。マネージャーはこの面談で H さんに対し「もう少し積極性を出し、自分の主張を行ってよいのではないか」と伝えたそうです。この部門には中国以外のアジア出身の留学生も在籍していますが、かなり自分の意見をはっきりと言うそうです。その社員に比べると、H さんが少し大人しいと感じられるようです。
但し、H さんは技術的にも能力的にも日本人と比べて遜色は無いとのことですので、今後の活躍を期待されていることは間違いないようです。
上司から話を聴いた後に、引き続き H さんと面談を行いました。入社後にメールや電話で何度か連絡をとっていましたが、直接会って話をするのは今年の 3 月に内定が出て以降初めてでした。1 ヶ月ほど前に電話で話した時も、ソフトウェアの知識や担当業務については殆ど問題が無いと聞いていましたが、それについては、上司のマネージャーから伺った内容からも間違い無いようです。
まず仕事の内容を聴いてみました。最初に担当した仕事も、8 月以降に担当した新しい仕事も技術的にはそれほど難しくはなく、今のところ大きな問題は無いようです。但し、現在の仕事は本人が希望する、具体的な製品用のソフトウェアを開発する仕事ではなく、メンテナンス用のサーバーの構築とのことでした。
仕事についてはあまり大きな問題は無いようでしたので、私は彼に幾つかのアドバイスを行いました。
・会社では常に自分のやりたい仕事ができるわけではない。
・現在担当している業務をきちんとこなすことにより、更に高いレベルの仕事や自分のやりたい仕事を担当させてもらえる可能性が拡大する。
・会社から給与を貰っている限りは、給与に見合う仕事をして会社や部門の業績の向上に貢献するのが社員の努めである。
・上司も技術レベルや能力が高いことを認めているので、努力して更に自分を高めて欲しい。
さて、次に H さんの悩みについてご紹介します。本人の現在の唯一の悩みは日本語の問題のようです。毎日の仕事を行う際の日常会話については殆ど問題は無いのですが、所属している部門の 40 ~ 50 人が一堂に会して行う会議では、そこで話されていることがよく理解できないのだそうです。H さんの話では、理解できるのは会議の内容の 60~70% とのことです。
その原因として、私がまず思い浮かべたのは「ハイコンテクスト文化」の問題です。第 3 回のコラムで「日本は世界で最もハイコンテクスト文化が発達した国である」とご紹介しましたが、恐らく会議ではハイコンテクストの会話が多いのではないかと思います。また、日常業務で相手の言うことが理解できない場合にはその場で質問できるのですが、会議では隣の人に頻繁に質問しにくいことも理解度が低くなる原因の一つではないかと思います。
私は H さんの日本語能力はかなり高いと思いますし、本人は現在も日本人向けのビジネス文書検定の勉強や、区役所が主催する外国人向けの日本語教室にも通っているとのことです。それでも会議の内容が良く理解できないということは、やはりハイコンテクスト文化への順応がまだ十分ではないのかもしれません。また、上司から見て積極性が少し不足していると感じられる原因も恐らく同じではないかと思いました。
単なる言葉の問題ではないので少し時間はかかるかもしれませんが、ハイコンテクスト文化に慣れる以外に解決の方法は無いのかもしれません。H さんの悩みが少しでも早く解決できるよう、私も引き続きアドバイスを行っていきたいと思います。
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執筆者 天田 恭司 Profile 1980年 一橋大学社会学部卒業、日本電気株式会社(NEC)入社。人事第二部海外人事課などを経て、1988年 初代の北京人事総務駐在として北京駐在員事務所に赴任。1994年に帰国、人材開発部国際人事部人事課長、NECラーニング株式会社の経営研修本部グループマネージャーなどを歴任。 中国勤務経験を活かすべく、2006年に株式会社国際交流センターに転職。営業推進部長として既存事業の新規顧客開拓を行う営業全体を統括する傍ら、中国人材活用ビジネスの立ち上げも受け持つ。本コラムでは、日本企業に直接ヒアリングを行える立場から、企業のリアルな本音やニーズを紹介していく予定。 ■ コラムに関するご意見・質問・転職体験談はこちらへお送り下さい ! Mail to: marketing@daijob.com |
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